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モーニング・オーバードーズ

年初めはおバカなことをした方がいい。そうすれば、きっとその年はおかしくて愉快な一年間になるでしょう。まぁ一種の願掛けです。今年こそ悲惨な年末を迎えないためにも。

2024年は1月2日。地元に帰省していた友人とサウナを3軒ハシゴするという愚行に走りました。

去年は僕が無茶振りをした。そのお返しとでも言わんばかりに、今年は友人から「モーニングへ行くぞ、限界までな」との提案を受けた。

過去に東海オンエアが「1日で何店舗のモーニングを制覇できるか?」という趣旨の動画を出している。友人は、この企画を自分たちでやってみたいと言うのだ。また阿呆な事を...やれやれ仕方がない。断る理由も無いので、もちろん快諾しました。

細かいルールは特に無い。1日でなるべく多くの店舗を回りモーニングを食すのみ。「1日で」とは言っても、モーニングが提供される時間帯は限られている。胃袋の限界に挑む企画と思いきや、時間との勝負でもあるのだ。

1月2日の朝7時、友人と落ち合う。お互いに身体のコンディションを整え、準備は万端。...なのですが、問題点が1つ。1月2日はド年始なのだ。今回の挑戦に際して、できればチェーン店は避けたいという思いがあった。なんとなく面白味に欠けるからね。しかし、この片田舎で年始の朝から営業している個人店があるだろうか...?それも、今回は複数店舗を回ることが前提なので、「個人店のみ」というルールはさすがに厳しいと判断した。ということで、チェーン店の利用を特別に許可!でチャレンジ開始です。

そうと決まれば容赦はない。7時オープンの最寄りカフェチェーンに直行だ。ここで景気の良い初手を決めてやるぜ、と思ったのですが、なんと「年末年始の特別営業」が炸裂。この日の開店は10時からであった。ぐぬ...。ええい、ならば次だ次!幸先の悪いスタートに嫌な予感をおぼえつつ、別のチェーン店へ向かう。が、ここもダメ。しかも、特別営業どころか年始は休業ときた。店の入り口に貼られた「年末年始 営業日のお知らせ」の紙が僕らを嗤う。

再び車を走らせるも、二人の間には不穏なムードが流れる。このままでは企画倒れだ。大通りとはいえ、薄暗く静まり返る年始早朝の国道。しかしその時、通り沿いにぼんやりと光を放つ看板をみつけた。あの見覚えのある暖色はそう、「すき家」だ。

すき家には朝食メニューがある。朝食はモーニング、モーニングは朝食。だとすれば、すき家の朝食をモーニングと判定しても間違いではない...?いいや、モーニングだ。そうに決まっている、絶対に。だったらすき家に行くしかないよね、モーニングを食べられるのだから。

半ば強引でしたが、現状を鑑みるとすき家へ入るほかなかった。

AM7:29 たまかけ朝食 ごはんミニ(270円)

当然ですが、もっともボリュームの少ないメニューを選ぶ。それでもコレだ。写真では分かりづらいけども、ご飯がけっこう多い。本当にミニか?牛丼並のご飯の量と変わらない気がする。自称大喰らいの友人は、僕と同じメニューをペロリとたいらげる。いやあの、寝起きですし、僕は普通にもうお腹いっぱいなんですが。

会計を済ませて退店。苦しそうにする僕を見て、友人がニヤニヤと笑みを浮かべている。何を隠そう、このすき家の真向かいに吉野家があるのだ!「すき家に入って吉野家に入らない理由は無いよね??」友人が煽るように圧をかけてくる。ムカつくなあ。

AM7:42 納豆定食(430円)

すみません、吉野家だけ写真を撮り忘れました。なので代わりにレシートです。納豆定食をご飯軽めで注文しましたが、これまた米が多い!すき家よりも多く感じた。なんとか食べ切ったものの、これはもう満腹だ...。破裂する、身体の中の何かが破裂する。一方、友人はなぜか牛丼を注文している。アホなのかな。こんな挑戦をしている時点で二人ともアホなのですけども。

吉野家を出る。「いったん米はもういい」ということで、二人の意見は一致した。米以外のモーニングを探そう。友人が街の方へ向けて車を走らせ、僕は助手席で店舗リサーチをする。すると、なんと正月の朝から営業している個人店が見つかったのだ。牛丼屋2店舗の攻略に成功した僕たちを祝福するかのようだ。

AM8:28 ブレンド+モーニングセット(850円)

