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9月1週 鉄鋼産業CN(脱炭素)ニュース

9月1週のニュースを紹介します。


■<国内・開発>日本海側東北地方のCCS事業(日本製鉄参加)がJOGMECの公募事業に採択

*(2024/9/4 日本製鉄)「先進的CCS事業(二酸化炭素の分離回収・輸送・貯留)に係る設計作業等」の受託について

CCS事業の受託: 伊藤忠商事、日本製鉄、太平洋セメント、三菱重工業、INPEX、大成建設、伊藤忠石油開発の7社が共同で、日本海側東北地方のCCS事業構想がJOGMECの公募事業に採択
CCSの重要性: CCSは、日本政府の「2050年カーボンニュートラル」および「2030年度温室効果ガス46%削減」の目標達成に向けた重要な手段
事業内容: 九州製鉄所大分地区およびデイ・シイ川崎工場から分離回収したCO2を船舶で輸送し、地下に貯留する計画
今後の計画: 基本設計(FEED)作業や試掘調査を行い、2030年度の操業開始を目指す。

日本製鉄

既報 (2024/6月最終週) JOGMECのCCSプロジェクト

■<国内・製品>日本製鉄のグリーンスチール NSCarbolex Neutral 等が名古屋の物流施設(日鉄興和不動産他)のH形鋼に初採用

*(2024/9/2 日本製鉄)日鉄興和不動産が手掛ける物流施設「(仮称)LOGIFRONT名古屋みなと」に日本製鉄のグリーンスチール「NSCarbolex Neutral」、CO2排出削減に貢献するソリューション技術「NSCarbolex Solution」の採用が決定

グリーンスチールの採用: 日本製鉄の「NSCarbolex® Neutral」が、日鉄興和不動産とトヨタホームの物流施設「LOGIFRONT名古屋みなと」の鉄骨向けH形鋼に初採用
CO2排出削減: 「NSCarbolex Solution」の建築ソリューション「ProStruct®」も採用され、建設施工時のCO2排出量を約10%削減見込
マスバランス方式: グリーンスチールは、鉄鋼メーカーが実施したGHG排出削減量を製品に配分する方式で、Scope 3排出量からの控除として報告可能

日本製鉄

■<国内・製品>JFEのグリーン鋼材 JGreeX® がヤマハ発動機の表面実装機(基板に電子部品を高速で実装する装置)に採用

*(2024/9/3 JFEスチール)ヤマハ発動機の表面実装機にグリーン鋼材「JGreeX®」が採用

製品採用: ヤマハ発動機株式会社は、JFEスチール株式会社のグリーンスチール製品「JGreeX®」を表面実装機に採用することを決定
環境への取り組み: ヤマハは2050年までにカーボンニュートラルを目指しており、「JGreeX®」のCO₂排出削減効果を評価
グリーンスチール: 「JGreeX®」は、製鉄プロセスでのCO₂排出を大幅に削減する「マスバランス法」を使用

JFEスチール
JFEスチール

■<国内・政府>鉄鋼連盟が内閣官房のカーボンプライシング専門家ワーキンググループ第1回会合に資料提出

*(2024/9/3 内閣官房)内閣官房に設置した「GX実現に向けたカーボンプライシング専門家ワーキンググループ」第1回
「カーボンニュートラルに向けた日本鉄鋼業の取り組みとGX-ETSへの意見について」(日本鉄鋼連盟提出資料)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/carbon_pricing_wg/dai1/siryou4.pdf

*(2024/9/3 内閣官房)GX実行会議>GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ 第1回

提出資料
資料1 GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループの開催について(PDF/114KB)
資料2 議事次第(PDF/61KB)
資料3 事務局説明資料(PDF/4.3MB)
資料4 ヒアリング資料(一般社団法人 鉄鋼連盟)(PDF/2.8MB)→上記
資料5 ヒアリング資料(石油連盟)(PDF/710KB)
資料6 ヒアリング資料(一般社団法人 日本化学工業協会)(PDF/2.1MB)
資料7 ヒアリング資料(電気事業連合会)(PDF/3.0MB)
資料8 ヒアリング資料(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン))(PDF/4.6MB)
参考 GX実現に向けた実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループの構成員について(PDF/70.9KB)

