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8月3週 鉄鋼産業CN(脱炭素)ニュース

この週も記事は少ない。
前にも触れた記事タイトルリストが出来ましたので、下記にULします。(ただし6月以降の簡略版)。マニュアルは制作中です。それらが完成次第、掲載します。


■<国内・製品>神戸製鋼所のKobenable® Steelがコンテナ運搬船用鋼材に初採用(常石造船/中国)

*(2024/8/21 神戸製鋼所)中国で建造されるコンテナ運搬船に低CO2高炉鋼材” Kobenable® Steel”が初採用

低CO2高炉鋼材の採用: 常石造船の中国現地法人が建造する5,900TEUコンテナ運搬船に、CO2排出量を100%削減した「Kobenable® Premier」が採用されました。 初の海外採用です。
メタノール二元燃料焚き: このコンテナ運搬船は、常石グループ初のメタノール二元燃料焚き船で、CO2排出量削減に貢献します。メタノール燃料タンク用途として使用
高品質維持: 「Kobenable® Steel」は従来と同等の品質を維持し、特殊鋼線材や超ハイテン等の高品質が要求される製品にも対応しています。
グリーン社会への貢献: 低CO2高炉鋼材(ミドレックス技術(天然ガスを使った還元鉄製鉄法;世界の主流)を用いて製造したHBI(熱間成形還元鉄)を加古川製鉄所の高炉に多量に装入)を様々な分野に提供し、グリーン社会の実現を目指しています。

神戸製鋼所

→HBIの高炉装入を売り物に

■<国内・製品>千代田鋼鉄工業の電炉製ガルバリウム鋼板(東京製鐵製)を原板としたカラー鋼鈑(「サーキュラーカラー鋼板」)が公共施設の屋根材に初採用

→ 千代田鋼鉄工業、東京製鐵、内藤ハウスのいずれからのプレスリリースがないので、この件以下と推定
「千代田鋼鉄工業の原板に電炉ガルバリウム鋼板(東京製鐵製)を用いたカラー鋼板(「サーキュラーカラー鋼板」)が、内藤ハウスの製造するシステム建築(KIT-Base+)の屋根材(ルーフデッキ)に採用され、長野県松本市の公共施設の屋根材に適用された。」

*(2024/8/21 鉄鋼新聞)千代田鋼鉄工業、電炉製ホット原板のカラー鋼板が内藤ハウス向け屋根材で採用

千代田鋼鉄工業は20日、システム建築やプレハブなどを展開する内藤ハウスが手掛ける「KIT―Base+(キットベースプラス)」向けに、電炉製ホットコイルを原板とするカラーガルバリウム鋼板「サーキュラーカラー鋼板」を使用した屋根材(ルーフデッキ)が採用されたと発表した。
同鋼板は、これまで普及している高炉原板のカラーガルバリウム鋼板(カラーGL)と同等の加工性を保持。成型加工の精度も良く、問題なく完工の実績を上げている。千代田鋼鉄工業では、倉庫や工場に使用される断熱サンドウィッチパネル用途などでの採用を受けて、電炉製ホットコイルを原板とするカラー亜鉛めっき鋼板(カラーGI)の生産を開始する一方、今回のような外壁材より耐久性や耐食性が求められる屋根用途での採用は「業界初であり画期的」(同社)としている。

鉄鋼新聞

*(2024/8/21 日刊産業新聞)千代田鋼鉄工業の電炉原板カラーGL 公共施設屋根材に初採用

異形棒鋼・カラー鋼板メーカーの千代田鋼鉄工業(本社=東京都足立区、坂田基歩社長)は20日、電炉材を使用する「サーキュラーカラー鋼板」のカラーガルバリウム鋼板(カラーGL)が、長野県松本市の公共施設に屋根材として初採用されたと発表した。

