自死遺族の私が自殺未遂をした理由
私の父は、私が17歳の時に自死で亡くなった。
悲しかった。とにかく悲しかった。
まさかそれから10年以上経って、私も自死の道を選ぶなんて思ってもなかった。
父の自死の理由、自死した日
表向きには「ギャンブルにのめり込んだことによる借金を苦にしての自死」だった。
でも他にもある。
家庭環境の悪さ。
もう何年も、父と母は家庭内別居だった。
母は父の食事だけ作らなかった。
夜中に言い争ったり、食器の割れる音がしていた。
父は次第に家に帰らなくなった。
ある夏の暑い日、学校の体育の授業が終わると母からメールが来ていた。
「これを見たらすぐに帰ってきなさい」
嫌な予感がした。何が、とは上手く言えないが、とにかく嫌な予感がした。
家に帰ると居間に母がいた。
「お父さんが死にました。自殺です。」
ごく親しい友人にだけ
「今までご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
とメールを送り、
その時もう廃屋になっていた、父が生まれた家で首を吊って亡くなっていたそうだ。
足元にジャムパンの袋と、コーヒーの空き缶が落ちていたらしい。それが父の最後の晩餐だった。
近親者に自死した者がいる場合の精神科通院
父が自死してから10年以上経った頃だった。
当時交際していた既婚男性との関係に悩み、リストカットがやめられなくなった。
精神科に通院することになり、そこでADHDとそれに伴う鬱症状と診断された。
近親者に自死した者がいる患者の場合、その患者も自死を選ぶ傾向がかなり高いらしい。なので近親者に自死した者はいないか聞かれ、「父が」とだけ答えた。
1回目の自殺未遂 2020年8月
その日は、交際していた既婚男性の誕生日だった。
夜中に会えると言われていたのに連絡がなく、待っている間にかなりの量の酒を飲んだ。
その時に家にあった精神安定剤や睡眠導入剤を、全て飲んだ。
意識が朦朧とする中、リストカットを沢山した。
もう死のう。
そう思って、裸足で家を出て、家の近くの線路に立ち入った。
死ぬ前に彼に電話をと思い、かけた。出ない。
50回ほど着信履歴を残したけれど出なかったので、もういいや。と思って線路に立った。
電話が鳴った。彼からだった。
「死のうと思います。今までありがとうございました」
と告げると「好きにしろ」と言われた。
でも、怖くて死ねなかった。
私は血だらけの左腕と、線路近くの草むらに入った時にトゲのある植物で傷ついた足を引きずって家に帰った。
2回目の自殺未遂 2021年2月
勤めていた風俗店に「長期で休みます」と伝え、ニートになった翌月だった。
その頃私は某掲示板で酷い誹謗中傷を受けていた。
生きている意味がわからなくなった。
元々毒親育ちで自己肯定感の低い私はそれを見た瞬間、生きる理由がなくなったのだ。
また大量の酒と薬。リストカット。
今回は確実に死にたい。始発電車の時間を調べた。時間になるまで、またひたすらに酒で薬を流し込み、手首を切り続けた。
始発が来る10分前。
Twitter(当時)に「今までありがとうございました」と投稿し、スマホを線路脇に投げた。
着ていたものは冬用のパジャマに、サンダル。
踏切から線路に立ち入り、始発電車が向かってくる方向へ歩く。
その時だった。
「あんた、何しとるん!!」
中年女性の叫び声が聞こえ、私はその女性に線路から引きずり出されてしまった。
しばらくすると女性が通報したのだろう、警察官がたくさん来た。
最初に原付2台、更にまた原付2台、最後にパトカー1台。
私はパトカーの後部座席にねじ込まれ、女性警官に話を聞かれる。
でもこの時何を話したか、覚えていない。
パトカーで精神病院に連れて行かれ措置入院
パトカーで精神病院に連れて行かれ、そのまま措置入院となった。
「親には絶対に言わないでほしい」と伝え、着替えなどは友人に持ってきてもらった。
最初の数日間は保護室にいた。刑務所の独房のようだった。
トイレに壁がなく、自分で流すことができない。
部屋の天井に監視カメラがついている。
食事は小窓から出される。
本当に刑務所だった。
しばらくして一般病棟に移れた。
1ヶ月ほどで退院した。
自殺未遂をした理由、結局は何だったのか
今となっては理由を聞かれても分からない。
例えば「なんとなく今日はあれが食べたいな」という気分の日があると思う。
それと同じ感覚で「今日は死にたいな」という考えに至る。
それだけなのだ。
2020年2月の自殺未遂依頼、大きな自殺未遂はないが、ODやリスカはまだたまにやる。
今、私は猫を飼っている。大切な大切な、一人娘のような存在だ。
だから、本当に死にたいと思う日は多分もう来ない。
芸能人、著名人の自殺について思うこと
最近、芸能人や著名人の自殺が後を絶たない。
心が健康な人であれば「どうして」「信じられない」「相談できる人はいなかったのか」と皆口を揃えて言う。
でも私は「わかる。とても辛かっただろうな」と思う。私は「運良く助かっただけの死に損ない」だから。
ちなみに芸能人の自殺がニュースになる度に出る「いのちの電話」の類の電話番号。
あれ、絶対かけちゃダメ。繋がらないし、繋がっても相談員がお粗末すぎて余計に死にたくなるので。
精神科に通ってる人は、予約の日にちを早められるだけ早めて。カウンセリングや、薬を出してもらって。
精神科に行ったことがない人、「死にたい」と思ってる時点で危ないから精神科の予約を今すぐして。
いのちの電話は素人です。精神科に行けばいい先生や身体に合う薬が見つかります。
私の精神状態では、まだいつ寛解になるか分からないと言われている。あと5年、10年、20年……
いつまでかかるか分からない。でも、向き合っていかないと、と思う。
「今」つらいあなた。
しんどいよね。今すぐにでも死んでしまいたいよね。
生きろなんて言わないよ。本当に無理なら「死」に逃げていい。
でも私、生きてたから憧れだった猫を飼えた。
友達もたくさんできた。
私は、生きててよかったなって、少し思う。
だからもう少し生きてみようかなって思ってる。
あくまでも私の話ね。
どうかみんなが、自分にとって一番いい選択に辿り着けますように。
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