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第4話「東京生活と新聞配達」

トラベルジャーナル旅行専門学校の名誉校長は、あの「兼高かおる世界の旅」で有名な、今は亡き兼高かおる氏。この番組はTBS系列の放送局で日曜朝放送され、なんと30年と10か月も続いた旅行番組の老舗。

そのメインパーソナリティーの兼高氏は160か国を旅したそうで、その名誉校長がカツヒロ達、新入生の前で今、誇らしげにスピーチしている。

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桜が美しく咲き誇る1990年4月6日、カツヒロを含めた460名の入学式が新宿駅西口の朝日生命ホールで行われていた。

カツヒロが進学先にトラベルジャーナル旅行専門学校を選んだのは、将来、世界中を旅してみたいと思ったからで、お金を払わずに海外旅行に行ける仕事は何か?と考えたら、一番最初に添乗員だと思ったからであった。

ただ、兼高さんのようにTV番組で周れたらもっと良いとも思っていたし、「世界ふしぎ発見」のレポーターや「世界の車窓から」などの海外ロケ番組のスタッフとかに成れたら、それでもいいなと思ってた。

...。

カツヒロは渋谷区笹塚2丁目のかなり古いアパートの2階に住み、そこから原付バイクで30分程かけて東中野まで通った。

笹塚のアパート

朝は4時に起きて、バイクで2分の距離にある専売所に到着すると、直ぐに、折り込みチラシを約280部の朝刊に挟みこみ、そして、スパーカブの前のカゴと後ろの荷台に新聞を積み込み、担当する幡ヶ谷2丁目や代々木上原までバイクを飛ばした。

新聞配達

最初の頃は、腕力が足りなくて、良く途中でバイクを倒して、新聞が崩れ落ちてしまったり、配達順を間違えたり、道に迷って泣きたくなったこともあったけど、ゴールデンウイークの頃にはスッカリ慣れて、調子が良い時は朝刊を2時間以内に全て配達できるようになっていた。

同じ日経新聞幡ヶ谷専売所の奨学生は24名で、北は北海道から南は鹿児島出身の者がいた。学生の男女比は男性7、女性3と言った所で、この比率は朝日や読売等の他社も同じ程度のようであった。カツヒロのように専門学校に通う者もいれば、浪人生活で予備校に通う者、現役の4大生や短大生など、人それぞれだったが、皆、将来の夢を持ち故郷を離れて来た強さが感じられた。

カツヒロはたまたまバイク配達で遠方エリアを担当するからと言う理由で専売所の契約するアパートの一室をあてがわれたが、全体の8割以上が専売所の上の階にある個室、通称、笹塚寮に住み込み生活だった。

「俺は住み込み寮の方が、洗濯機やシャワーも使えるし、TVを持っている先輩の部屋で時々、AV鑑賞会にも参加できるから、向こうの方がいいな」とカツヒロは最初は思ったけど、アパートだと寮より自由だから、やっぱりこっちが良いなと思いなおした。

4畳半風呂無し、トイレ共同のアパートだから、お風呂は週に2回、同じ奨学生仲間を誘って、近くの銭湯に出かけていた。入浴料は一回、295円。この入浴が何よりの楽しみで、それ以外は夕刊配達後、3つある寮のシャワーに入り、その後に寮母さんが作ってくれた夕食を他の奨学生仲間と談笑しながら食べていた。

新聞奨学生のお給料は毎月78,000円で、月末になると現金が入った茶封筒を専売所の所長から渡された。

「武藤さん、1か月ご苦労様。来月も宜しくお願いします。」

はじめてもらったお給料で、カツヒロは中古のステレセットを買った。笹塚の商店街にある質屋さんで、8,000円だった。未だ携帯電話も殆ど世の中に普及していない時代で、確か1台17万円もするショルダーフォン自動車電話と言うのが出回ていた時代だから、電話も持てなかったし、TVもラジオもなかった。だから、そのステレをセットのおかげで、ラジオやテープ、レコードが聞けるようになりカツヒロは本当に嬉しかった。

奨学生の中には、生活費をギリギリまで切り詰めて、給与の一部を親に仕送りする者もいた。カツヒロは仕送りまではしなかったが、お弁当を毎日作り、コツコツと留学費用を貯めていた。

専門学校のクラスメイトから、放課後、カラオケやビリヤード、麻雀、飲み会などに誘われたりもしたけど、参加できるの5回に1回程度。

「ごめん、俺、夕刊の配達があるか、ダメなんだ。」「嬉しいけど、月末は集金でお客さんの家に行かないとダメだから、もう帰るよ。」と言って、多くの誘いを断っていたので、お金は案外貯まって行きました。


つづく。

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