マジックの本を称賛するだけの文章(ジョン・バノン カードマジック)
注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。
タイトル: 『ジョン・バノン カードマジック』
著者: ジョン・バノン(富山達也 訳)
出版年: 2013年
ジャンル: カード
『ジョン・バノン カードマジック』は2013年に発売された書籍で、ジョン・バノン氏が2004年に発売した『Dear Mr. Fantasy』の日本語訳版となります。
ジョン・バノン氏はアメリカのマジシャンで、多くの手順を発表しています。彼の有名な手順としては、トライアンフのバリエーションである「Play It Straight」などがあります。本書の他にも多くの作品を発表しており、多くのマジシャンに影響を与えています。
本書はカードマジックを中心にした作品集であり、Aアセンブリ、サンドイッチカード、スペリングなどの多くのプロットをカバーしています。さらにジョン・バノン氏の有名なSpectator Cuts The Aces「Final Verdict」も収録されています。その中でも、この文章では特に「Iconoclastic Aces」「Out of Touch」についてコメントしたいと思います。
「Iconoclastic Aces」は本書に書かれた3つのAアセンブリのうち、1つ目の作品です。本書に収録されたAアセンブリはバノン氏の試行錯誤が見えるものとなっており、現象のタイミングを変えるための工夫がされています。Aアセンブリというと有名なものとしてはDai Vernon氏の「Slow-Motion Four Aces」やJack Merlinの「Merlin's "Lost" Ace Trick」などが挙げられます。
本作品はどちらかといえば、「Merlin's "Lost" Ace Trick」に近い作風ですが、現象が起こるタイミングが風変わりなものになっていることで、観客の不意をつく構成になっています。個人的にはこういったクラシックで確立された作品をベースにした実験的な取り組みに対して強い関心を持っているので、本書の中でも特に好感の持てる作品でした。
本書には他にも「Syncopated Aces」「Interrobang Aces」が収録されており、同様に楽しめるものとなっています。
「Out of Touch」は観客の考えたカードを観客が当てるという現象です。このマジックは合理的で美しい流れを持っているため、読み飛ばさないでほしい作品です。カード当てには物語の起承転結のように特定のパターンがあります。起承転結に則ると展開を広げることができますが、失敗すると興味を無くす危険性もあります。マジシャンとしてはこの起承転結は大切であることを理解しながらも、あえて裏切る(またはそう見せない)ことも選択肢として持つことが可能です。
本作品はバノン氏らしい工夫によって、その起承転結をうまく裏切っており、加えて無駄の無い構成になっています。展開に必要な流れもプレゼンテーションによってうまく構築されていることから、観客は終わった瞬間に大きな驚きを感じるでしょう。こういった構成のマジックは、すべてのマジシャンが理解しておくべきだなとも感じる作品でした。
最後に、本書ではいくつかの作品が小説調に説明されている点がとても興味深いです。本を読むことが好きな私としては、本の中にある遊び心を見つけることが楽しく、マジックの本の中で小説が読めることはとても刺激的でした。マジックの本は明快な説明が求められますが、小説調であることから、マジックを行った時に生まれる感情までを感じることができ、たまにはこういった文章も読みたいと感じるほどに楽しめました。
まとめると『ジョン・バノン カードマジック』はジョン・バノン氏の作品集『Dear Mr. Fantasy』を翻訳した書籍であり、バノン氏の工夫が散りばめられています。全ての作品を少なくとも一度は試すべきであり、多くを学ぶことができます。デザイン好きなマジシャンにはおすすめできる1冊です。
以上が『ジョン・バノン カードマジック』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。