内閣官房

ネットライブ中継あり 約2時間半

■<国内・解説>鉄鋼のカーボンニュートラル化と自動車産業への影響

*(2024/9/3 KPMG)鉄鋼のカーボンニュートラル化の現在地 ~低炭素化技術と自動車産業への影響

鉄鋼業界の低炭素化やバイオマス資源の利用、持続可能な製鉄技術が自動車産業に与える影響を詳しく解説
バイオマス資源と製鉄: 産業革命以前からバイオマス資源が製鉄に利用されており、現在も再評価が進んでいます。
低炭素化技術: 鉄鋼業界では、製造プロセスの変更やCO2回収・貯蔵技術(CCUS)など、低炭素化に向けた多様なアプローチが取られています。
自動車産業への影響: 鉄鋼の低炭素化は、自動車産業にとっても重要な課題であり、価格競争力の低下が懸念されています。
再生可能エネルギーの課題: 日本は地理的制約が多く、再生可能エネルギーの導入に課題があります。
鉄の低炭素化を実現するためには以下の図に示すように、還元材をバイオマス資源由来や再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来の水素に置き換える方法や、アルミニウム精錬のように電気を用いる方法があります。いずれの方法も、再生可能なバイオや再エネ資源の使用が前提となります。日本は、欧米や中国と比較して農地面積が小さく、海の水深は深いため洋上風力適地は限られています。さらに、乾燥地帯に比べて太陽光の発電ポテンシャルも低いなど再エネ導入には地理的な制約が多くあります。また、再エネで製造した燃料を輸入などの検討は進められていますが、合成や輸送のためのエネルギー損失が不可避であるため、再エネが地産地消可能な地域に対して不利となることが考えられます。
エネルギーコストの高騰によりアルミニウムの製錬工程が日本から無くなったことを踏まえると、同様の理由から日本国内での鉄鋼の製錬所(高炉)が大幅に減少する可能性があります。これは、日本の鉄鋼の約8割は高炉製鉄が占めているため、輸入鉄に大きく依存することにつながります。そのため、自動車含む鉄鋼使用製品の原価が上昇することとなり、価格競争力の低下がすることが懸念されます。つまり、鉄鋼のカーボンニュートラル化は自動車産業にとっても重要な課題です。
鉄鋼のカーボンニュートラル化を実現するために、再エネ以外による代替技術も世界で開発が進んでいます。たとえば、次世代革新炉の1つである高温ガス炉は発電と同時に、水の熱分解による水素製造そして、水素還元製鉄への利用にも期待されています。中国では2023年末に実証炉が稼働を開始し、発電と地域への熱供給を同時に行っています。日本でも、2030年代後半に同様の実証炉が稼働する計画です。再エネ資源の多寡で競争が行われるなかで、日本の将来は厳しい状況に直面しています。技術開発においては例外を設けることなく、サプライチェーン全体での取組みが求められています。

KPMG

■<海外・設備>PrimetalsがJSPより高炉ガス注入システム(水素を含む)を受注

*(2024/9/4 Primetals)JSP向けにグリーン対応強化と操業コスト削減に貢献する高炉ガス注入システムを受注

新システム導入: プライメタルズ テクノロジーズは、ジンダル スチール アンド パワー(JSP)向けに水素含有合成ガス注入システムを導入し、CO2排出量削減と操業コストの低減を目指します。
環境への配慮: 新システムは、既存の化石燃料の一部を水素に置き換え、高炉の環境性能を向上させます。

Primetals

■<海外・提携>ValeとMidrexが鉄鉱石ブリケットの直接還元プラントでの使用について技術協力契約

*(2024/9/4 Miderx)ValeとMidrex、直接還元プラントでの鉄鉱石ブリケットの使用で協力
Vale and Midrex to Cooperate for Use of Iron Ore Briquettes in Direct Reduction Plants

技術協力契約: ValeとMidrex Technologiesは、鉄鉱石ブリケットの直接還元プラントでの使用に関する技術協力契約を締結
ブリケット技術: Valeのブリケット技術は、低温プロセスで高品質の鉄鉱石凝集体を生成し、機械的強度が高い製品を提供
環境への影響: この技術は、従来のペレット化プロセスに比べて生産コストが低く、投資強度が低く、CO2排出量が約80%削減
将来の展望: 技術が成功裏に実証された場合、両社はブリケット技術と施設を市場に提供するための合弁会社の設立を検討

■<海外・統計>Midrex/2023年の世界DRI生産統計を発表(世界6.5%増の1億3千万トン強、首位インド、以下イラン、ロシア、サウジ、エジプト)

*(2024/9/5 日刊産業新聞)米ミドレックス 23年統計 世界DRI生産6.5%増 1億3570万トン、首位はインド

神戸製鋼所の新鉄源子会社、米ミドレックステクノロジーズは3日、2023年の世界直接還元鉄(DRI)生産量が前年比6・5%(830万トン)増の1億3570万トンだったと発表した。首位はインドの4930万トン、次いでイランの3340万トンとなった。インドではロータリーキルン(460万トン)および天然ガスシャフト炉(370万トン)での生産が増えた。3位はロシアで780万トン、4位サウジアラビアの670万トン、5位エジプトの640万トンなど。

日刊産業新聞

■<海外・報告>McKinsey & Company の専門家「グリーンスチールプレミアはコスト増には不足」と発表(中国鋼鉄会議)

