あけび書房刊「令和のローカルメディア」に対する反論
足立区民放送(旧足立エフエム開局準備会)
代表 宮崎誠弥
あけび書房(岡林信一代表取締役)が2021年7月20日付で刊行した「令和のローカルメディア(松本恭幸、佐藤和文、佐藤博昭共著)」(以下本書、本著)の内容について、当会、および当会代表個人として認識の齟齬、および事実と違う内容の記載があるため、これについて反論する。
1.記述内容と反論
以下、具体的に記述されている内容を引用し、それに対する当会、ならびに当会代表の反論や意見を記述する。
・183ページ26行目
《そして、翌2013年(平成25年)5月に足立エフエム開局準備会(足立区民放送)の宮崎誠弥代表から協力を求められ、自社の入居するビルのオフィスの一部を貸し出すことになり、それまで台東区でネット・ラジオによる番組配信をしていた足立区民放送が、機材を持ち込んで移ってきた。》
株式会社CAN(以下CAN)の植村昭雄代表取締役社長(以下植村氏)とは2013年4月に、当時大学生であったA氏の仲介によりお会いした。このA氏は当時北千住地区で「街コン」を企画していた人物であり、この街コン事業にCANがコミットしていた事実があったようである。この街コン事業を足立区民放送で取材した経緯があり、A氏からは「植村氏が宮﨑と会いたいと言っているので、訪問してみてはどうか」との提案を受けたことによる。
同社内でのネットラジオ開局にいては当会の提案ではなく、植村氏から「ここ(前出の自社が入居するビルのオフィスの一部)の使用目的を考えたい。いまはたまに展示会などをしているが狭いのでセミナーなどにも使えず、活用方法を考えている。なにか案があれば協力してほしい」との話があり、当会宮﨑から「ウチであればネットラジオ局の運営等であればできる」と回答した。再度植村氏から「ここで出来るか」と確認があったため、「機材が揃えばできる」と回答。その後、植村氏の提案で現在Cwaveが運営されている場所に当会が機材をもちこみ、技術支援を行う形でCANが運営するネットラジオ局「CROSS WAVE☆SENJU」がスタートした。
また「台東区でネット・ラジオによる・・・」という記述は、本著のタイトルにもある「ローカルメディア」という観点からすれば、当会がもともと台東区で活動していたところ、ある時突然「足立区民放送」を名乗って足立区に乗り込んできたとの誤解を受けると思料する。
当会の活動拠点は、当会発足の2010年以降、現在に至るまで足立区であり足立区を離れたことはない。
・183ページ29行目
《ただ、足立区民放送が独自に番組配信を行うのは週1回で、それ以外は場所も機材も空くため、それを活用して将来的にコミュニティFM局での放送を視野に「SENJU X ROAD」に関わっているメンバーで開局したのが、「CROSS WAVE☆SENJU」だった。》
当会が担当する番組が毎週土曜日23時からの週1回というのは事実であるが、CROSS WAVE☆SENJUに関しては当会と独立した組織ではなく、そもそもCROSS WAVE☆SENJUのステーションネームを考案(当時使用していたロゴマークを含む)したのは当会代表の宮﨑である。また、当会が直接担当する番組以外にも、当会から技術スタッフを派遣して各番組の技術オペレーションにあたっていた。このため、本書の記述のように「全く独立した組織」として表現されることには疑義がある。なお、技術オペレータについては、放送経験がないスタッフには難しく、「宮崎さんの方で各番組担当者と直接対応してほしい。CANとしてはそこにはコミットしない」との依頼があったので、そのようにした。完全に独立しているのであればこの部分はCANがそもそも自身で対応してなければ当会が人員を割いてまで対応する道理がない。
・184ページ4行目
《ところが、第三セクターとして開局を目指していたコミュニティFM局は足立区の賛同が得られずに開局の見通しが立たなくなり、足立区民放送はCANのオフィスを撤収することになる。》
当会が足立区にコミュニティ放送を開局させようと活動していたことは事実であるが、それは「純民間資本」によるもので、当会としては「第三セクターでの開局」を目指したことは一度もない。むしろ「足立区からは出資を受けたくない」として計画を進めていた。結果として足立区の協力が取り付けられなかったのは事実ではあるが、それは経営への参画(出資)拒否ではなく、足立区役所の屋上利用や開局後の支援などについてである。当然ではあるが、現在はどの自治体も財政が厳しく、地元行政の支援を当てにした事業等は受け入れられにくい土壌がある。もっとも開局後の支援については、当会発案ではなく、地元企業の経営者有志が当会の活動に協力する際に、有志独断で足立区に話をしたものであり、当会としては認知しておらず、結果として(放送エリアが足立区全域に届かない事などの問題があり)足立区が協力できない件を有志につたえ、有志がFMへの出資を断念したのが開局断念の直接的な原因である。
