コミュニティ放送にかわる「インターネットラジオ局」
コミュニティ放送が制度化されてすでに何十年もの月日が流れ、気がつけばすでに「周波数の割当を受けるのが難しい」状態となっており、多くの地域で新規開局が困難を極めています。そこで昨今、「インターネットラジオ局」への注目が再度高まってきています。
コミュニティ放送開局の問題点
現状コミュニティ放送を開局するにあたって多くの問題があります。ざっと上げるだけでも以下のような点が……
・開局・運営費用の問題
コミュニティ放送を開局するためには、すくなくとも3~4000万円の費用が必要と言われています。もちろんこれ以下の費用で開局した例も少なくはないものの、多くの場合開局後の運営資金の枯渇に悩まされることになります。
さらに開局後のランニングコストもばかにならない(最も多いのは人件費)ため、不景気な昨今、地元企業からの広告収入だけでは立ち行かなくなることは明白です。
・周波数割当の問題
運良く開局にかかる費用を捻出できたとしても、今度は周波数割当の問題が立ちはだかります。これはその地域で放送局用に利用できる周波数があるかどうか、という問題で、「その場でラジオのチューニングダイヤルを回して、音が聞けなければOK」という問題ではなく、周辺にある放送局から到達する電波の他、こちらから放射する電波が他局に影響を与える可能性を考慮しなければならず、殆どの場合、最大出力の20Wが認められない状況になってきています。
・そもそもラジオがない
これは最も危惧するべき問題点なのですが、仮にコミュニティ放送が開局しても、現在殆どの家庭にはラジオがありません。これを読んでいる方も、最近「家でラジオを聞いた」のはどれくらい前か思い出してみるとわかりやすいです。もちろん「Radiko」で聞いたという事はあるかもしれませんが、あれはインターネットサービスであるラジオ放送ではありませんので、除外です。こう考えると、現代の人たちは殆どラジオに触れる機会はないと言っても過言ではないでしょう。
インターネットラジオとは
インターネットラジオとは、インターネットを利用した音声配信サービスの総称で、その中には放送局が放送している音声の再配信も含まれます。Radikoやサイマル、JCBAなどがそれぞれ民放ラジオや各コミュニティ放送の再配信を実施していますが、それはすでに「電波を受信してラジオを聞く人がほとんどいない」ことの左証でもあり、今後ますますインターネット配信を利用したラジオサービスは増えていくといわれています。インターネットラジオの利点としては次のようなものが上げられます。
・受信環境に左右されない
一般的なラジオ放送のように、電波の受信環境が悪い場合受信できないといった事がほぼなくなり、インターネットにさえ接続できている環境であれば、どんな場所でも聴取が可能です。
・放送法や電波法の適用を受けない
インターネットラジオは放送法上の放送局ではないので、様々な制約を受けることがありません。また送信所を持たないため電波法の制約を受けることもなく、無線局免許の交付が必要ありません。
・技術要件が低い
開局のための技術的な要件が低いのも特徴で、やろうと思えばスマートフォン1台でも開局が可能です。放送局のスタジオのような機器を揃えて運用する場合でも、最低限の機器で開局ができるため、費用面でもコミュニティ放送開局の100分の1程度で開局・運営が可能となります。
配信サーバーとエンコーダー
インターネットラジオ局は、送信所の代わりに配信サーバーが必要となります。もし使っていないWindowsPCがあればそれを充てることもできますし、クラウドサービスでサーバーを公開することもできます(セキュリティ的にはクラウドを利用するべきです)。また、音声をインターネットラジオで送信することができる信号に変換する「エンコーダー」というソフトウェアも必要ですが、これらのソフトはほとんど「無料」で」公開されています。
配信サーバーは自分で設置するのが不安だったり困難であるばあいは、既存のサービスを利用する手段もあります。YouTubeやニコニコ生放送を利用する場合は映像を追加する必要がありますが、たとえば「FC2ねとらじ」等無料で利用できる音声配信サーバーを活用する方法もあります。
ただし、接続数が多くなってきてしまう場合、同じサービスを利用している他の方に迷惑がかかってしまうため、やはり自社で配信サーバーを立ち上げる必要があるでしょう。
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Office Stray Catでは、配信サーバー、エンコーダー、最小限の機器をそろえた「おてがる「ネットラジオ局」開局セット」をご提供しています。月額12,000円ですでに設定済の機器がお手元に届き、届いたその日からネットラジオの配信が可能となります。YouTubeなどのライブ配信のように放送中だけ接続することも、24時間何らかの音声を放送し続ける(もちろん生放送と録音音声との乗り換えも)こともできます(要オプション)。
サービスの詳細は下記URLからご確認下さい。
なお、私が運営するミニFM/ネットラジオ局「足立区民放送」のシステムは下記記事でご確認いただけます。
https://note.com/stcat/n/nc234cac8bbd9
さいごに
ちょっと「上の世代」のひとには理解し難いかもしれませんが、じつはすでに「テレビ」「ラジオ」「ネット配信」の垣根は多くの人の中では取り払われていて、そこに大きな差は存在していません。
また、あくまでラジオ開局にこだわる人たちは「音楽がかけられない」ということを問題として挙げることが多いのですが、そもそも自分が好きな音楽がかかってくるのをラジオの前で待つという時代はとうの昔に終わっていて、現在はSpotifyなどのサービスでいつでも自由に聞くことができます。
コミュニティ放送の開局に苦慮している方、これからコミュニティ放送を開局しようとしている方には、ぜひインターネットラジオの開局も検討していただきたいです。