*(2024/9/5 Fastmarkets)グリーンスチールのプレミアムは、短期的には技術コストを相殺するのに十分ではない:中国鋼鉄会議
Green steel premiums not enough to offset technology costs in the short term: China Steel Congress

鉄鋼消費者が「グリーン」製品にプレミアムを支払う意欲は、短期的には技術移行の追加コストを相殺するには十分ではなかったと、経営コンサルタントのマッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバル・マテリアル・インサイト部門のシニアパートナーであるカレル・エルート博士は述べています。
グリーンスチールの課題: 短期的には、消費者がグリーンスチールに対して支払うプレミアムが技術移行の追加コストをカバーするには不十分です。特に水素ベースのDRI-EAFルートでは、誰も$330/トン以上のプレミアムを支払う意欲がありません。
価格動向: ヨーロッパやベトナムでのグリーンスチールの価格差は、最近の数ヶ月で安定していますが、昨年と比較して減少しています。
将来の見通し: 2030年までに、NG-DRI-EAFルートは経済的に実行可能になると予想されていますが、水素ベースのルートは依然として高コストです。
需要の変化: グローバルな脱炭素化の動きと鉄スクラップの利用増加により、DRIとスクラップの使用が増加し、2035年までに金属需要は2.06億トンに達すると予測されています。

Fastmarkets

■<海外・団体>EUROFER(欧州鉄鋼連盟)がEU鉄鋼業の保護のため、クリーン産業協定が必要と主張

*(2024/9/5 EUROFER)欧州の鉄鋼産業と製造業は存亡の危機に瀕している:より強く、より環境に優しいEUのための急進的なクリーンインダストリアルディールの最終列車、EUROFERが警告
European steel industry and manufacturing at existential risk: radical Clean Industrial Deal last train for stronger and greener EU, warns EUROFER

EUROFER、「欧州鉄鋼業を守るためクリーン産業協定は不可欠」=需要低迷・輸入増で域内鉄鋼業の弱体化進む
欧州の鉄鋼業界の危機: 欧州の鉄鋼業界は、安価な輸入品や不公平な貿易慣行により深刻な危機に直面しています。特に自動車産業などの重要なバリューチェーンに影響が及んでいます。
クリーン産業協定の必要性: 欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は、EUの産業、エネルギー、貿易政策において迅速かつ抜本的な対策を求めています。これにより、欧州の繁栄と産業を守ることができるとしています。
具体的な要求: 不公平な貿易慣行を阻止するための包括的な貿易対策、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の強化、そして手頃な価格のクリーンエネルギーの提供が必要です。
欧州鉄鋼業界の重要性: 鉄鋼業界は、風力や太陽光、自動車、建設、防衛など多くの重要な産業にとって基盤となる存在です。

EUROFER

■<海外・報告>EUのCBAM(炭素国境調整メカニズム)さらに対象が拡大か、2026/1からの導入に対し、輸出品は対策必要

*(2024/9/4 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM):対象製品拡大の方向性

https://www.murc.jp/library/column/qmt_240904/

CBAMの導入: EUは2026年1月から「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」を導入し、輸入品に対して炭素排出量に応じたコストを課します。
背景と目的: CBAMは、EUの「欧州グリーンディール」に基づく気候変動対策の一環で、炭素漏出を防ぎ、グローバルな炭素排出量削減を目指しています。
対象製品: 鉄鋼、アルミニウム、肥料、セメント、水素、電力などが対象で、今後さらに有機化合物やプラスチックなどが追加される可能性があります。
企業の対応: 企業はGHG排出量の削減や代替素材の使用などで炭素コストを低減・回避する必要があります。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング

■<海外・NPO>SteelZeroが英国新政権に鉄鋼のネットゼロ推進を要望

*(2024/9/4 theclimategroup)SteelZeroは、英国の新政府にネットゼロの鉄鋼移行を優先するよう呼びかけ
SteelZero calls on the new UK government to prioritise the net zero steel transition

英国の新しい産業・脱炭素化担当大臣であるサラ・ジョーンズ議員に宛てた手紙について述べています。約20のSteelZeroメンバーが署名したこの手紙は、英国政府に対し、鉄鋼業界のネットゼロ移行を優先するための一貫した産業戦略を求めています。
主なポイント:
新大臣への祝辞: Climate Groupはサラ・ジョーンズ議員の新役職を祝福し、鉄鋼業界の脱炭素化を支援する政策の重要性を強調しています。
国際競争: グリーンスチールへの移行が進む中、英国が競争力を維持するためには一貫した戦略が必要とされています。
具体的な要請: 手紙では、ジョーンズ議員に対し、鉄鋼業界の脱炭素化を支援するための政策優先事項に焦点を当てるよう求めています。

The Climate Group

全文は、リンクを通じてダウンロード可能です。


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