なお、CAN側がどう考えていたのかは不明ではあるが、当会としてはCROSS WAVE☆SENJUが「コミュニティ放送開局のための活動」という認識も前提もなく、対応するスタッフにも「これは将来コミュニティ放送を見据えた活動ではない」ことは散々つたえており、一部のスタッフが放送中にそのような発言をした場合に、不本意ながら訂正していただいている経緯もある。ただし訂正にはCAN側が難色を示したという報告が現場から上がってきていた事実もあるため、「彼ら」はコミュニティ放送にしたかったのかもれないが、それは当会の意思ではない。
オフィス撤収については、CAN側から持ち出されたものであり当会は最後まで残留したい旨を訴えていたものの、結局植村氏からの返信がないままCAN側が設定した退去期限を迎えたものである。ただし、当会が撤退した後も、機材調達までのおよそ半年間、当会の機材をそのまま利用していた事実があり(余談ではあるが、その間多くの機器が破損している)、当会としてはこの顛末は「コミュニティ放送開局断念を逆手に取った事業の乗っ取りである」と認識している。もともとCANには放送局運営(地上波、ネットを問わず)に関するノウハウが(少なくとも当時は)まったくなく、我々が直接参画するのをやめた後も、現場スタッフから頻繁に質問や問い合わせがあり「これ以上質問や問い合わせがあるなら、CANとして有償のサポート契約を結んでいただかないと困る」と申し出た事実がある。
2.名称使用と裏取り取材がない件
次に、本書に当会ならびに当会代表の個人名が事前の通知や承諾なく掲載されたことに関して意見を述べる。
当会もメディアの一端を担っている自負があり、直接取材した内容以外の事象については、かならず一次ソースに当たるのが当然であり、マスメディアならびにジャーナリズムの基本と考えているし、実際取材等ではそれを実践している。
ところが、本著書には「宮崎誠弥」「足立区民放送」「足立エフエム開局準備会」という個人や団体を特定可能な情報が掲載されており、またその事実を当会は本著書をみるまで知ることができなかった。
前項の通りの当会の認識や事実と異なる内容を「一方的に」「名指しで」書かれていることは、当会が現在のその名称で活動していることを鑑みるに「名誉毀損・信用毀損・営業妨害・侮辱」のいずれにも該当しうると判断している。
もちろん、取材対象の植村氏が当会や当会代表の指名を取材中に出すことは、それが(当会がCROSS WAVE☆SENJUに関わっていた)事実であれば全く問題がない。ここで責められるべきは、著者である。
本書奥付によれば本項目は松本恭幸氏によるもので、彼は現在武蔵大学社会学部メディア社会学科教授を努めているということである。若い学生たちにメディアを教える教授ともあろう立場の氏が、おそらく取材の原点であろう「一次ソースに当たる」という手順を省略してしまったことは非常に残念であり、厳重に抗議する。なお、当会としてはいつでも松本氏からの釈明をお待ちするものとする。ただしその内容はすべて公開とさせていただく。またもし裏取りを行ったというのであるならば、どこに取材をしたのかを開示してほしい。
3.雑感
以上の点を踏まえ、本書には著者が完全に取材したものではない一方的な意見や想像が記述されている可能性がある。本書の購入を咎めることはないが、たとえば当会については上記に上げた部分以外でも、文章構成で当会を咎めているような構成となっているため、すくなくとも「内容は一方的でバランス感覚にかけている」点に留意すべきである。その点については十分考慮した上で読むべき書著であると言わざるを得ない。
4.補足
なお本文書はいかなる記述においても、「表現の自由」そのものを否定するのもではなく、同様に本書を否定する主旨もない。また、取材対象であった株式会社CAN、ならびに同社代表取締役社長の植村昭雄氏が「嘘をついている」と指摘するものではなく、認識の違いを責めるものでもない。あくまで本書への記載内容が当会ならびに当会代表の認識や見解、把握している事実と異なるということを主張するものに過ぎない。したがって本書の出版の差し止めや内容の変更・削除を求めるものではなく、また著者や出版社への謝罪を求めるものではない。ただし、本書による当会ならびに当会代表や当会関係者に実害が発生した場合は、この限りではないことを申し添える。
以上
文責
足立区民放送(旧足立エフエム開局準備会)
代表 宮﨑誠弥
連絡先
050-5891-8628
info@stcat.com
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