ようやくイメージ通りのモーニングとご対面だ。本日初めてのトーストに初めてのコーヒー。満腹だったとはいえ、これは美味い。新鮮味のおかげで難なく3店舗目をクリア。しかし、いわゆるモーニングのバリエーションはこれで出揃った。これ以降は「新たな味」による救済は見込めない。真の闘いはここからだ。

どうやらカフェ密集地帯に入り込めたようで、3店舗目のすぐ近くで再び個人店を発見。しかし、僕の腹はとっくに限界を超えている。その形を感じ取れるほどに胃袋は膨れ上がっており、カフェを見つけた喜びと、食べる事が確定してしまった絶望とが入り混じる。

AM9:11 モーニングセット(700円)

4店舗目。
トーストの上に乗ったハムとチーズ、そしてサラダにかかった胡麻ドレ。これは重い...。しかし、どうやらこの店はオーディオにこだわりがあるらしい。JBLのステレオが鳴らすきめ細やかなサウンドが、ハムとチーズの重さを掻き消してくれる。僥倖だ、ありがたい。サクサクと主旋律を奏でるトーストに、重さを失ったハムの塩分、チーズの芳醇な香り、そして胡麻ドレが加わる。プレート上の演者が織りなすカルテットを心地よく堪能し、4店舗目をクリア。

食レポが随分とポエミーになってしまった。満腹ゆえ、そのくらい思考と感覚がバグっていたということだ。この辺が潮時か...?さすがに友人の顔からも余裕が消えている。よし。ではせめて、せめてもう1店舗くらい行こうじゃないか。そこを僕たちの墓場としよう。

AM10:01 ブレンド+トースト(500円)

5店舗目。
(色んな意味で)恐る恐る店のドアを開け、席に着いた。約60年も喫茶店を営んでいるというおばあちゃんが、少し震えながらも慣れた手つきでコーヒーを淹れてくれる。底冷えする店内に置かれた灯油ストーブがなんとも頼もしく、実家のような安心感さえある。あまりに居心地が良かったので、つい長居してしまった。しかも、どういう訳か「まだだ...まだ闘えるぞ」という活力が湧いてくるではないか。驚いたことに、共に闘っている友人も同意見だという。優しい味のトーストを食べ終え、次なる戦場を目指す。

ここで戦略を練る。3店舗連続でコーヒーを飲んでいたので、口が別の飲み物を欲している。なので、コーヒー以外のドリンクメニューを扱っている店へ赴くことにした。

AM12:03 レモンスカッシュ+トースト(1100円)

6店舗目。
レモンスカッシュを注文してスッキリ爽快!飲み物ひとつでこんなにも気分が変わるとは。しかもルマンドと福梅のオマケ付き。レモンスカッシュをはじめ、かなり甘さに振り切った面々ですが、今日1日の全体バランスを考えれば悪くない。振り返ってみると「甘い」は今日初ですね。当然のように6店舗目をクリア。

当初は予想だにしていませんでしたが、とうとう時間のリミットが厳しくなってきた。時刻は正午をまわり、モーニングを提供する時間帯ではなくなってしまったのだ。どの店もモーニングからランチへと切り替わる。そんなバカな。僕たちは胃袋の限界を突破し、ランナーズハイならぬモーニンガーズハイに至っていたというのに。まさかこんな形で終わりを迎えるとは...!

やむを得ない。では最後に切り札を出して、この熱き戦いに終止符を打つとしよう。

PM1:45 エッグプレート(592円)

7店舗目。
知っている人は知っている。ファミレスのジョイフルには、なんと「24時間いつでも頼めるモーニング」が存在する。裏技というかインチキというか、ちょっとズルな気はするのですが、〆ということでご容赦願いたい。

モーニング7店舗目ともなると、もはや満腹とかいう感覚は忘れた。ベーコンが美味いよ、卵も米も美味いよ。でももうモーニングは飽きちまったよ!

今回の闘いで気づいたことがある。この挑戦のキツイところは、大食いをすることではなく「常に食事を続けること」なのだ。胃に食べ物を消化する余裕を与えず、口にモノを入れ続ける。7時間近くも朝食を食べ続けるなんて、普通はないですからね。本企画に挑戦する人の参考になれば幸いです。

さて、モーニングを何店舗まわれるかチャレンジ、僕たちの結果は7店舗でした。胃袋にはもう少し余裕があったので、食事を効率よく済ませれば8〜9店舗くらいはいけたかもしれない。悔しさもあるけれど、楽しく達成感のある挑戦でした。ふう、来年は僕の番か。どんなおバカな提案をしてやろうかな。

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