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狂ってる

助けてほしい。 気付けば上京して一年以上経っていた。月並みな感想だが本当にあっという間だった。労働を始めてからというものビビり散らかすぐらい時間の感覚が速くなった。よくある、30代になるとあっという間に身体にガタが来て~とか、えっ?あの作品がもう○年前!?とか、そういう歳月の流れとそれに付随するあれやこれやを憂いたり懐かしんだりする感覚、俺はああいうのを結構好ましく思っている。なぜかと言えば昔からこんなにもクソおもんない人生いつまで続くねんとうんざりしていたのだが完全に発狂

    • 落空

      もちろん全員嫌いだし今すぐ死にたいのだが、しかし事はそう簡単な話ではないのである。たとえば道行く人を無作為につかまえてアナタ死ぬのが怖いですかと問うたならば、常識的というか一般倫理的に考えて大抵の人間はハイ怖いですと答えるだろう。人間は死を恐れ忌む。これはもう生き物の本能なので当然と言えば当然なのだが、そういった本能的な部分を取り払い理性というか理屈で以て考えてみた時に――断っておくと俺はあの世とかおばけとか輪廻転生などといった所謂死後概念の類を一切合切全くこれっぽっちも信じ

      • 儀式東京

        というわけで上京をした。俺は3以上の数を数えられない低能なので昔からおよそ手続きや契約と呼ばれるものをうんことゴキブリの次に苦手としており、引っ越しなどという煩雑極まる各種手続きの塊みたいな一大イベントなんかどれだけ多くの人の手を借りようが行政からの丁寧な説明や手厚いサポートを受けようが絶対成し遂げられないと思っていたのだが、会社の上司や不動産屋や業者の言うことを右から左へ聞き流しつつ適当に記名したり捺印したりしているうちに何ともつつがなく一通りの事務処理が完了し、拍子抜けす

        • フェイクワールドワンダーランド

          引っ越した。 かなりワクワクしている。

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          ロンググッドバイ

          いつかどこかで聞いた話だが世の中には接客業ができないタイプのコミュ障とできるタイプのコミュ障がいて、前者はシンプルにあがり症だったり喋るのが下手だったりとかそういうアレだが後者はガチで人類そのものに興味が無く、ほとんどの他人を書き割りも同然に見做しているためやろうと思えばあっさり割り切って健常なコミュニケーション能力を発揮できてしまうものらしく、長らく自分は完全に前者だと思っていたがどちらかと言えば後者に近いようだということに気づけたのが不毛極まるアルバイター生活において幾許

          ロンググッドバイ

          (He is a guitar prayer)

          (この文章は、CRYAMY主宰レーベル「NINE POINT EIGHT」が募集していた全楽曲レビューに自分が投稿したものです。たぶん後で消します人から褒めてもらって嬉しかったので残します) 誤解を恐れず言わせてもらえば、CRYAMYほど誠実なバンドを自分は他に知らない。 彼らの楽曲やライブを評価する際、かつて「荒々しさ」や「初期衝動」といった形容が用いられることがあったが、これは全く――とまではいかないが、おおむね不適切だと言わざるを得ない。実際のところ、カワノはものす

          (He is a guitar prayer)

          Living Dying Message

          驚くべきことに俺は26歳にもなってクレジットカードを持っていなかったのだが、このたび諸般の事情からついにカードを作成することになった。生来の壊滅的な金銭管理能力の欠如ゆえ今まで頑なに固辞してきたが、いざ持ってみるとこれがすこぶる便利だから困る。日常の細々した買い物は現金で済ませるとして、アマゾンやら何やらで比較的デカい買い物をする時、今までのような手数料のかからない平日に銀行から金を下ろしてコンビニの端末に番号を打ち込んで出てきた払込用紙を持ってレジに並ぶとかスマホの画面のバ

          Living Dying Message

          stars we chase

          渋谷は明治通りの宮下第一歩道橋の上に立って駅の方向に視線を向けると、駅のすぐ隣に建っているクソデカいビルがちょうど視界の真ん中を埋めるようにして目に入る。俺はこのビルが好きだ。本当に尋常じゃなくバカクソにデカい、渋谷スクランブルスクエアというイカした名前のこのビルは、快晴の日には全面の窓ガラスが陽光を反射して鏡のように滑らかに輝き、さながら原初の荒れ野に鎮座ましますモノリスの如く、コンクリートジャングルの只中にあってさえ一種異質な存在感を放っている。天に突き刺さるようにそびえ

          stars we chase

          カルペディエム

          チンケな四列掛け夜行バスの窓側席に座り、この文章を書いている。さっきから不快でしょうがない。何故ならお腹とお尻がクソほど痛いからである。前日の晩あらかじめ睡眠時間を削っておけばバスの車中でスムーズに寝付けるのではないかという目論見は見事に外れ、昼頃から続く寝不足ゆえの腹痛に非人道的なほど座り心地の悪いバスの座席からの連続パンチが加わって俺はもう全身めちゃくちゃである。めちゃくちゃだよもう。おまけに暑いし息苦しい。あと今これスマホで書いてるんだけどフリック入力が面倒くさいし隣の

