マジックの本を称賛するだけの文章(泡坂妻夫 マジックの世界)

注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。

タイトル: 『泡坂妻夫 マジックの世界』
著者: 泡坂妻夫
出版年: 2006年
ジャンル: カード、コイン、ロープ、リング他

『泡坂妻夫 マジックの世界』は2006年に発売された書籍で、日本の泡坂妻夫さんの作品をまとめた作品集となります。

泡坂妻夫(本名:厚川昌男)氏は日本の小説家で1990年に『蔭桔梗』で第103回直木賞を受賞しています。一方で厚川昌男氏はマジシャンとしても有名であり、第二回の石田天海賞を受賞しています。彼の小説『しあわせの書〜迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』は小説家としての一面とマジシャンとしての一面を併せ持つ彼ならではの小説であり、他の小説とは一線を画す工夫がなされています。

本書は小説家とマジシャンの二つの顔を持つ泡坂妻夫氏のマジックをまとめた作品集です。カードやコイン、ロープ、リングと多岐にわたる道具に関するマジックを紹介しています。収録されている作品やアイディアも捻りの効いたものが多いため、変化を求めたい人にお勧めしたい1冊となっています。その中でも、この文章では特に「天海のフライングクイーン」「コインアセンブリー」についてコメントしたいと思います。

「天海のフライングクイーン」は石田天海氏の有名なフライングクイーンのプロットに対する泡坂氏のアプローチです。フライングクイーンはさまざまなバリエーションが発表されていますが、近年のものは一定の手続きが定まっているように感じます。本作は同じエッセンスでありながらも異なる発展をするものであり、近年のバージョンに慣れている人にとっても目新しいようにも思います。特に本作品のオチは自然なものの一つだと思いますが、同時に興味深いバリエーションにも思います。
古典のプロットというと起承転結が暗黙の了解となっているものが多いため、同じエッセンスを踏襲しながらも異なる方向に進む作品は常に重要だと思っています。そういった意味では本作品は本書の中でも特にお勧めしたい作品だと感じました。このほかにも独特な技法なども収録されているため、カードマジックに関わる章は多くの発見があると思います。

「コインアセンブリー」は4枚のコインズアクロスです。本書に掲載されているコインの手順の中で本作品を選んだのは、本作品が本書で紹介されたコインのスライトをすべて活用しているため、彼のアイディアを堪能できる作品となっているからです。その中でも1枚目の移動に使われているMAカウントはお気に入りで、あまり例を見ないものとなっています。このスライトは自然な動きのなかで行われるようにデザインされているため多くの場面で活用できるでしょう。一方でMAパスはアクロバティックな動きで、対照的な印象を受けます。そういった意味でも多様な嗜好に対応する手順です。

最後に、どうしても触れておきたいものがリングです。本書には4本のリングを使った手順と5本のリングを使った手順が紹介されています。現象もバラエティに富むもので、リングを使った図形に関わる記載を文字で読んだのは初めてでした。基本的なハンドリングができるのであれば、本書に書かれた現象の中に自身の手順に加えられるものが見つけられるでしょう。記載は短いながらもエッセンスが詰まっていることから、自身のハンドリングを見直すという意味でもおすすめの章です。

まとめると『泡坂妻夫 マジックの世界』は日本の小説家かつマジシャンの泡坂妻夫氏の作品集であり、さまざまな道具のマジックを収録しています。各道具についてもバラエティに富む作品やスライトを発表していることからいろいろな角度からのアプローチを楽しむことができる1冊です。そういった意味では全てのマジシャンにはおすすめできる1冊です。

以上が『泡坂妻夫 マジックの世界』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。


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