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7月2週 鉄鋼産業CN(脱炭素)ニュース

今週も新たな鉄鋼産業における脱炭素への取組みが報告されている。
注目するのは、海外での脱炭素技術開発に日本(海外合弁含む)のプラントメーカーが参加していることである。
アルセロール・ミタルの高炉からのCCSに三菱重工業が参加し、フィンランドのBlastr Green Steelのグリーン製鉄所建設にプライメタルズがパートナーとなり水素DRIプラントはMiDREX(神鋼子会社)が採用されることである。
半導体分野では、
1)日本のメーカーが世界で重要なポジション(NEC、東芝、日立、三菱電機、富士通)を占めていたが、やがて地位低下
2)それに対し、製造装置、検査装置では現在もトップシェアの企業は多数(東京エレクトロン、ディスコ、アドバンテスト、大日本スクリーン他)3)今では、政府補助金も含め海外半導体メーカーの工場誘致、地元は沸き立つ(TSMC、熊本県菊陽町)

これが、鉄鋼にも及んで
1)世界をリードする日本鉄鋼業(日本製鉄、JFE、神鋼)やがて地位低下2)製鉄プラントメーカー(スチールプランテック、プライメタルズ、MIDREX)は世界を脱炭素技術でリードするプラントメーカー
3)外資による国内製鉄所(?)
とならなければ良いが
利益が出ている保有資産(高炉製鉄所;1世代前の大規模設備)であっても廃却し、新技術による設備に投資する経営判断が必要だ。


■<国内・認証>合鐵/船橋 異形棒鋼でSuMPO EPD取得

*(2024/7/10 合同製鐵)合同製鐵船橋製造所 異形棒鋼製品 SuMPO EPDを取得

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01941/25d7375a/558d/4298/a5a4/e703cc6ff33d/20240710163914012s.pdf

合同製鐵株式会社は、船橋製造所で製造する異形棒鋼製品について、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の「SuMPO環境ラベルプログラム」に基づく「SuMPO EPD(旧:エコリーフ)」を7月8日に取得しました。

合同製鐵
合同製鐵

→電炉鉄筋メーカーでEPD認証取得はたぶん初

■<国内・設備>JFEエンジが九州製鋼佐賀工場内に系統用蓄電池設置

*(2024/7/11 JFEeng)佐賀県武雄市における系統用蓄電池事業への出資・参画について ~系統安定化ニーズの高い九州エリアにおける 系統用蓄電池への取り組み~

近年、再生可能エネルギー(以下「再エネ」)電源の導入拡大に伴い、再エネの出力変動緩和や系統負荷軽減の観点から、系統用蓄電池が注目されています。特に太陽光による発電割合が高い九州エリアでは天候による出力変動影響が大きく、出力制限が実施されるケースもあり、電力系統の安定化への対応が求められています。
武雄蓄電所合同会社
蓄電所名    武雄蓄電所
電池設置予定地    佐賀県武雄市 九州製鋼株式会社 佐賀工場内
定格出力    0.2万 kW
定格容量    0.8万 kWh
電池方式    リチウムイオン電池(LFP)
敷地面積    約600㎡
運転開始時期  2025年度(予定)

