Alive
田舎のコンビニにはジジイしか来ない。それもそんじょそこらのジジイではなく、異常に高圧的なジジイとか、マジで何言ってるのか全く聞き取れないジジイとか、逆に一言一句核爆発みたいな大音量で喋るジジイとか、謎にニヤつきながら300m/hくらいの低速で店内を徘徊するジジイとか、白昼に千鳥足で来店したかと思えばいきなりすっ転んで血まみれになるジジイとか、地中で生活してるのかと勘繰りたくなるようなハードコアな出で立ちのジジイとか、とにかく一筋縄ではいかないジジイばかりが百花繚乱の如くに店を訪れる。そんなジジイズ(複数形)の相手を来る日も来る日もさせられているとやはり心が荒んでくるのか、バックヤードで交わされる会話はそのほとんどが店の経営への文句や将来への金銭的不安や要領の悪いクルー(主に俺)及び無能なオーナーへの愚痴ないし悪口といった聞いているだけで気が滅入ってくるようなものばかりで、まあ世の中9割方うんこみたいなもんだと頭では分かっていてもこうも足を踏み出す先ことごとくうんこまみれだとイヤになっちゃうわね全く、などと考えながら俺はトイレ掃除のフリをして時間を潰したりしている。あといくら田舎で近くに繁みもあるからって店中でひっきりなしにコオロギが鳴きまくってるのは流石にどうかと思う。冷蔵庫の裏とかで繁殖してるんだろうか。本当にやめてほしい。
気付けば最後にこのnoteを更新してから一年近くが経っていたが、一応説明しておくとやむにやまれぬ事情があって筆を置いていたとか長期の入院生活を送っていたなんてことは勿論なくただ単にめんどくさかったので放置していただけである。書き付けておくべき出来事は思えばそれなりにあったし、そのための時間も腐るほどあったはずなのだが、やる気が完全に追いつかない。何事においてもそうだが、習慣というものはきちんと具体的な行動を起こすことで自らを律してやらないと驚くほど身につかないものだ。人間は自由に放置されていると何もやらない。本当に何もやらない。毎日欠かさずやると誓った筋トレも三日と続かず、気づけば俺のお腹のお肉は目を疑うほどたぷたぷとなり、弁明の余地なくマフィントップが出来上がっている。比較的痩せ型なのが唯一と言っていいアイデンティティだったのに。無様この上ない。ともあれ、放っておけば不定形のスライムのようにどんどん怠惰に蕩けていく我々ホモサピエンスは、種々の決まりごとに束縛され、型枠に嵌められることによって初めて社会的な動物としての真価を発揮できるのだ。精神論とは「明日から本気出す」の言い換えに過ぎない。昨今のなんたら禍を追い風にリモートワークの推進が叫ばれるようになって久しいが、そもそもリモート化が可能な職種に限りがあるという事実を差し引いても、毎日定刻に出勤して決まった場所で作業をするという行為にはやはりそれなりの必要性というか合理性があるということだ。大学にしても、俺なんかは教授のお情けに近いダダ甘採点でギリギリ卒業できた(もはや追い出されたと形容した方が正しいかもしれないが)からよかったものの、もし本格的にリモート体制に移行している現在の大学に取り残されていたとしたら、週に一度登校してのゼミや卒論指導といった肉体性を伴う習慣によって辛うじて維持されていた俺の就学体制は見るも無残に崩壊し、最低限の課題すらまともにこなせなくなり、もう一年また一年と原級留置の憂き目を喰らい完膚なきまでに社会からドロップアウトしていたことだろう。もう既に十分ドロップアウトしていると言われればそれは本当にその通りだと思うが、しかしつくづく、道というものはそこを通ることに確かな意味があるから舗装されるのであって、引かれたレールの上を歩くだけの生き方なんかしたくない、なんてのは往々にしてレールをなぞることすら満足に出来ない特殊車両(婉曲表現)の泣き言でしかない。映画の台詞を引くまでもなく、人と違う生き方はそれなり以上にしんどいのである。
