相続で損しない、不動産の知識について
■行政書士をやってはじめて分かった。「え、これでいままでやってたの?」
これまで何件の相続手続が行われてきたのでしょうか?
きっと数えることができないくらい膨大な数の手続きがあったはずです。なのに、なぜこのような問題がこれまで放置されていたのか、すごく不思議に感じます。気付かなければ損をする問題、このブログをご覧いただいた皆様は回避していただけるといいな、と思います。
まずはなにが問題なのか、わかりやすくご説明いたします。
■相続における不動産の問題点
私が感じた問題点は
1)不動産の評価が適切ではない
2)問題ある不動産をそのまま相続している
この二つです。
そしてこの二つは解決(最小限の被害にする)可能です。
1.遺産分割における「不動産の評価方法」あいまいさ
誤解がないようにお伝えしますと相続「税」の算定基準としての評価は明確なルールがあります。問題なのは「遺産分割の基準」です。不動産は配偶者や親子関係以外での共有は避けるのがセオリーです。共有を避けるため、相続人の一人が単独で不動産を引き受ける場合、不動産を引き受けない相続人に不動産以外の財産を分ける必要があります。
例えば、
相続財産が図の通り1,000万円の不動産と2,000万円の現金であった場合で、不動産をAが単独で引き受け、AとBが均等に相続する場合は、
Aは1,000万円の不動産で単独で相続しますから、残り財産2,000万円の現金は、Bに多く分配しないと不公平です。そのため現金を、Aに500万円、Bに1,500万円の額で分配すれば、それぞれが均等に1,500万円分の財産を相続します。すごく簡単な話ですね。
しかし1,000万円の価値としたこの不動産、本当に1,000万円の価値なのでしょうか? 500万円の価値しかなければ、Aは不動産とともに現金750万円がもらえます。逆に不動産に2,000万円の価値があれば現金はもらえません。
この部分のまとめ
相続財産が不動産と現金2,000万円の場合
1)不動産が 500万円の場合 Aは不動産と750万円の現金を相続する
2)不動産が1,000万円の場合 Aは不動産と500万円の現金を相続する
3)不動産が2,000万円の場合 Aは不動産のみを相続する
不動産の評価の仕方により、Aの現金の分配額が大きく変わってしまいます。
不動産評価の知識がないと損をしてしまう、というのはこういうことです。相続財産に不動産が関係する場合には、是非ともご相談ください。
ご相談は無料です。
そして同じ不動産の評価が500万円だったり2,000万円だったりすることは、現実にあり得ます。
では不動産の評価は誰ができるの?
この問いに答えられる方は少ないと思います。
あえて候補を挙げるとしたら、
・固定資産税評価をしている「市町村」
・路線価を公表している「国税局長」
・公示地価を公表している「国土交通省」
・不動産の鑑定ができる「不動産鑑定士」
・多数の取引情報をもつ「不動産会社」
になりますが、いずれも決定的な方々ではありません。
不動産の正確な評価は、現地調査や過去の成約事例などの情報を加味する必要がありますから、その技術を持っているのは不動産鑑定士と不動産会社が近いのだと思います。
次に、不動産の価格を推測するそれぞれの指標(目安)について、ご説明いたします。
不動産価格を推測する目安について
①固定資産税評価額
市町村が固定資産税の賦課を目的に設定したもので、公示地価の70%を目標に設定されております。建物の相続税の計算ではこちらが採用されます。ただし、建築の可否や地下配管の経路、加えて心理的瑕疵など、通常取引であれば必ず反映される点が反映されていないため、実勢価格を推定するのは難しいです。
②路線価
国税局長が国税の賦課を目的に、路線に面する宅地1㎡あたりの金額を公表したものです。公示地価の80%を目標に設定しております。土地の相続税の計算では、こちらが採用されます。こちらも取引であれば必ず反映される点が反映されていないため、実勢価格を推定するのは難しいです。
③公示地価
国土交通省が法令に基づき正常な価格の公表を目的に公表したものですが、机上の計算であること、実勢価格との違いがあることから、その信ぴょう性が話題になります。こちらを基準とする場合は、標準地と対象地の違いを調べて補正する作業も必要です。標準地と対象地が近ければ参考にできるかもしれませんが、そうでなければ公示地価から対象地を評価するのは難しいです。
④不動産鑑定士の鑑定評価
不動産鑑定士が、依頼者の依頼に基づき鑑定します。信頼できるのですが、高額な鑑定料がネックになります。また、鑑定士の先生が過去の成約事例などのデータをどれだけもっているかで精度も変わります。
⑤不動産会社の査定