JFEEng

→九州製鋼は合鐵の資本が入っているが、JFEエンジが事業参画か
 日鉄エンジニアリングも電力小売事業を実施(廃棄物発電、ソーラーパネル)、蓄電池も取り扱っている

■<海外・技術>アルセロール・ミタル/ゲント製鉄所で世界初の高炉からのCCS試験開始~三菱重工業が参画

*(2024/7/8 三菱重工業)製鉄分野での排出CO2を再利用する新技術について、アルセロール・ミタルのゲント製鉄所で世界初となる実証試験を開始

◆ アルセロール・ミタルが中心となり、ディ・カーボンが有する新技術を用いた実証試験を実施
◆ 実証試験用の装置は、2024年7月1日に現地で接続
◆ 同製鉄所で実証試験中の三菱重工製CO2回収装置で、ディ・カーボンのプラズマ変換装置に高純度なCO2を供給
アルセロール・ミタル(ArcelorMittal)と三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)は、CO2再利用に関する先進技術を有するベルギーのディ・カーボン(D-CRBN)と協働し、回収した二酸化炭素(CO2)を鉄鋼や化学製品の原料となる一酸化炭素(CO)に変換する技術についての実証試験を、アルセロール・ミタルがベルギーに有するゲント製鉄所で開始します。これは、CO2排出量を削減するべく開発されたディ・カーボンのプラズマ変換技術を初めて実証する試験となり、ゲント製鉄所はこの一連のプロセスを実証する世界初の製鉄所となります。
ベルギー・アントワープを拠点とするディ・カーボンは、プラズマを用いてCO2をCOに変換する技術を有しています。再生可能電力を利用し、炭素(C)と酸素(O)の結合をプラズマによって切り離すことで二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)に変換します。変換されたCOは、高炉で使用されるコークスや原料炭の一部代替として製鉄プロセスに利用されたり、ゲント製鉄所で化学品や代替燃料製造の原料にも活用できます。
ディ・カーボンの変換技術に必要とされる高純度なCO2は、ゲント製鉄所において高炉ガスと圧延再加熱炉の排ガスからCO2を回収する実証試験に用いられている三菱重工のCO2回収装置から供給されます。CO2回収装置とディ・カーボンのプラズマ変換装置は、7月1日に接続されました。今回の実証試験は、鉄鋼生産の過程で発生するCO2に含まれる不純物がプロセスや製品ガスに悪影響を及ぼさないことを確認するという点において非常に重要な意味を持ちます。
アルセロール・ミタルは、2030年までに同社欧州拠点から排出されるCO2量を35%削減するといった脱炭素化目標の達成に向けた、いくつかの施策を打ち出しています。その1つが、高炉で排出されるCO2の循環利用(CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization)あるいはCO2貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)を行う「スマートカーボン製鋼」です。

三菱重工業

*(2024/7/8 ArcelorMittal)World-first trial of new technology to recycle CO2 emissions from steel production begins at ArcelorMittal Gent, Belgium

→上と同一内容

■<海外・技術>Blastr Green Steelがフィンランドに建設するグリーン製鉄所の技術パートナーとしてプライメタルズ、水素直接還元鉄プラントはミドレックスを選定

*(2024/7/9 Blastr Green Steel)Blastr Green Steel、フィンランドのInkooにある超低CO2排出製鉄所の技術パートナーとしてPrimetals Technologiesを選定 -MIDREX H2™が直接還元プラントに採用
Blastr Green Steel chooses Primetals Technologies as its technological partner for the ultra-low CO2 emissions steel plant in Inkoo, Finland -MIDREX H2™ chosen for the direct reduction plant

Blastr Green Steel(Blastr)は、フィンランドのInkooで年間250万トンの超低CO₂鋼を生産する予定の製鉄所の技術パートナーとして、金属業界向けの環境およびエネルギー効率ソリューションのマーケットリーダーであるPrimetals Technologiesを選択しました。このパートナーシップは、直接還元鉄(DRI)プラント、電気製鋼溶解工場、Arvedi ESPライン、連続酸洗・亜鉛メッキラインの設計など、鉄鋼生産におけるさまざまな重要なコンポーネントを網羅しています。Primetals Technologiesは、DRI技術の世界的リーダーであるMidrex Technologies, Inc.(以下、Midrex社)と共同で、最大100%水素ベースのDRIプラントを開発します。
技術パートナーシップ: Blastr Green Steelは、Primetals Technologiesを技術パートナーとして選び、フィンランドのInkooに超低CO₂排出の製鉄所を建設します。
水素ベースのDRIプラント: MIDREX H2™技術を使用し、最大100%のグリーン水素を利用して直接還元鉄(DRI)を生産します。
持続可能な製造プロセス: デジタル化とロボット技術を活用し、自動化された運転と生産管理を実現します。
高品質の鋼材生産: 自動車産業向けの高品質鋼材を生産し、エネルギー効率を高めるための廃熱回収システムを導入します。

Blastr Green Steel
Blastr Green Steel

→ Primetalsのリリース(Primetalsは三菱重工業が100%の議決権保有 本社英国)
*(2024/7/9 Primetals)BLASTR GREEN STEEL CHOOSES PRIMETALS TECHNOLOGIES AS TECHNOLOGICAL PARTNER FOR LOW-CARBON-EMISSIONS PLANT

→ MIDREXのリリース(MIDREXは神戸製鋼所の100%子会社;本社米国)*(2024/7/9 Midrex)Midrex and Primetals selected by Blastr

■<海外・技術>ドイツ;BSW/電気炉工場での水素バーナー開発プロジェクト開始

*(2024/7/3 BSW)バーデン製鉄、電気炉製鉄所における水素の柔軟な利用に関する研究プロジェクトを開始
Badische Stahlwerke starten Forschungsprojekt für den flexiblen Einsatz von Wasserstoff in Elektrostahlwerken

