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多くの人の夢に登場する、訪れたはずのないゲーセン

10月に岐阜県へ行ってきたのですが、その際に訪れた遊園地がTikTokで軽く話題になっているらしい。

岐阜県は養老町にあるレトロな遊園地「養老ランド」。TikTokで話題とのことですが、実は前々から妙な噂がまことしやかに囁かれていた場所なのだ。というのも、「行ったことがないはずなのに、なぜか夢で見たことがある」という声が続出したのだとか。かの有名なThis Manと同じような現象ですね。「この場所で誰かに追いかけられる夢を見た」という話が共感を呼び、ネットでは養老ランドを巡る考察も散見される。

養老ランドは大きく3つのエリアに分かれている。メリーゴーラウンドのある屋内遊園地エリア、さまざまなアトラクションが設置された屋外遊園地エリア、そしてレトロなゲーム筐体が所狭しと並べられたゲームコーナー。今回スポットが当たっているのは、3つ目のゲームコーナーだ。僕は趣味で色々なゲーセンを回っているのですが、養老ランドのゲームコーナーに「特別な何か」は感じられなかった。しかし、逆にそれがカギなのではないかと思う。

TVアニメに登場する住宅街のシーン。埼玉県が舞台となっていることが多い、という話を聞いたことがある。これといった特徴がなく、平凡な景色であることが理由らしい。確かに、キャラクターの何気ない日々を描く日常系のアニメには打ってつけですね。そして、その特色のなさが「どこかで見たことがある」という既視感、安心感を視聴者に与えるのではないだろうか。

養老ランドのゲームコーナーも同じだ。珍しいゲーム筐体が置かれている、というニッチな視点を無視すれば、いたって平凡な昔ながらのゲームコーナーだ。子供の頃、親に連れられて訪れた遊園地。屋外アトラクションの箸休め、あるいは休憩がてらゲームコーナーに立ち寄った人も多いことでしょう。あの懐かしき日のぼんやりとした記憶が、夢の中の舞台として描かれているのではないか。幼少期の曖昧な記憶だからこそ、特色のない養老ランドのゲームコーナーに「行ったことがあるような気がする」という錯覚をおぼえるのだ。

もう少し深掘りしよう。先ほど書いたように、埼玉県がアニメの舞台として採用されるケースは多い。制作側の都合(ロケハンしやすい、登場人物が都会の街に出かけるシーンを違和感なく描ける等)もあるでしょうが、やはりその「特色のなさ」は重要だ。しかし、それらのアニメが「なんかこの場所夢で見たことある!不気味!」と話題になることはない。養老ランドと何が違うのか。

答えは単純で、ひとえにその希少性にある。僕たちが日常生活で住宅街を見る機会は多い。というか、大半の人はその住宅街に住んでいることでしょう。一方で、ゲームコーナーを目にする機会は、住宅街のそれと比べると圧倒的に少ない。故に、夢の中にゲームコーナーが出てきたならば、その夢は強く印象に残るはずだ。

加えて、養老ランドにあるような昔ながらのゲームコーナーは、今や全国に数えるほどしかない。昔は全国各地に存在し、誰もが訪れた経験のあるゲームコーナー。そして、幼少期の記憶をもとに、多くの人が懐かしきゲームコーナーを夢に見る。それを今”現実に再現している”のは養老ランドくらいしかない、ということだ。よって、養老ランドのゲームコーナーを見た人が、「過去の記憶と紐づいた夢」と「現実の養老ランド」を結びつけて「行ったことがないのに夢で見たことがある」と記憶の齟齬を起こすのではないか。

こんな妄言じみた分析は野暮かもしれない。夢は夢のまま、そっとしておいたほうがロマンがあっていい。ここまで読んでくれた方に言うのもおかしな話ですが、どうか忘れてください。なぜか夢で見たことがある、不気味だけどどこか懐かしいゲームコーナー。聞いただけでワクワクするじゃありませんか。ゲームコーナーだけでなく、遊園地エリアもとても楽しいので、気が向いた人はぜひ行ってみてね。もし可能ならば、ゲームコーナーが舞台の夢を見た後に。

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