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再生エネを「3倍」に、2030年の世界と日本の針路

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記事の要約:

国際エネルギー機関(IEA)は26日、地球温暖化対策に関する報告書を発表しました。報告書では、パリ協定に基づく地球温暖化対策のため、2030年までに再生可能エネルギーの設備容量を現在の3倍にあたる110億キロワットまで拡大することを提言しています。これにより、2030年の発電容量に占める再生可能エネルギーのシェアは7割前後にまで高まることが見込まれています。

再生可能エネルギーの大幅な拡大は、2030年までに化石燃料の需要を25%減らす効果があると試算されています。また、2030年から2035年にかけての再生可能エネルギー関連の年間投資額は現在の2.5倍となる4.5兆ドルに達すると予想されています。IEAは、2030年までの再生可能エネルギーの拡大により、最大で中国の発電部門からの年間CO2排出量に匹敵する約70億トンのCO2排出削減が可能となると分析しています。

この背景には、太陽光や風力などの再生可能エネルギー技術が成熟し、コストが大きく低下したことがあると報告書は指摘しています。今後は新興国や途上国での普及が鍵となり、先進国による支援が重要だとしています。一方で、1.5°C目標の達成には新規の化石燃料投資は不要との見解を示しています。

日本は欧州や中国などと比較すると、再生可能エネルギーの普及が大幅に遅れているのが現状です。2022年の風力発電の新設容量は、中国が約3700万キロワット、アメリカが約860万キロワットであるのに対し、日本は23万キロワットにとどまっています。政策の遅れや規制の問題がネックとなっています。工業団地や耕作放棄地などの有効活用が進んでいないことも課題です。

エネルギー基本計画の目標どおりに2030年度の再生可能エネルギー比率を38%まで引き上げても、2021年度と比較すると1.7倍に留まります。世界的な再生可能エネルギーの台頭の中で、日本の影響力は低下する恐れがあります。風力発電などの分野で産業育成を図ることが急務と言えます。自国の脱炭素化を加速させ、アジアをはじめとする世界の排出削減に貢献するためにも、再生可能エネルギーの導入拡大が強く求められています。



再生可能エネルギー3倍が鍵

IEAの報告書は、2030年までに再生可能エネルギーの設備容量を現在の3倍の110億キロワットにすることを提言しています。これにより、2030年の発電容量に占める再生可能エネルギーのシェアは7割前後に高まると予測されています。

先日、友人と話している時に、「3倍にするなんて無理だろう」と言われました。確かに一見、ハードルが高そうに感じられます。しかし、過去を振り返ると、10年前にスマートフォンの販売台数を3倍にする!などと言われていたら、不可能だと思った人も多かったのではないでしょうか。

IT業界では、ムーアの法則という経験則があります。これは、半導体の性能が2年ごとに2倍になる、というものです。長年にわたり、コンピュータの処理速度はこの法則に則って成長を遂げてきました。

再生可能エネルギーでも、太陽光発電や風力発電の性能向上とコストダウンが著しく、導入が加速しています。30年前は実用化に程遠かった技術が、今では主力電源へと変貌を遂げつつあります。

過去の経験からすると、今回の「3倍」という目標は決して非現実的というわけではないでしょう。むしろ、そうした大胆な目標設定こそが、関係者の意識改革と技術革新を促すコミットメントになるのです。

日本の対応が鍵

報告書を見ると、日本の再生可能エネルギーの導入量が、欧州や中国に比べて著しく低い水準にあることが分かります。2022年の新設風力発電容量を例に取ると、日本は2万3千キロワットですが、中国は3700万キロワット、アメリカは860万キロワットもの大規模な設備を新設しています。

日本のエネルギー政策の遅れが目立っています。しかし、日本にも可能性は十分にあるはずです。再生可能エネルギーをめぐる世界の潮流を見ると、今こそ脱炭素を加速する好機なのではないでしょうか。

自動車業界では、全世界的に電動化が進む中、トヨタは水素社会の実現を目指す「Beyond Zero」というビジョンを掲げています。化石燃料に依存しない社会を目指す点では共通していますが、日本が先行する水素技術で勝負しようという戦略です。

日本のエネルギー分野も、世界の標準に追随するのではなく、独自の強みを活かした日本的な対応が求められているのではないでしょうか。海洋再生可能エネルギーの活用や、省エネ性能の高い次世代技術の開発など、日本ならではのアプローチが期待されます。

調和ある発展を

再生可能エネルギーの普及拡大は、脱炭素社会の実現に向けて重要な鍵となります。一方で、自然環境との調和も忘れてはなりません。

例えば、大規模な陸上風力発電所が乱立することで、地域の景観が著しく損なわれる事例が各地で問題視されています。生態系への影響も危惧されているところです。

ドイツでは、市民の発電所としての共同風力発電が盛んです。地域住民が出資して建設・運営に関与することで、地域に根差した環境配慮型の風力発電が推進されています。

日本でも、再生可能エネルギーの導入と自然環境・景観の保全を両立させるため、地域住民との合意形成が欠かせません。自然エネルギーの恵みを活かしながら、調和の取れた社会の実現を目指したいものです。


今日の問い

  1. 再生可能エネルギーの比率を高めるために、あなたの会社ではどのような取り組みを行っていますか?

  2. 化石燃料からのシフトを加速するには、業界全体としてどのようなことができるでしょうか?産官学連携の可能性も含めてご意見をお聞かせください。

  3. 地域の景観や生態系を保全しながら、再生可能エネルギーを導入する方法はあるでしょうか?


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