センセーションを起こす4人
11月28日、「Johnnys' Jr. Island FES」にて4人組ユニットJr.SPのオリジナル曲「センセーション」が披露されました。
彼らのパフォーマンス動画がジャニーズJr.公式YouTubeにあがっていない為、ここに貼れないのが心苦しいところではありますが……。
→ 2021.1.19 追記
YouTubeで動画が公開されましたので貼っておきます。顔が良い。
2020年版「A・RA・SHI」
「A・RA・SHI」がリリースされたのは1999年11月のこと。いわゆる“1999年7の月”こそ乗り越えたものの世紀末の閉鎖的な空気感は漂い続けていた頃にリリースされたこの曲と、その21年後、感染症流行下でのオンラインライブで発表された「センセーション」は、どこか類似点を帯びています。
You are my SOUL! SOUL!
いつもすぐそばにある
ゆずれないよ 誰もじゃまできない
体中に風を集めて 巻きおこせ
A・RA・SHI
A・RA・SHI for dream
今日もテレビで言っちゃってる
悲惨な時代だって言っちゃってる
ボクらはいつも探してる
でっかい愛とか希望探してる
Everyday! Everybody!
まだまだ世界は終わらない
いまから始めてみればいいじゃない
Let's get on!
Let's get on yea!
巻き起こせ終末にはまだ早い
終わりのない センセーション
立ち上がれ 迷いながらも強く
続いていく センセーション
燃えた心に刻んだ数え切れないROCK!
またサジェスチョン 叫べディスカッション
何度ディレクション 重ねて
曲全体としては、世間一般から見れば駆け出しのアイドルである彼ら自身のことを歌っているのにもかかわらず、妙に規模の大きい「まだまだ世界は終わらない」と「終末にはまだ早い」といったフレーズが散りばめられています。この2曲には、暗澹とした不安定な社会情勢下でこそ、夢に向かう自らの意志を強く持つという共通のテーマが見られるわけです。
また、「巻き起こせ」「巻きおこせ」というワードも特徴として挙げられますね。“巻き起こす”ものが曲名になっているという点でも、「センセーション」は強く「A・RA・SHI」を参照していると考えられます。夢に向かう意志を抱き続けるうえでの到達点として、(明るい意味で)社会を揺るがすような何かを巻き起こすことが掲げられているわけです。ここで抜粋した以外にも「揺れる明日に漂う予知もできない SHOCK!」などのフレーズはまさにそうですよね。
「命」
「センセーション」の歌詞には「命」というワードが2種3回登場します。
命震わせ 巻き起こセンセーション
立ち向かえ 何度だって 命は咲き誇る
これは、まさに現下の“2020年”の情勢を反映しているとも言えますし、(感情と生命が直結した、心中・死別チックな描写がみられる)「スワンソング」などKinKi Kidsの楽曲を多く披露してきた従来のJr.SPの文脈の先にあるものであると同時に、以下に示すようにJr.SPがジャニーズの舞台の系譜と隣接した位置に立つユニットであることを示しているといえるでしょう。
例えば、JOHNNYS' IsLANDシリーズで、2020年を見据えた曲として披露されてきた「明日に架ける橋」にはこんなフレーズが見られます。
ひとりひとり輝く命 やがて来る未来 すべて僕らのもの
また、やや以前の曲にはなりますが、Mr.KING「情熱の色」との共通点も見られます。
Go and Do 今 息切らして
Go and Do 夢まで行こう この手上に挙げて
まわれまわれ 色づいて
咲き誇る 花たちのように
未来なら此の手の中にある
2016年にスタートしたJOHNNYS' IsLANDシリーズでは、当時の社会情勢の影響もあってか、戦争と五輪とを対比させる形で若者の命の尊さが訴えられてきました。この歌詞はまさにその文脈に沿ったもので、後述のプロデューサーとの邂逅を思わせる部分と相まって、特にJOHNNYS' IsLANDシリーズの第一作であり、全編をジャニー喜多川がプロデュースしている「JOHNNYS' ALL STARS IsLAND」を感じさせるような歌詞になっているといえるでしょう。
"You"
「センセーション」の歌詞の中で、(括弧書きになっている部分を除き)英語表記になっている部分は4種5回に限られています。
一方で、曲名の「センセーション」をはじめ、「サジェスチョン」「ディスカッション」「ディレクション」のようにカタカナ語は頻出しており、戦隊ヒーロー系の楽曲のような雰囲気(とジャニーズの伝統としてのトンチキ風味)が漂っています。
英語表記の部分を列挙すると以下の通りです。
燃えた心に刻んだ数え切れないROCK!
誰より光る準備して You
揺れる明日に漂う予知もできない SHOCK!
何より強く煌めいて You
「ROCK」や「SHOCK」は、カタカナ表記になっている単語とは異なり「センセーション」の言い換えになっているためこの表記を採用していると考えられますが、「You」については、ジャニーズに提供されている楽曲であり、そもそも英語表記の単語を最低限に抑えている(=英語表記には何らかの特別な意図が存在すると考えるのが自然)以上、ジャニー喜多川の口癖を参照していることは明白でしょう。
「センセーション」では、ジャニー喜多川の口癖を歌詞に入れることで、先ほど挙げたように(演出家としての)ジャニー喜多川の手掛けた舞台の文脈を受け継いだ楽曲であることを示していますが、それだけではありません。(アイドルのプロデューサーとしてのジャニー喜多川像を浮かび上がらせることで)Jr.SPのアイドルとしての成長譚をも描き出しているのです。Jr.SPは、平均して入所8年目(11年目・9年目・7年目・5年目)の4人のユニットで、ユニットとしての枠組み自体も2年以上前からあるのにも関わらず活動が少なく、ここ最近Jr.の育成体制が変わり行く中でようやく今回念願の初オリジナル曲を手にしたユニットであり、今回の「センセーション」はその歩みを反映した楽曲に仕上がっています。
彼らの初オリジナル曲というのが、本人や周りのJr.にとってどれだけの価値を帯びたものなのか分かる資料を貼っておきますね。
和田 ついにね、あっためてたオリジナル曲を披露できましたね
中村 ねぇ!
林 本当にもう、もう(松尾)龍のところダメだって!あれはもうね、本当に泣きそう
Jr.SPが新曲を披露してるのを見て、なぜか泣いてしまった 笑
なんかすっげー嬉しかった 笑
(林)蓮音とは昔からの付き合いなので、本当に嬉しかったです。
― 井上瑞稀(HiHi Jets),ブログ12月2日更新分にて
おわりに
「Johnnys' Jr. Island FES」では、出演した全ユニットの新たなオリジナル曲が披露されました。ジャニーズJr.ユニットにここまで平等に楽曲が提供されたのは、紛れもなく体制が変わったからでしょう。「センセーション」の披露は、Jr.担にとって現体制の良い面の象徴でもありました。
(これも画像を貼れないのが心苦しいところではあるんですが)披露時にいつも以上の笑顔を見せる彼らの姿は、視界を滲ませるものがありますね。Jr.SP推しとしては、最後の和田くんによる挨拶の「それぞれのSPに向かって」というフレーズも印象に残っています。更に上を目指していくうえでは、一人ひとりが強みを持ち、グループで一緒にいること自体を目的化せずに立ち向かおうとするこの発想は正しいと思います。
→2021.2.9 追記
YouTubeで公演時の動画が公開されましたので貼っておきます。「晴れやか」という言葉に合う良い表情。
色々と書いてきましたが、何はともあれ、この「センセーション」をきっかけとして、2021年にJr.SPが更に羽ばたくことを願っています。