不動産の価値=取引が成立するであろう価格、と考えた場合は一番しっくりくる評価です。しかし、不動産会社の査定は綿密な調査と複数の事例に補正を加え、複雑な計算の上に算定されます。無料査定のサービスなどを謳っておりますが、取引がない(利益がない)価格査定は真剣に行うことはできませんから(精度の低いAIなら数秒で出せる)、相続手続用に不動産会社に査定させるのは適切ではありません。
相続を業として行っておられる先生方に聞いてみたところ、固定資産税評価額や路線価を採用している方が多かったです。理由は、
●面倒な計算をしなくていい
●公の公表であるので説明がしやすい
ということでした。
不動産の評価をするにはどのような不動産なのか、調査が必要です。固定資産税評価額や路線価で処理されている先生方は、おそらく調査をしておられないのではないでしょうか。
2.相続不動産を調査する制度がない
売買の場合には手厚い保護がある
不動産を取得すると、固定資産税や都市計画税(主に市街化区域)の課税があります。持っている限り永遠に課税されます。一般的に不動産は高額ですから、簡単に手放すこともできません。
・持ってるだけで毎年永遠に税金が取られる
・簡単に手放すことができない
これらの事情があるため、不動産の取得については慎重の上にも慎重を重ねて検討しなければなりません。
不動産を売買等で取引する場合、宅地建物取引業法では、契約前に資格者による重要な事項の説明を法律で義務つけたり、条件次第では8日以内のクーリングオフも認めております。令和2年には民法も改正され、不動産を売買で取得する方については、一層保護される風潮があります。
同じように不動産を取得する、相続の手続きではどうでしょうか?
相続での不動産取得は野放し状態
残念ながら、相続で不動産を取得する人を保護する法制度はありません。
相続した不動産が、建物が建築できないことを知らないで引き受けた場合、手放したくても問題のある物件は買い手がつかないので手放せません。さらに、毎年固定資産税はもっていかれます。これは大変つらいです。
長年不動産取引の実務を行ってきた私としては、よくこれで問題が起きていないなと不思議でしたが、やはり問題は起きておりました。
■発生した問題と今後のアドバイス
どのような問題が起きていたかというと、
①評価額よりも低い売却金額
所有者様は評価額を信じて不動産を引き受けて売りに出したのですが、反響もなく評価額よりかなり安くしないと売れない状況でした。結果、他の相続人と比べて大きな損をすることになってしまいました。
⇒前面の道幅が2m以下と大変狭く、加えてハザードマップで津波の懸念のある地域でした。このような不動産は相場よりも安くしないとなかなか決まりません。
【この問題からのアドバイス】
・評価額を鵜呑みにしてはいけません。
・不動産の共有はなるべく避けるのがセオリーですが、この場合は共有にし、売れたお金で分配するような「相続人同士でリスクを分散させる方法」をとるすべきでした。
②建築できない物件
所有者様は評価額を信じて不動産を引き受けましたが、その不動産は建築基準法の接道義務を果たしておらず、二束三文の価値しかないことが判明しました。建築物を建てるためには隣接地から土地を分けてもらわないといけなくなり、売却するために大きな費用負担を被りました。
⇒道路に接する部分が2m以下であり、適法に建物が建てられない物件でした。建物が建てられない土地は価格に甚大な影響をもたらします。
【この問題からのアドバイス】
・評価額を鵜呑みにしてはいけません。
・問題ある不動産を所有したら損害を被るので、売買同様、重要事項説明書が作成できる程度の専門家の事前の調査を受けるべきでした。
上記2件は売却や建築という行為によって問題が明るみに出ました。これらの動きがなければ、発覚しておりません。固定資産税評価額や路線価のみで相続手続きすることは大変危険です。
おさらいの動画です。約14分ありますが、チャプターが付けてありますので気になる部分だけご覧ください。
さいごに
制度ないなら自分で探すしかない(お知らせ)
相続人を保護する法制度がないならば、売買が絡まなくても調査を引き受けてくれるところをご自分で探さなければなりません。
こんな時、不動産会社あがりの行政書士は便利に使っていただけると思います。
こちらで、不動産に関するお手伝いなどもさせて戴いております。
価格査定、物件調査不動産に関する事なら何でもお任せください。
相続を業としてやっておられる、弁護士・司法書士・税理士・行政書士の各先生方の全てが、不動産の調査ができるわけではありません。不動産のことは専門家にお任せください。
不動産取引は一生のうち何度も行うことは少ないので、専門的な知識に対応するのが難しいと思います。そんなときに、皆様に寄り添うことができたらな、と思います。
相談は無料ですのでお困りのことがありましたらお気軽にメッセージをくださいね。
ご覧いただき、ありがとうございました。