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【エッセイ】クラクション

僕はクラクションの音が嫌いだ。

事故寸前の危機的な状況におけるクラクションは必要であり、命を守るために重要にであるが、僕が言うここで言う嫌いなクラクションは、信号待ちで前の車に信号が変わったことを気づかせるためのクラクションだ。

信号待ちで何か考え事をしたり、友人との会話に夢中になったりで信号が変わったことに気づかず、後方車両からクラクションを鳴らされた経験は多くの人が持っているように思うが、僕はあのクラクションがちょっと厳しすぎるように思う。長くても5秒くらいなのに、サウンドテンション的には「お前信号変わってるやろ!はよ気づけやボケ!どんだけ待たせんねん!」くらいに感じてしまい、その後鳴らしてきた車に追い抜かされようものなら、睨まれてたらどうしようなど被害妄想を膨らませてしまい、ビクついて横を見れなくなってしまうくらいだ。

そこで僕が提案したいのは、クラクションを最低でも2種類つけてほしい。メインの危険時用のクラクションは今まで通り真ん中についていていいが、ハンドルのどこか空いたスペースに第二クラクションをつけてほしいということだ。その第二クラクションは上記の信号が変わった際など、事故に直結するような危険なシーン以外で使うためのもので、その決定的な特徴は”音”にある。メインのクラクションが”プーッ”ならば第二は”ポファ~ン”といった具合になるべく気の抜けたものにしてほしい。そのことによって鳴らされた時もビクつかなくてすむ。言葉で表すなら「お~い、信号変わっているよ~、ちゃんと前見てね~」くらいのテンションで、鳴らされた人だけでなく、その周りの人までも少し和むような音が良い。

それから数年たつと、世の中はカスタマイズされたクラクションで溢れていた。

ディーラー「それでは最重要ポイントのクラクションのオプションについてなんですがー」

客「そこなんですよね~、昨日も家族で話し合ったけどなかなかまとまらなくて―」

ディーラー「今ならこちらの5種類パターンが人気ですよ。後から追加するってなると費用もかさんできますので始めからこれくらいは付けといたほうがいいかと...」

客「内容の方はどうなっているんですか?」

ディーラー「5種類の中でも1番人気は関西限定バージョンでして、①は”プーッ”、②はポファ~ン”とスタンダードなものになっており、③は”自分優しいな!”、④は”そこでハイビームにするんはちょっとちゃうで!”、⑤はオリジナルカスタマイズとなっています」

客「それなら、その関西弁バージョンにします。オリジナルは、、、”この時間ってやっぱり混みますねぇ”でお願いします」

ディーラー「は、はい、かしこまりました」

その日契約が取れて気分が良くなったディーラーは、いつもより多めに道を譲りながら帰っていった。

「自分優しいな!」

もっと気分が良くなった。





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