Badische Stahlwerke GmbH (BSW) は、Badische Stahl-Engineering GmbH (BSE) およびアーヘン工科大学と共同で研究プロジェクトを立ち上げました。その目的は、電気炉製鉄所で水素を使用するための新しいバーナー技術を開発することです。このように、Badische Stahlwerkeは、自社のCO2排出量をさらに削減するだけでなく、鉄鋼業界全体の脱炭素化にも貢献したいと考えています。このプロジェクトは3年間で、連邦経済・気候行動省(BMWK)から230万ユーロの資金提供を受ける。7月2日、プロジェクトパートナー3社、同省、プロジェクト管理機関のユーリッヒの代表者がBadische Stahlwerkeに集まり、研究契約に署名しました。
BSWは、2045年までに気候中立を達成することを目標としています。
例えば、溶鋼が溶解炉からさらに処理され、最終的に鋳造工場に輸送される取鍋の予熱は、気体燃料の使用によってのみ可能である。しかし、現在の天然ガスバーナーは、将来の水素利用を想定して設計されていません。
BSWは、将来に備えるため共同で、水素と、水素と窒素の化合物であるアンモニアを燃料として柔軟に利用できる新しいバーナー技術を開発する研究プロジェクトを立ち上げます。

BSW

■<海外・提携>カナダ・ニューファンドランドで製鉄をターゲットとしたグリーン水素ハブのプロジェクト発足

*(2024/7/5 CWP)CWP GlobalとThe Corner Brook Port Corporationが5GWのグリーン水素ハブGwinyaに関連する機会を模索するための覚書を締結
CWP Global and the Corner Brook Port Corporation Sign MoU to Explore Opportunities Related to 5 GW Green Hydrogen Hub Gwinya

プロジェクトGwinya: CWP GlobalとCorner Brook Port Corporationが、5GWの風力エネルギーを利用してグリーン水素とグリーン鉄を生産するハブを探求するための覚書を締結しました。
経済と環境への影響: このプロジェクトは、カナダとニューファンドランド・ラブラドールの経済成長と雇用創出を支援し、持続可能な経済成長の道を提供します。
鉄鋼業の脱炭素化: グリーンHBI(熱間還元鉄)は、鉄鋼業の脱炭素化に向けた主要な技術ソリューションであり、グリーン水素を必要とします。
地域社会との協力: プロジェクトは地域社会や先住民との継続的な協議を通じて進められ、地域の発展目標と一致するように設計されています。
再生可能エネルギーとグリーン水素プロジェクトのパイオニアであるCWP Globalは、Corner Brook Port Corporation(CPBC)との覚書(MoU)の締結を発表できることを嬉しく思います。両社は、最大5GWの風力エネルギーを利用してグリーン水素とグリーン鉄を製造するグリーン水素ハブ「プロジェクト・グウィニャ」の可能性を探ることに合意しました。
プロジェクト・グウィニャは、世界のエネルギー転換を支援するだけでなく、カナダとニューファンドランド・ラブラドール州の経済・環境目標と完全に一致し、経済成長と雇用創出のための持続可能な道筋を提供します。コーナーブルック港の熱間還元鉄(HBI)プラントを含むグリーン水素ハブは、地域の経済活動を後押しし、新しい雇用と機会を創出することで、この地域に大きな長期的な利益をもたらします。
世界の鉄鋼製造が世界の温室効果ガス排出量の約8%を占めていることから、グリーンHBIは現在、化石燃料ベースの製鉄を移行し、この基幹産業の脱炭素化を支援するための主要な技術ソリューションです。クリーンなHBI製造プロセスには、グリーン水素が必要です。ニューファンドランド・ラブラドール州は、効率的で低コスト、ゼロエミッションの発電を可能にする世界クラスの風力エネルギーの可能性を秘めており、このグリーン移行において重要な役割を果たす独自の立場にあります。コーナーブルック港は、カナダ国内外の鉄鋼メーカーに脱炭素鉄を供給する地元生産のHBIの輸出ハブとして、このプロジェクトで重要な役割を果たします。

CWP

■<海外・製品>VoestAlpineの水素DRIによる鋼材を基にして、SKFがベアリングの試作に成功

*(2024/7/10 SKF)SKFとvoestalpine、ベアリング生産の脱炭素化に向けて画期的
SKF and voestalpine reach milestone to decarbonize bearing production

SKFと、鉄鋼・技術大手voestalpineの子会社であるvoestalpine Wire Technologyは、水素直接還元鉄(H-DRI)を含む鋼製ベアリングの試作に成功しました。これは、H-DRIが従来の鉄鉱石ベースの製鉄に代わる低炭素排出であり、将来の鉄鋼を持続可能なものにするための重要な方法の1つであるため、ベアリング生産の脱炭素化に向けた取り組みの突破口となります。
SKFは、サプライヤーからのCO2排出量の少ない鉄鋼生産プロセス(スクラップベースの電気炉生産など)の使用を増やしています。2021年、SKFは「Steel Zero」および「Responsible Steel」イニシアチブのメンバーとなり、志を同じくする他の企業とともに、2050年までに鉄鋼業界を脱炭素化するという明確なコミットメントを示し、その実現に必要な変化を提唱しています。

