フグで生ハムを作りたかったぞ。
安いフグで強気に加工。
ここ最近、テレビでトラフグ特集をよく見るようになった。
だいたいが「温泉水でトラフグ養殖」か「天然高級トラフグを釣るor獲る」の二つだった。
致死性の毒をもつフグを提供する上での労苦のかかり様と大きなトラフグの希少性も相まって高価になるのだがそれを町おこしに活用させようとしたり少しでも安価になるようにと養殖が進み、グルメ番組等では庶民の憧れの的として芸能人やアナウンサーがヨイショしている。
しかし「フグ」という括りでいうとトラフグ以外のフグ類の大半は非常に安価であるか商品価値が無い。
猛毒があり法律があるため当然っちゃ当然なのだが。
ただ国の基準を乗り越えた食用のフグというのはちょっとした鮮魚センターにいけば3〜4匹入りのパックを500円未満で誰でも買える。
「そんなん釣りで捨てるほど釣れんじゃん」みたいに仰る方もいるだろうが確かにクサフグだのコモンフグだのヒガンフグは無数に釣れるが…
当たり前だが「自分で釣ったフグを調理して食べる」なんてのは素人は絶対にやってはいけない行為だ。
ただひょっとすると機会があって要望があってインターネットに公開することに何の問題も無いようならば記事を有料で出すかもしれない…。(予防線)
話が逸れたが今回はそんな格安フグをピックアップしたいと思う。
庶民のフグ 「ゴマフグ」を生ハムへと加工しよう。
…というわけで私の手元にはとある鮮魚センターで買ってきた一匹約60〜100円の「ゴマフグ」がある。
ゴマフグというフグは上記のトラフグ属に属する35cmほどの小型のフグで白子と身を利用でき(弱毒という記述も有り)まとまって水揚げされることからむき身で売られている。また石川県などでは猛毒の卵巣を糠漬けにして名物となっていることはあまりに有名である。
ただこの手の小型のフグ類は水分が多いのに身が固い。
普段なら天ぷらや唐揚げで食べるのだが折角なら今回は面白く食べたいということで「フグの生ハム」を作るべく塩をして脱水シートで来るんで三日ほど冷蔵庫で寝かしていた。
表面がペトペトして程よく水分が抜けて身にハリがなくなった頃に取り出し香草類や薬味を混ぜた謹製の「ソミュール液」に一週間程浸しておく。
それを取り出したりて半日〜一日程塩抜きをする。
漬け終わったものを天日に晒し…たいところなのだが我が愛すべきクソ天気新潟。
それを許さない。…のでまた脱水シートで来るんで一日〜二日脱水する。
(天気の悪い地域ではそこそこ良い値の脱水シートがもの凄い勢いで溶けていく)
乾いたゴマフグを桜のチップを使い3時間低温で冷燻にしていく。
完成!だが出来映えは完全に「ハム」
ゴマフグハム実食。
燻製の時に温度が高かったようで生ハムの度を超えてハムになってしまった…。
燻製道も容易ではないな。
…気を取り直して…。
生の時はぷよぷよと水っぽく中央に芯があるような手触りだったものが塩漬け→味付け→塩抜き→燻製の行程を経させる事によってキュッと締まりベーコンのような質感になった。
肉のハムと明確に違うのは筋繊維が毛羽立つように現れることと脂が極端に少ないことだろう。
またキンキンに研いだ包丁でないと薄造りができず手元にあった牛刀で切ったら分厚く断面がザクザクになってしまった。
どれどれと食べてみる。
まず口にいれて最初に来るのは仄かに甘い薫香が来た。
表面は室温にならされておりギュッギュッとした噛み応えなのだが中はしっとりとしていて明らかに冷たい。
別に火が通ってないとかではないが食感による感じ方の違い?
などと考えていると強い塩味とソミュール液の風味が来てそこを抜けるとフグ…というか白身の淡泊なうま味がやってきてフワッと抜けていく。
最後に塩のピリピリとした刺激が残る。
大量に摂取するのは体に悪そうだが黒胡椒を振ってオリーブオイルを和えて適当な辛口のワインと合わせるとちょっとオシャレなバーに来た気分になる。
ただ一皿分食べるとなるとつらくなってくるので残りをオリーブオイルと共にジップロックに入れて保存しておこう。
まとめ。
ゴマフグが小さかったのか思ったより塩気と熱が強く入ってしまった。次回作るとしたら塩漬けを短くするか塩抜きを長くとる、火元は別にして煙だけをフグに移すような機構を設けるなどの改善点が見えてきた。
個人的にだが暗中模索で料理をする時に高い食材を使って失敗したときの一撃のダメージは大きいと感じておりこれをトラフグでやろうものなら一週間は気落ちして引きずるのだが
今回のケースのような一匹100円もしないような安価なゴマフグだと失敗を恐れず強気に加工できる。
それに失敗してもすぐに頭を切り替えて対象物の他の利用法を探すくらい視野を広く保てる。(と思い込んでる)
この少ししょっぱくなりすぎたフグのハムも次の就職先が決まっておりその話は次回に持って行こうと思う。