メジャーデビューしても食えるようにならない理由
このテーマでは何度も書いてきましたが、プロを目指しているアーティストには知ってもらいテーマなので繰り返し書きます。
私はメジャーのレコード会社で働いていましたし、特に新人開発の仕事をメインにやっていたので、新人を見つけて育てて売れるようになるまでの流れは数多く見てきました。
なのでメジャーのレコード会社の考え方ややり方はよく知っています。
今までレコード会社は相当な売り上げを誇ってきましたが、CDが売れなくなったことで、システム自体が機能しなくなってしまったのです。
つまり時代に合わなくなってしまったのです。
制作費や宣伝費もかなり縮小せざるを得ないし、それよりも売り上げが激減したことで、リストラや経費節減で食いつないできたのがここ数年です。
そんな中で新人が契約しても、売り出していく体力はありません。
売り出すためにキープした予算がなくなれば、契約期間の2年を待たずして契約終了というのはよくある話です。
プロダクションも基本的にはレコード会社からの資金援助でアーティストに給料を支払うことが多いですから、レコード会社との契約が終了した時点でプロダクションとしても継続して所属させるのは難しくなります。
アーティスト側から考えたときに、契約が終了したときに何が最大のデメリットかというと、レコーディングやライブ制作などのノウハウがほとんどアーティスト側に残らないことです。
契約期間中はアーティストまわりのことをレコード会社やプロダクションのスタッフが全てやってくれますので、これはこれでありがたいことではあるのですが、契約が終了した後に辛い思いをすることになります。
レコーディングやライブにどれくらい制作費がかかっていて、売り上げが具体的にどれくらいなのかということは、特に新人の場合は全くと言っていいほど教えてはもらえません。
曲を作ること、歌うことや演奏することに専念しろと言われるだけです。
CDが売れて潤っていた時代はそれでもよかったのかもしれません。
ただもうそんな時代には戻らないし、契約が切れてもアーティスト活動をやめるわけではないですから、その後は自分たちでやっていくしかないのです。
その時に、何のノウハウも残っていなければ、全くのゼロから始めることになります。
このリスクのことを知っておく必要があるのです。
メジャーに憧れ、一度はメジャーデビューしたいのもよくわかります。
でもはっきり言いますが、メジャーと契約したところで食えるようにはなりません。
1〜2年はなんとかやっていけるかもしれませんが、たとえ2〜3万枚アルバムが売れたところでどうなるものではありません。
電卓を叩けば数字はわかりますよね?
レコード会社やプロダクションの売り上げも微々たるものですが、アーティストに支払われる金額は本当に少額です。
現在売れている名のあるアーティストは、やっていく方法論はあるでしょう。
ただ新人に関しては、今の音楽業界には売っていくノウハウも体力もありません。
これははっきりしています。
そういう状況を知った上で判断をした方が良いでしょう。