世界遺産~小笠原諸島 前半~
日本の世界自然遺産紹介、第4弾は「小笠原諸島」です!
「海」のイメージが強い小笠原諸島。名前は聞いたことがありつつも、何がすごいのか、どんな生き物が生息しているのか、あまりピンとこないのではないでしょうか。今回は、小笠原諸島について、紹介していきたいと思います!!
小笠原諸島の場所
小笠原諸島は、東京湾から約1,000km南方の北太平洋上に位置し、南北約400kmに渡って散在する30あまりの亜熱帯の島々の総称です。「東京都」に属しています。小学校の時に習った、「日本の最南端である沖ノ鳥島」や、「日本の最東端である南鳥島」も属しています。
この島々のうち、父島と母島には人が住んでいますが、他の島は無人島です。また、東京湾を船で出発して、24時間後に父島に到達できるという距離感です(移動手段は船のみ)。
「硫黄島」は、歴史的に名前を聞いたことがある人も多いかと思います。第二次世界大戦で、壮絶な戦地となった、悲しい歴史を持つ島です。今でも島全体が基地であるため、一般人の立ち入りは禁止されています。
小笠原諸島は、第二次世界大戦にてアメリカに占領されていました。日本に返還されたのは、1968年です。それ以前も、さまざまな国の経由地点としてや、捕鯨等の拠点として利用されてきた歴史があります。気候的にも、辿ってきた歴史ゆえにも、独特な文化や風土が根付いている島です。
小笠原諸島が世界遺産に登録された理由
小笠原諸島が世界遺産位登録されたのは、(ⅸ)の基準によります。陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本であるということで、遺産登録決定に至りました。
小笠原諸島の島々は、他の島と陸続きになったことがない、海洋島です。なので、基本的に、なんらかの方法で辿り着いた生命たちがそこに根付いて進化してきた結果が。小笠原諸島の生態系となっています。
小笠原諸島では、小さな島々の中で独自の種分化が起こり、他では見られない固有種が数多く存在します。特に、陸で生活する貝類や植物ではそれが顕著で、今でも進行中の進化の過程を見ることができるとこと。つまり、新種の発見も多い場所ということになります。
また、島内の低木林では東南アジアや沖縄の照葉樹林に似ている固有種が多く見られます。これは、照葉樹林の種子が小笠原諸島に到達したとおきに、ここの気候に合うように適応していったことで固有な種となったと考えられています。
また、もともと同系統だった植物が、島々に散らばってその場所に適応していった(適応放散)ことで、固有の種にしていったと考えられています。小笠原諸島はダーウィンがかつてフィンチから進化論を着想したことに準えて、「東洋のガラパゴス」と言われることもあるくらいです。そのため、他の場所にある植物と似ているけど少し違う(雌雄性の分化、草本が木本へなど)という進化様式を観察することができます。
小笠原諸島の地形
生態系を知るときに、その場所の成り立ちや地形が複雑に絡み合っています。小笠原諸島はたくさんの島々があるため、その地形もさまざまです。いくつか有名な地形を紹介します。
父島列島は、プレートのすぐ下で発生したマグマの火山活動にできました。
このときに発生したマグマが冷えて固まった岩石は、「ボニナイト」と呼ばれ、隕石によく含まれる鉱物を含む、地球上で観察するのはとても珍しいもので、こんなに綺麗なボニナイトが見られるのは小笠原諸島だけだそうです。
また、日本・世界さまざまなところで見られるカルスト地形ですが、小笠原諸島では、ラピエと呼ばれる鋭く尖った岩や、ドリーネと呼ばれるすり鉢状の窪地(扇池、鮫池等)、南島周辺ではカルスト地形が海中に沈降した「沈水カルスト」と、その様子が芸術的です。
母島列島は、父島列島ができてからさらに400万年後にできたと言われています。父島列島よりもさらに奥深くのマグマが母島列島を作ったと言われています。
母島で、かつて生息していた大型底生有孔虫の化石を見ることができます。
小笠原諸島で出会える生命たち(予告)
小笠原諸島には、他では出会えない命に溢れています。独自の進化を遂げた結果、小笠原は、小さな島の中に世界でもここにしかいない固有の生きものが数多く生息・生育しています。在来種に占める固有種の割合は、植物(維管束植物)で36%、昆虫類で28%、陸産貝類では94%にもなるそうです。
しかし、近年、この生態系を脅かすさまざまな問題が起きており、世界遺産としての価値を守るため、そして、ここでの生態系を人の手で壊さないために、さまざまな取り組みが行われています。
どのような生物がいて、どのような問題が起きているのかを次回、紹介していけたらと思います。
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