衣食住の全面において今なお徹底的に依存し倒している分際でこういうことを言うのは本当にどうかと自分でも思うのだがしかし言わずにはいられないので言っておくと俺は両親のことがあまり好きではない。別に幼少期ひどい虐待を受けたみたいな経験があるわけではないがシンプルに馬が合わないのだ。母親はおそろしく仕事熱心で家事もしっかりこなす真面目な人であり社会人としては尊敬の念に堪えないが、如何せん性格面で大変に前時代的というか、まあ平たく言えば狭量で差別主義的なところがあり、理解の及ばないものや気に入らないものに対しては無闇な攻撃性を発揮したり、言い込められると癇癪を起こしたりするので正直あまりお近づきになりたくないなぁと思うことが多々ある。お近づきも何も普通に一親等だからどうしようもないのだが。翻って父親はというと、少なくとも性格的には母親よりだいぶマシである。酒に酔うとウザ絡みしてくるという欠点こそあれど、基本的には鷹揚としていながらも剽軽、かつ理知的な人物で、多分に趣味人的な気質も相まって俺としては付き合いやすい。ところがこの男は私生活において極めてちゃらんぽらんであり、何年か前にどこぞの女と不義密通を働いたのが発覚して(ご丁寧にハメ撮りまで残していた。俺はそれを見てしまった)家庭崩壊寸前のカタストロフを招いたという極め付きの前科があるため、どんなに含蓄のあることを言っていても「でもこのオヤジ余所の女とセックスしたんだよな」とか思って白けちゃうので全く敬意を持てないし信頼もできない。「尊敬できるが好きにはなれない」と「好きにはなれるが尊敬できない」が絶妙なバランスで相殺し合った結果として、俺の両親に対するリスペクトの度合いは限りなくゼロに近い奇跡的な均衡状態を維持しながら現在に至っている。なんかもう、どっちが悪いとか悪くないとかじゃなくて、全部ひっくるめて家庭という「場」そのものが嫌いになってしまったとしか言いようがない。大学にうまく馴染めなくて情緒がおかしくなって這う這うの体で帰省したところに両親の絶望的な不仲を見せつけられてみるがいい。誰だって嫌になる。もう久しく家族の食卓というものに安らぎを感じていない。なんなんだこの家は。ふざけるな。爆発しろ。別にくだらない言い訳をこねるつもりはないしこの現状の責任を誰かに擦り付けるつもりもないが、重ね重ね、人は生まれを選べないという事実を生む側の人間はもっとシリアスに考えてほしいと思う今日この頃なのであった。ともあれ、そんな正反対の気質を持った二人から情操教育を受けて育った結果、そのどちらにも似ない俺という奇妙なゴミが爆誕してしまったことについては、まったく生命の神秘ここにありというか、なんてことをしてくれたんだと問い質したい気持ちでいっぱいである。何しろ俺はこの世におぎゃあと生まれてより25年、ありとあらゆる社会的関門を最低限度の外面の良さだけで乗り切ってきた筋金入りのスーパーウルトラハイパーミラクル上っ面野郎であるからして、内心で全方位無差別的に下劣な悪罵を吐き散らかしつつ表面上ではいかにも純朴で実直そうな好青年を白々しくも装ってみせる厚顔無恥な演技力にかけては五大陸でも指折りの傑物だという自負があるが、それ以外の能力に関しては本当にこの25年が一体何だったのかと疑問したくなるくらいに""無""そのものである。25年って。四半世紀だぞ。そんな長い間何もせずに生きる方が逆に難しいだろ。一年くらい前に日本語検定とかいうよくわからん資格を取ったがそれで満足してヨッシャ~俺天才やんけ~と調子に乗って後はひたすらカップ麺を食べたりちんちんを触ったりしていたらいつの間にやら何も無いまま一年が経過していた。こんな人間を社会に出してはいけないと自分自身強く思う。俺はあとどれくらい生きるんだろうか。俺の人生はいったい何処に着地するんだろうか。まあ最終的な到達点が地獄の底であることはもう確定しているわけだが、構うもんか、どうせ長生きするつもりもなければ誰かに何かを残す予定もないのだから目一杯好き勝手にヘラヘラ笑って生き急いでやるわと開き直ってからは、まあ確かに色んなことが若干好転していると言えなくもない気がしている。少なくとも気持ちは楽になった。この調子でこれからも頑張っていきたい。頑張ります。やっていきます。マシな人間になります。
