海岸

「をかしのカンヅメ」創刊の想い

私には10歳下で生まれた時に病院で立ちあったいとこ(姉)と、12歳下で同じ申年のいとこ(妹)がいます。
2人は、チャックのYKKで有名な富山県の黒部市というところに住んでいます。

ひとりっ子の私にとって、2人とも可愛い妹のような存在。
私のことを世界で唯一「ふーさん」という敬称で呼んでくれる存在。
そして、一度も一緒に住んだことはないし、決して頻繁に会っている訳ではないけれど、特別な存在。

(姉)は小学校中学校と成績優秀。手先の器用なおばさんの血を引いて、裁縫をさせても絵を書かせても上手い。最近は演劇も始め、舞台芸術についても真剣に勉強しています。
つけたボタンが2日で取れ、みんなが5をつけた美術で3だった私とは大違いです。

(妹)は音読が上手で「気持ちを込める」ことに長けています。こっそり部屋を覗くと一人芝居をしていることも。子供の世話が得意で、全力で遊ぶので「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と慕われます。
小学校二年生の時に「スイミー」役をやって、緊張のあまり棒読みになり、観に来た母親の顔をずっと見つめていた私とは大違いです。

(姉)は県内一番の進学校に進みました。
天才的な逸材が揃っていることに、入学後すぐに気づいたそうです。「私なんかがこんなところにいていいのだろうか・・・」と悩み、授業は何を言っているのかわからない、という状況。日々の課題に追われています。

(妹)は小学校に入ると、算数がわからなくなりました。
時計を読めるようになるのも、九九を覚えるのも、計算をするのも一番遅く、次第に学校に行くのがいやになりました。
クラスに友達もなかなかできず、「ちょっと変な子」のレッテルが貼られているようです。
先日、授業参観に行くと、一人でポツンと座り俯いている(妹)の姿がありました。


「大人になるのが怖い」

この間、(妹)がご飯を食べながら口にした言葉です。

「そんなことないよ、自由で楽しいよ」

そんな言葉を言いかけて、なんて無責任なんだろう、と胸にしまいました。

算数がわからなければ、算数が得意な人に任せて、自分の得意なことを仕事にしたらいいよ。
演劇の道に進んでもいいし、好きなYoutuberになってもいいじゃん。
いろんな言葉が浮かんだけれど、そもそも、学校の勉強がうまくできない自分の人生は、お先真っ暗だと思っている彼女に、こんな言葉が響くはずはありません。

大人になるって、自由で楽しいこと

そんな風に思ってほしい。そのためには私が好きなことで食べていく姿を見てもらうのが手取り早いな。
でも、私の好きなことって何だろう・・・

演劇が好き、絵を描くのが好き、そんな風に言える2人が逆に羨ましくなりました。
「これが好き!」と言えるものが見つからないのに「好きなことをして生きていきたい」と思っている私。
一方、好きなことがたくさんあるのに、それで生きていくイメージが全くできないふたりのいとこたち。
何だか皮肉なものです。

だから、その両方を叶えてくれるメディアを立ち上げることにしました。
その名も「をかしのカンヅメ

私が「をかし」と感じた人に話をきき、その人の人生の分岐点となった出会いを言葉にします。
こんなをかしな人生があるんだ、好きなことで生きていってもいいんだ、こんなことが仕事になるんだ・・・

2人のいとこに、このかんづめに詰まった言葉たちが届き、100年後くらいに彼女たちが天国にいく時、「ふーさんの言葉がきっかけで出会ったものや出会った人が、私の人生を最高なものにしてくれたなあ」としみじみ思ってくれるように。
「ありがとう、ふーさん」と先に天国にいる私に言ってくれるように。

そんな想いを込めて、創刊します。


▶︎「をかしのカンヅメ」

すてっぴぃ@写真は黒部の海

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中﨑史菜
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