日刊産業新聞

→ 過去の参考記事
(2024/5月1週)千代田鋼鉄が東京製鐵の電炉ガルバリウム鋼板を用いて塗装鋼板を生産開始;「サーキュラーカラー鋼板」とネーミング

■<国内・経営>日本製鉄・今井社長インタビュー/脱炭素化への電炉導入の課題

*(2024/8/16 読売新聞)「脱炭素化へ電炉導入、技術開発だけの問題ではない」「USスチール買収では一貫して対話の機会望んでいる」…日本製鉄・今井正社長

脱炭素についての発言部分

技術開発の課題: 脱炭素化のための技術開発が必要であり、実証された技術がまだないため、開発が最優先
大規模な投資: 製鉄所の資本の半分を作り替えるような大規模な投資が必要であり、投資回収の予見性が課題
エネルギー供給網の整備: 電炉に使う電力や燃料の供給網、産業インフラの整備が必要
政府の支援: グリーントランスフォーメーション経済移行債を財源とした支援策や税制的な優遇措置が用意

読売新聞

■<海外・政府>Tata/Port Talbotに英国政府が1,350万ポンド提供

*(2024/8/15 fastmarkets)英国はサプライチェーンを支援するために1,350万ポンドを提供し、タタ・スチールはポート・タルボットでグリーン製鋼に移行
UK to provide £13.5 mln to support supply chain while Tata Steel transitions to green steelmaking at Port Talbot

支援金の提供: 英国政府は、タタ・スチールのポートタルボット製鉄所の脱炭素化計画に伴い、サプライチェーン企業と労働者を支援するために1350万ポンド ($17.3 million)を提供
脱炭素化計画: タタ・スチールは、3.2百万トン/年の電気アーク炉を建設し、既存の高炉を段階的に閉鎖する計画です。これにより、2028年までに新しい電気炉(EAF)が稼働予定
労働者支援: 労働者には新しい職業訓練や資格取得の支援が提供され、50以上の企業が再就職支援を約束
輸入割当の拡大: ポートタルボットの高炉閉鎖により、英国市場での鋼材価格が上昇しているため、輸入割当が拡大

Fastmarkets

→ 過去の参考記事
(2024年1月最終週)タタ・スチール/ポート・タルボットの年内に高炉休止、電炉置換

■<海外・解説>グリーン水素がMENA(中東・北アフリカ)の鉄鋼産業を変える

*(2024/8/15 IEEFA)グリーン水素を活用してMENA鉄鋼セクターの排出量を削減
Leveraging green hydrogen to lower MENA steel sector emissions

https://ieefa.org/resources/leveraging-green-hydrogen-lower-mena-steel-sector-emissions

MENA地域の製鉄業者がガスベースの直接還元鉄(DRI)プラントをハイブリッドシステムに変えることで、排出量を削減する方法について説明しています。
主なポイントは以下の通りです:
水素の部分代替: 天然ガスの一部を水素で置き換えることで、施設の規模を小さくし、資本コストを削減
再生可能エネルギーの課題: 太陽光や風力などの再生可能エネルギーは変動が大きく、電解槽の安定した運転が難しいため、電力貯蔵システムが必要
段階的な移行: ガスベースのDRI技術を利用している製鉄業者は、段階的に水素を導入することでリスクの管理が容易
地域の特性: MENA地域は再生可能エネルギー資源が豊富で、季節変動が少ないため、水素の生産と貯蔵が比較的容易
このように、MENA地域の製鉄業者は、段階的な水素導入を通じて、より持続可能な製鉄プロセスに移行することが期待される
MENA地域の鉄鋼メーカーは、水素に完全に切り替える前に、現在のガスベースのDRIプラントをハイブリッドシステムにすることで、排出量を削減できます。
グリーン水素を24時間連続で供給することは、鉄鋼メーカーにとって大きな課題ですが、既存のDRIプラントで天然ガスを水素に部分的に置き換えることで、低排出の鉄を生産する機会があります。
水素を部分的に代替することで、施設の規模を小さくすることができ、資本コストが削減され、より管理しやすい移行プロセスにつながります。

IEEFA

Institute for Energy Economics and Financial Analysis(IEEFA)は、エネルギー市場、動向、政策に関連する問題の調査機関。研究所の使命は、多様で持続可能で収益性の高いエネルギー経済への移行を加速すること。

