マジックの本を称賛するだけの文章(Artful Deceptions)

注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。

タイトル: 『Artful Deceptions』
著者: Allan Zola Kronzek
出版年: 2017年
ジャンル: カード、その他

『Artful Deceptions』は、アメリカのマジシャンAllan Zola Kronzek氏が2017年に発表した作品集です。この書籍はAllan Zola Kronzek氏が出した書籍の1冊で即興でできるカードマジックを集めた作品集となっています。

Allan Zola Kronzek氏は米国のマジシャンです。東京堂出版から刊行されている有名な『大魔法使いアラカザ-ルマジックの秘密』の著者でもあります。

本書はカードのマジックが8作品とお札を使ったマジックが1作品掲載されています。掲載されているカードマジックはシャッフルされたデックでできることがテーマになっています。同時に観客を巻き込むことを重視しており、そのための工夫が多く散りばめられています。
本書が他の書籍と大きく異なる点はこれらの工夫です。一般的にマジックの書籍というと新しい仕組みやスライト、またはカバーに注目する書籍が多い中で、本書はどのようなプレゼンテーションで観客を巻き込むのか、どのようにインパクトを向上しているのかという点に注力しています。例えば、カードを当てるときのカードのめくり方ひとつでも違いを生むことができるわけです。その中でも、この文章では特に「The Mirror」「Buried Treasure」についてコメントしたいと思います。

「The Mirror」はDo As I Doのバリエーションです。タイトルからも分かるとおり鏡をテーマにした作品となっています。鏡合わせになったマジシャンと観客が同じ動きをしていきながら、お互いにカードを1枚選びます。マジシャンと観客が再度選ばれたカードを取り出すと、そのカードが一致します。
本作品では2組のデックの他にグラスを使用します。本作品に限らずAllan氏はデックの他に使われる小物を多用しており、作品としての雰囲気を提供しています。本作品はグラスが無くても実施することが可能ですが、グラスが作品としての質をグッと上げていることが分かります。実際、本作品の最後に作られるイメージはグラスの有無で大きく異なるでしょう。

「Buried Treasure」は、分類が難しいですが、分類するとすればCard At A Numberのバリエーションではないかと思います。元々はDai Vernon氏の作品「Why Am I Here?」です。出てきたカードに合わせてカードを配っていくと選ばれたカードが出てきます。
本作品においても彼なりの工夫が加わることで、観客を大きく巻き込む作品となっています。人によっては本作品を観客を巻き込まずに演じることもできますが、そういった作品においても観客を巻き込む余地があることを知れる作品となっています。また、ここでも方位磁石が使われており原作を知っている人でも感じる感覚は異なるはずです。

本書のもう1つの特筆すべき点は、プレゼンテーションによって適切なミスディレクションが作り出されている点です。本書には難しいとされる技法が使われる瞬間も存在しています。しかし、そういった技法もプレゼンテーションによって適切なタイミングが提供されているため、掲載されている技法が自信の無いものであっても試してみてください。本書ではやり方やハンドリングでのカバーではありません。プレゼンテーションの中で生まれるタイミングがカバーとなることが浮き彫りになった本と言えるでしょう。

まとめると、『Artful Deceptions』は、アメリカのマジシャンAllan Zola Kronzek氏の作品集であり、同じマジックでも異なる味わいを観客に与えるための工夫が詰まった1冊です。プレゼンテーションが持つ力を感じる本になっています。さらにシャッフルされたデックでできる作品ばかりが選出されていますので、初心者から上級者まで多くの方におすすめできる1冊となっています。

以上が『Artful Deceptions』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。

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