          カルペディエム

          くらし

          日毎に生活が乾いていく。ほんの一年と少し前までは「一日12時間睡眠に慣れ切った酒クズうんこニートにコンビニバイトなんかできっこないよ~!」と不安に恐れ戦いていたのが嘘のように現在の俺は売り場・レジ・調理場・バックヤードを結ぶ動線を滑らかに乗りこなし、その俊敏にして華麗な働きぶりを目撃した客のジジババ共からは「"蒼白の疾風-ペイルゲイル-"」(あまりの速さにローソンの制服特有の青と白のストライプ模様が残像となって見えることが由来)の呼び名で畏怖と賛美を一身に集めている。「本

          くらし

          マリア

          失恋をしたことがない。なぜなら恋をしたことがないからである。 であるからして当然、俺には失恋の痛みというものが分からない。人を好きになったこと自体は何度もあるが、手を繋いだことも唇を重ねたことも躰を抱いたことも一度たりとも経験がない。かつて好きだった(そして恐らくは今もまだ好きな)人がふとした拍子に夢に出てきてゲンナリすることはあれ、そこに恋しさや悲しさを覚えることももうない。臆病と怠惰にかまけて他人との関わりを極力避けてきた俺にとって、恋とはその始まりと同時に、あるいは始

          マリア

          7年前、図書室に置かれていたオンボロPCの貸出管理ソフトには日誌代わりに小さなテキストボックスが備わっていて、そこにその日あったことや留意すべき事柄を書き留めておくのが図書委員の業務の一つだった。ほんの小さな思いつきで、俺と彼女はそこに小説のようなものを書いたことがある。二人交互に書き繋いでいくリレー形式で、すぐ飽きてしまって結局一週間ほどしか続かなかったそれは今思えば実にチンケなお遊びだったが、もちろん俺はその頃から彼女のことが好きだったから、なんだか二人だけの秘密を共有し

          Alive

          田舎のコンビニにはジジイしか来ない。それもそんじょそこらのジジイではなく、異常に高圧的なジジイとか、マジで何言ってるのか全く聞き取れないジジイとか、逆に一言一句核爆発みたいな大音量で喋るジジイとか、謎にニヤつきながら300m/hくらいの低速で店内を徘徊するジジイとか、白昼に千鳥足で来店したかと思えばいきなりすっ転んで血まみれになるジジイとか、地中で生活してるのかと勘繰りたくなるようなハードコアな出で立ちのジジイとか、とにかく一筋縄ではいかないジジイばかりが百花繚乱の如くに店を

          Pray

          誰も彼もを笑って許してやれそうな気分の時と一人残らず呪い殺してやりたい気分の時があって、前者は大抵酔っぱらっている時で後者は大抵二日酔いの時で、比率としては体感で2:8くらいだったりする。もうなんだか最近は、好きな人以外は全員嫌い、くらいの勢いで心が荒んできていて、それでも人の不幸を喜んだり世間に毒を吐いて悦に入るような卑しい人間にはなりたくないというなけなしの矜持らしきものだけが俺を人の形に留めている。なんか辛そうだったり、悲しそうだったり、しんどそうだったりうまくいかなか

          金土日

          諸々を経て、生活にいくつかの変化が生じた。いくつかというか、具体的には二つ。まずは労働をするようになったこと。理由はシンプルに金がなさすぎるからである。全くを以て癪ではあるが、人間は金を稼がなければ生きていけないので、涙を呑んで資本主義社会に下ることにした。ゴミカスニートからゴミカスアルバイターに晴れてジョブチェンジである。性狷介にして自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしないことで知られるこの俺が、己の味気なく情けない半生を克明に記した履歴書を携えて近所のコンビニ

          金土日

          すごい速さ

          パイ投げというやつが昔から怖くてしょうがない。怖すぎる。マジで何なんだあれは。パイを投げるなよ。投げるなよパイを。パイは美味しく食べるためのものだろうが。パイを、投げるな。全く意味がわからない。あれを最初に考案した人間は疑いの余地なくサイコパスだ。まずもって何らかの何かを人間の顔面に力いっぱい投げ付けるという行為自体かなりモラルを欠いていて十二分にヤバいのに、そこでよりにもよってパイを選択するというセンスが完全に常軌を逸している。シェービングクリームで代用するのは比較的洗いや

          すごい速さ