→ 先日の以下のレポートに引き続きMENAが注目
(2024年8月2週)中東・北アフリカ(MENA)がEUのグリーンスチール市場でシェア拡大の可能性

■<海外・解説>グリーンスチールと自動車産業

*(2024/8/16 MIT Technology Review)グリーン鉄鋼で温室効果ガス削減、自動車産業が果たす意外な役割

鉄鋼生産の影響: 鉄鋼生産は世界の温室効果ガス排出量の約7%を占めており、特に自動車産業が大きな役割を果たしています。
グリーンスチールの可能性: 環境に優しい鉄鋼技術が開発されており、自動車産業がその初期市場として有望です。グリーンスチールを使えば車の製造に伴う排出量を27%削減できる。新車のコストは1%未満の上昇にとどまる可能性があります。
水素利用の技術: 水素を燃料とする直接還元法により、鉄鋼生産の排出量を最大95%削減できる可能性があります。
H2GreenSteelについて触れる。2026年までに250万トンの鉄鋼を生産する世界最大の低排出製鉄工場を建設中
自動車産業の役割: 自動車メーカーがグリーンスチールを採用することで、業界全体の脱炭素化を推進する重要な役割を果たすことができます。

MIT Technology Review

→ 先に報告したICCTの資料を引用
(2024年8月1週)米国とEUの自動車産業にとって、鋼板のグリーン化は製造時のCO2排出を98%以上削減し、コスト上昇は1%未満である

他のレポートも紹介

*(2024/7/10 Transport Environment)自動車鋼材を清浄化 なぜ、どうやって?
Cleaning up steel in cars: why and how?

European Federation for Transport and Environment 欧州運輸環境連盟

自動車業界の役割: 自動車業界は、グリーンスチールの需要を創出し、ヨーロッパでのリード市場となる可能性があります。自動車はEUの鉄鋼消費の17%を占めています。
気候への影響: 2030年までに40%のグリーンスチールを使用することで、自動車の生産によるCO2排出量を690万トン削減できます。2040年までに100%のグリーンスチールを使用することで、さらに大きな削減が期待されます。コスト影響: グリーンスチールの使用は新車の価格にわずかな影響しか与えません。2030年には電気自動車の価格に57ユーロの追加費用がかかると予測されています。
政策提言: 政策立案者は、グリーンスチールの使用を促進するための規制とインセンティブを導入することが推奨されています。

EFTE

・自動車産業がグリーン鋼材を優先使用すると、鉄鋼産業には大きなインパクト
・それでも最終自動車価格には大きな影響なし
・脱炭素社会の実現に大きく寄与
この手のレポートが増えてきた。

■<海外・投資>豪Fortescueがグリーンメタルプロジェクト(鉄鉱石採掘・輸送に非化石燃料、還元鉄生産も)

*(2024/8/16 Fortescue)フォーテスキューがグリーンメタルプロジェクトに着手
Fortescue starts works on Green Metal Project

Fortescue has marked a new milestone in its mission to build a green metal supply chain with the start of works at its Green Metal Project in the Pilbara region of Western Australia.
フォーテスキューのグリーンメタルプロジェクト:
プロジェクト概要: フォーテスキューは、西オーストラリア州ピルバラ地域のクリスマス・クリークにて、年間1,500トン以上のグリーンメタルを生産するプロジェクトを開始しました。2025年に初生産を予定しています。
技術と設備: グリーン水素と電気溶鉱炉を使用して高純度のグリーンメタルを生産します。水素は、フォーテスキューの水素施設で生産され、太陽光発電も利用されています。
環境への影響: このプロジェクトは、鉄鋼生産の温室効果ガス排出を大幅に削減し、持続可能なグリーン産業の構築を目指しています。
政府の支援: 西オーストラリア州政府もこのプロジェクトを支援しており、州のグリーン鉄供給チェーンの一環として期待されています。
このプロジェクトは、持続可能な未来に向けた重要な一歩となります。

Fortescue

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