あとこの一年間で分かったこととして世の中のいかに多くの人間がコンビニ店員という生き物を無条件で無制限に見下して構わないものだと見做しているかというのがある。どうしてそんなに愛想が悪いのか。どうして当たり前のようにタメ口を使ってくるのか。こっちが同じ態度で返したら絶対怒るくせに。会計の間終始一言も喋らず目すら合わせないなんてやつもいるが貴様等のごとき卑賤と交わす言葉など持たぬとでも言う気か。誰にでも出来る簡単な仕事だと思ってるのかもしれないけど実際けっこう忙しいんだぞ。何も必要以上に恭しく遜れと言っているのではなく赤の他人に対して最低限とるべき礼儀というものを弁えてほしいと言っているのだ。逆に訊くけどおたく街で知らない人に道を尋ねる時タメ口使うんですか?どいつもこいつも奉仕されて当然とでも言いたげに尊大な態度を取るが客と店員は本来対等な立場であるはずだ。客は金を出し店員はそれに応じたサービスを提供する。店員は客がいなければ給料を貰えないし客は店員がいなければ商品を手に入れられない。そこに上下も左右もないとラーメンハゲも言っている。でもセルフレジがあるじゃないかという反論が予想されるがだったら素直にセルフレジを使えばいいだけの話であって「使えなかった」にしろ「使わなかった」にしろ結果として有人レジを訪れたのならもうその時点で彼我の間にはそういう関係性が確固として成立している訳なのだからその関係を円滑に全うする為に最低限の誠意を言葉遣いや態度で表明するのが道理であり道義というものではないのか。それだけに時々すごく丁寧に接してくれてお礼まで言ってくれるお客さんに出会うと本当に嬉しくなる。この場を借りて厚く厚く御御礼申し上げます。ありがトンクス。とかなんとか言ってコンビニ店員にマウントを取る客の人間性は間違いなく醜悪だがそんな人間に対するあからさまな蔑意をチラシの裏に書き散らかしてひとり悦に入る人間性も紛れもなく醜悪だ。低劣だ。俺はどうしてこんな人間になってしまったのか。鏡を見る。ただでさえ細工の行き届いていない顔面に厚い隈が浮いている。醜い。眠いのに一時間おきに目が覚める。死を信じている。俺の人生大丈夫か。最近どうもみんなが俺を笑ってる気がする。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫だよねえ 笑ってろ見てろよ 気のせいさ眠れよ 大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫だよねえ 笑ってろ見てろよ 気のせいさ眠れよ 大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫だ。俺は大丈夫だ。人生は一度きりなのだから全ての選択は必然として肯定される。死後の世界などというふざけたものが実在しないことをずっと祈っている。おばけが怖いからではない。いやまあ怖いのは怖いが理由はそれだけではない。端的に、死んだ後も人生が続くなんて嫌すぎるからである。もっと言えば、「いま、ここ」に存在する俺だけしか俺たり得ないという事実を侵害されるのが嫌なのだ。その時代その場所に生き、同じくその時その場にしか存在しない他者と関わり合って経験を重ね、そうして蓄積した記憶こそが人間を当人たらしめ、死というピリオドによってそれは完成する。ゆえに、死んで終わった俺がどこか別の時空にネトゲの雑魚モンスターよろしくリポップしたところで、それは「いま、ここ」との繋がりを断たれて今までの蓄積の全てをまっさらに還された、俺によく似たキモい何かでしかない。取り返しがつくということは一見魅力的だが、それは生の一回性、そこに込められる人間の尊厳に対する否定と冒涜に他ならないと俺は思う。だから輪廻転生もファックだ。永遠なんてクソ喰らえだ。俺は俺の全てをリサイクル出来ないくらいに燃やし尽くして使い果たしてやりたい。生まれ変われば救われる程度の薄っぺらな人生なんか送りたくはない。どれほど醜い傷痕であろうとも、俺が俺であることの代えがたい証なのだ。この感傷をそんな安売りしてたまるものか。月並みだが、死はある種の救いだ。情けも容赦もなく、死ねば何もかもが絶対的に終わる。だからこそ人間は、後のことなど考えずただ一度の生に全力を出し切ることができるのだ。悔いが残ろうが残るまいが、その事実をこそ俺は尊びたい。だいたい来世って何なんですか?俺の今生きているこの人生が本番のための予行演習であり前座であり閻魔様にお目こぼしをいただくための点数稼ぎに過ぎないとでも言うのか。人の人生をいったい何だと思っているのだ。ふざけるな。俺を、俺たちを、誰だと思っていやがる!!!!天元突破!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!グレンラガン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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