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時の瀬音



いまだ色の灯ることのない歌がそこにはあった
いのちが語られる以前の息づかいが...
眠りのなかに目覚めたまなざしが...

姿なき振幅のなかに秘めたる意志をもって
歌は不滅の理のなかを生きている
天地が分かれる前の記憶とともに...

時の眠りを数えるように
歌は足音だけを残してゆく
時が開くのをうながすように...

語られることのない記憶が
時の息吹きを目覚めさせてゆく
深い静寂のなかで...

時は歌に生き… 歌は理をめぐる
風のように… 水のように...
川のように… 雲のように...

誰も聴くことのできない歌がそこにはあった
時が満つるために唄われる歌が...
いのちが語られる沈黙の歌が...

声なき聲のなかに宿るまなざしの歌に
世界は開き… 時は生まれる
いのちに満ちた記憶とともに...

限りない慈しみのなかで
時は歌い… 流れつづける
怖れを知らない子供のように...

誰も聴いたことのない歌のなかに
時は戯れ… 色は瞬く
生まれたばかりの言葉のように...

時は愛に生き… 歌に安らい
言の香をもつ言霊を歌う
花のように… 風のように...

歌はいのちの水脈を語りて
時と刻との契りを結ぶ
空と大地の遠音のように...



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