SKF
SKF

■<海外・認証>ArcelorMittal DuisburgがResponsibleSteel認証を取得

*(2024/7/11 Responsible Steel)アルセロール・ミッタル・デュイスブルクがResponsibleSteel認証を取得
ArcelorMittal Duisburg earns ResponsibleSteel certification

アルセロール・ミッタル・デュイスブルクは、GUTcertによる2年間の監査プロセスを経て、ResponsibleSteel国際生産基準に対するコアサイト認証を取得しました。
アルセロール・ミッタルは、デュイスブルク工場にEAFを建設する計画で、アルセロール・ミッタルのハンブルク工場から低排出ガスポンジ鉄が供給されます。これにより、デュイスブルク工場は、高炉ベースの銑鉄を使用した生産からDRI-EAF生産ルートへの移行が可能になります。

Responsible Steel

■<海外・設備>台湾CSC/製鉄所のカーボンニュートラル化に備え、電力供給を拡充方針

*(2024/7/10 CSC)CSC 2050 年のカーボンニュートラルの課題に対応するために電力システム全体の回復力を強化
中鋼強化全廠電力系統韌性 迎接2050碳中和挑戰

CSCの取り組み: CSCは2050年のカーボンニュートラル目標に向け、電力システムの強化や再生可能エネルギーの導入を進めています。
再生水の利用: 2024年5月には、再生水の使用量を1日7.02万トンに増やし、工場内の水利用のレジリエンスを強化しました。
電力システムの強化: 2022年から2026年にかけて、15.5億元を投資し、再生可能エネルギーの割合を増やし、蓄電設備やマイクログリッドの導入を進めています。
太陽光発電と蓄電: 2024年6月末までに100.1MWの太陽光発電システムを設置し、2032年までに120MWを目指しています。1また、蓄電システムも導入し、電力の安定供給を図っています。

CSC
CSC

→日本語への翻訳ページは

2022年から2026年までの5年間で総額15.5億台湾ドルを投資し、発電量の増加促進など工場全体の電力システムの強靱性を強化する計画だ。再生可能エネルギーの割合、エネルギー貯蔵施設の建設、工場エリアの開発など、マイクログリッド、発電機セットの回復力の強化、電力AIスマートモジュールの適用など、これまでに完了した関連ソリューションにより、コストを3,215万元削減
CSCは工場内で消費される電力の約 50% を所内で賄うことができます。前例のない「カーボンプライシング」に直面し、「炭素関税とカーボンニュートラル」という3つの炭素課題のもと、CSCは2025年から2030年にかけて「高炉への直接還元鉄の添加」「水素富化」などの炭素削減対策を実施する予定である。
太陽光発電部分では、今年6月末時点でグループの太陽光発電システム建設量は100.1MWに達し、2017年10月からの累計発電量は将来的には6億キロワット時近くに達します。毎年1億1,000万キロワット時以上のグリーン電力を供給するだけでなく、今後も太陽光発電分野の建設を着実に進め、2032年までに総導入規模120MWに達したいと考えています。
さらに、エネルギー貯蔵設備に関しては、CSCが完成した最初の 1.8MWh エネルギー貯蔵システムは Taipower Power Trading Platform に計画的に参加し、周波数を安定させるために Taipower の電動ディスパッチング支援を受けました。2 番目の 2.2MWh と 3 番目の 7.0MWh エネルギー貯蔵システム。負荷転送、ピークカットとバレーフィリング、および重要なプロセスにおけるグリッドの回復力強化の観点から、電力消費と発電量を動的に調整する Taipower の負荷管理需要入札措置に長年協力しております。
工場内に自社製ガス発生器を備えたマイクログリッド電力供給システムを確立しただけでなく、太陽光発電を調整するためのエネルギー貯蔵マイクログリッドシステムも確立しました。太陽光発電と負荷をエネルギー貯蔵システムを通じてバランスさせることで、独立して動作するマイクログリッドが工場内のコンピュータセンター、間接循環水、および重要な負荷電気機器に電力を直接供給できるようになります。さらに、電力ビッグデータの開発に成功しました。長年蓄積された独自開発のAIインテリジェント技術と蒸気・電気共生ボイラー応用負荷最適化アルゴリズムによる最適な燃料供給と組み合わせることで、プラント全体の電力使用効率を効果的に改善し、エネルギーコストを削減します。

