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スタートアップの悩み相談「借入と出資、どっちを使えばいいのか?」三つの観点から説明します

こんにちは、ステラ・システムズCEOの原です。ステラ・システムズはスタートアップの資金調達や事業計画の策定を支援しています。このNOTEは資金調達に困っているスタートアップの役に立てばと思い、書いています。私は、今まで30社以上のスタートアップの支援をしていますが、その中で多かった質問や課題とその回答を記載していきたいと思います。

前々回は銀行とのコミュニケーション、前回は銀行とコミュニケーションを取る際には投資家に説明している事業計画と同一であるべきと書きました。今回もスタートアップから多い質問である「借入とエクイティのどちらを使うべきかについて説明します」。

まず、ここはものすごく協調しておきたいのですが、両者は共通点もありますが、出資がだめだから借入にする、または逆の形をとるといったように、両者は相互に融通が効くものではありません。例えていうなら、マラソンとトライアスロンくらい違います(最近、村上春樹氏の「走ることについて語るときに僕の語ること」を読んだので影響を受けてます。ちなみに僕はマラソンは経験ありますが、トライアスロンはありません)。よくあるパターンで、スタートアップが出資の準備をして、投資家やら色んな人にボコボコに言われて、嫌になって、「出資を借入に切り替えたいんですが、どうでしょうか?」という質問が結構来ます。僕はその時にはいつも「そんな簡単なもんじゃないですよ」と回答しています(もちろん借入での調達余地があれば、その部分は手伝いますが)。

今回は、借入の方がいいか、出資の方がいいかについて、①銀行と投資家の目的の観点から、②経営の不自由さの観点から、③金額の観点から説明していきます。

第一に、銀行と投資家の目的の観点から、借入と出資のどちらがいいかを説明します。結論を先にいうと、銀行の期待に応えられる場合には借入を利用すればいいし、投資家の期待に応えられる場合には出資を利用すればいいし、両方に応えられる場合には両方使えばいいです。

具体的には、何度か同じ話を書いていますが、銀行の目的は貸したお金が利子込みで帰ってくることです。金利は2-3%と考えておけばOKです。なので、銀行の貸出審査ロジックについてはまた他のNOTEで説明するとして、元金と利息がしっかり払えるのであれば借入はできます。一方、投資家の目的は、投資した金額よりもずっと大きな金額で株式を売却できることです(投資した金額が何倍になるかを期待リターンと言います)。どれくらい大きな金額かというと、YJキャピタルの堀新一朗氏らの『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』ではアーリーステージのスタートアップへの期待リターンは20倍〜と説明されています。ALL Star Saasファンドの前田ヒロ氏はブログの中で20倍~48倍と説明しています。なお、期間はファンドから逆算すると7~8年になることが多いです。ざっくりいうと、1億円を投資して、それが7、8年後に20億円~48億円返ってくることを期待するのが投資家なのです。出資を受けた金額は返す必要がありません。でもその代わり高い成長を求められます。この点を理解している人、もしくは何を犠牲にしてもいいから自分の会社なり製品を成長させたい人だけが出資を受けるべきでしょう(僕は自分でその覚悟が出来ていないので自分の会社では出資を受けていないです)。借入期間中にきちんとキャッシュフローを確保出来て、中長期的には大きな成長を出来る場合には両方使うといいと思います。余談ですが、借入にはレバレッジ効果というものがあるので、成長している状態で借入を有効活用すると、効率的に経営できます。

第二に、不自由さの観点から、借入と出資のどちらがいいかを説明します。不自由さとは、経営の自由度(どんな組織にするか、上場するか、どのくらいで成長させたいか)と不可逆性(一回決めたら変えられないこと)を指します。この点では、借入の方が圧倒的に有利です。例えば、借入したけど、その担当の銀行員がものすごく嫌な人で定期的に顔を合わせるのが嫌だったら返しちゃえばいいんです(次に同じ条件でまた借入できるかどうか別の話ですが)。一方、出資を一度受けると、経営の自由度は狭くなりますし、一度出資を受けるとなかったことにするのは非常に難しいです。具体的には、出資を受けると大きな成長はマストになりますし、基本的には上場を目指していかなければなりません。上場するためには監査法人の監査やら証券会社のコンサルやらを受けなければなりませんが、これには年間数千万円かかります。また、新しいビジネスを思いついたとしても、他の人から色々言われる可能性があります(投資家が既存のビジネスに集中しろと言ったりとか、証券会社が新しいビジネスをやる場合にはIPOの時期が延びたりしますよと言ったりとか、そんな感じです)。また、一度投資家から出資を受けて数年後に自由にやりたいから投資家から株式を買い戻す場合等にはものすごーく揉めます。これが故に、投資は結婚に例えられたりします(離婚の方が結婚よりも難しいため)。スタートアップは出資を受ける時にはこの不自由さを余り考えない傾向がありますが、この点については一度考えたうえで出資の準備をした方がいいでしょう。

第三に、金額の観点から、借入と出資のどちらかがいいかを説明します。これは、一般的には出資の方が多いです。借入は、日常的な業務に使う金額(これを運転資金と言います)を前提とすると、おおよそ売上の3か月程度が目安になります。一方、出資については、会社のステージや時価総額、その時に出資してもらう金額によってまちまちです。僕がコンサルしている会社の具体例でいうと、A社は、時価総額プレ8億円で2億円調達しましたし、B社は時価総額プレ50億円で8億円弱調達しました(ちなみにこの2つの会社は運転資金ベースの借入では絶対にこの金額を調達することはできません)。

纏めると、借入はあくまで返せる金額しか調達できないが制約はあまり多くない、一方、出資は金額は大きくなる傾向があるし返さなくていいけれど、成長にコミットしなければいけない、IPO等を目指さなければいけない等の制約(覚悟といってもいいかもしれないです)が求められるという感じでしょうか。

借入と出資は、スタートアップが成長していくうえでは大きな味方になるので、しっかり理解して利用していきたいですね。相談がある方は、お気軽にhara.dsk.stella@gmail.comまでお問い合わせください。

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