CSC

■<海外・論説>オーストラリアは水素や鉄鉱石の輸出ではなく水素製グリーン鉄鋼の輸出を指向すべき

*(2024/7/4 IEEFA)オーストラリアのグリーンアイアン生産のオンショアリングにおける水素の可能性
Hydrogen's potential for onshoring Australian green iron production

オーストラリアは、鉄鋼生産におけるグリーン水素の利用を推進しています。グリーン水素を用いた直接還元鉄(DRI)は、化石燃料を使わないため、温室効果ガスの排出を大幅に削減できます。オーストラリア政府は、グリーン水素の生産を支援するために、税制優遇措置や資金援助を提供しています。しかし、政府の「Future Gas Strategy」は、鉄鋼生産におけるガスの役割を維持する方針を示しており、矛盾が生じています。ガスを使用した鉄鋼生産は依然としてCO2を排出し、カーボンキャプチャー技術では十分に脱炭素化できません。オーストラリアは、グリーン鉄鋼のリーダーとなるために迅速な行動が求められています。
オーストラリアでは、グリーン水素を使用した新しいグリーン鉄プロジェクトが出現しています。
クイーンズランド州では、クインブルック・インフラストラクチャー・パートナーズの35億豪ドル(23億米ドル)のグリーン鉄プロジェクトが、Hydrogen Headstartの資金調達に最終選考に残った6つのプロジェクトのうちの1つで、2028年に生産を開始する予定の近くのCQ-H2施設からグリーン水素を使用することを目指しています。
南オーストラリア州政府は、2030年までにグリーン水素ベースのDRIプラントを設立し、豊富な再生可能エネルギー源(太陽光と風力)と、DRIベースの鉄鋼生産用の高品質のマグネタイト鉄鉱石の膨大な埋蔵量を利用することを計画しています。
西オーストラリア州では、フォーテスキュー社がすでにクリスマス・クリークにグリーンアイアンのパイロットプラントを建設中であり、同社のアイアンブリッジ・マグネタイト鉱山は、中国への主要なグリーンアイアンサプライヤーになることを目標に、DRIベースの製鋼に適した鉱石の生産を強化しています。
「水素の輸出は法外に高価に見えるため、オーストラリアのグリーン水素は国内で使用されるべきであり、製鉄は重要なオフテイカーとなる可能性があります」と、IEEFAのグローバル・スチールのエネルギー・ファイナンス・アナリストであるSoroush Basirat氏は述べています。
「鉄鉱石はオーストラリアにとって最大の輸出品です。つまり、グリーン水素を使用してこのセクターを真に低炭素に転換することは、Future Made in Australia計画の最も影響力のある部分になる可能性があります。」

IEEFA

→  IEEFA(Institute for Energy Economics and Financial Analysis)は米国のエネルギー市場、動向、および政策に関連する調査研究機関

■<海外・講演>WTOの鉄鋼の脱炭素化に向けての役割(中国での世界鉄鋼協会関連の会議にて)

*(2024/7/10 WTO)WTOシステムはグリーンスチール投資家への保険証書として役立つ
 WTO system can serve as insurance policy for green steel investors

7月10日に開催された鉄鋼業界会議の基調講演で、ジャン・マリー・ポーガム副事務局長は、鉄鋼の脱炭素化に向けた投資判断の保険としてWTOが果たす重要な役割を強調した。ネットゼロへの移行が世界的に急務であることを強調し、鉄鋼業界の持続可能な未来を確保するための革新的な道筋と協調的な政策を求めました。同氏の発言は、中国・江陰市で開催された2024年世界鉄鋼協会ライフサイクルアセスメント(LCA)および産業チェーン協調イノベーション開発会議で行われた。
主なポイントは以下の通りです:
グリーンスチールの重要性: 鉄鋼業界の脱炭素化は、地球温暖化対策として不可欠であり、WTOはこの投資を支援する保険証書として機能する。
技術的課題: 効率向上、スクラップ利用の増加、新技術の迅速な導入が必要。
財政的課題: 脱炭素化には巨額の投資が必要であり、市場の見返りが不確実。
規制の課題: 一貫した排出量測定基準の確立が重要であり、WTOはこれを支援する役割を果たす。
この講演は、鉄鋼業界とWTOの協力の重要性を強調しています。
2024年11月にアゼルバイジャンのバクーで開催されるCOP29までに、鉄鋼部門における共通の排出測定基準の確立と相互運用性の向上において具体的な進展をもたらすという、明確で測定可能な目標を持っています。

WTO

→WTO(World Trade Organization);世界貿易機関


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