選挙におけるPA(拡声)の注意点とかとか
選挙に欠かせないのがスピーカーとマイク。可能な限り大きな音で支持を訴えたいですよね。そんなときに注意しなければならない点をまとめました。
1.マイクの握り方
ハンドマイクの多くは「単一指向性」と呼ばれていて、一方向からの音しか拾わないように設計されています。が、カラオケなどでよく見かける写真右のような元方をすると、指向性が奪われます。実はこの握っている部分も「マイク」としての機能を持っていて、とどのつまり単一指向性マイクも全方向から音を拾っているのですが、後ろからくる音を打ち消すような設計になっています。このため、右のような握り方をすると「打ち消すための音」を拾えなくなり、結果として指向性が失われます。
指向性が広い(または無指向)の場合、周囲の音をまんべんなく拾ってしまうので、スピーカーの程近くで話すことが多い街宣などでは「ハウリング」の原因になります。かならず左のように、マイクの下のほうを握りましょう。
2.がなりつけない
スピーカーから出てくる音が小さいと感じる場合、マイクに向かってきわめて大きな声で、いわば怒鳴りつけてしまうような場面を見かけます。とくに選挙戦終盤で多く見かけます。しかし、音が小さい原因はいくつかあって、その最たるものが「慣れ」です。
大きな音に慣れてしまうと、感覚的にそれが普通になってしまうので、「大きな音で呼びかけなければ」という意識下では「音が小さい」と勘違いしてしまうことがあります。そこで、アンプのボリュームつまみを最大限まで上げて、さらにマイクにがなりつけるという愚行に走ってしまうわけです。
アンプには定格出力というものがあり、どう頑張っても「これ以上の出力は出ませんよ」という数値が決まっています。このため、これを超えると音声は「歪み(ひずみ)」となってスピーカーから聞こえてきます。いわゆる「音が割れている」状態です。つまり、マイクにいくら大きな声でどなりつけても、アンプの低格以上の出力は見込めないので、「それ以上大きな音」は「物理的に出ないし、出たとしても歪みまくった深いな音」になるわけです。
このため、大きな音が必要な場合、定格の大きなアンプ、効率のいいスピーカーを用意するべきで、マイクに向かって怒鳴りつけるのは、愚策も愚策です。
3.スピーカーを選ぶ
またスピーカーの能率も重要で、いくらアンプの定格出力が大きくても、それを音声(=空気振動)に変える際に効率が悪いと、音量は稼げません。この電気信号を空気の振動に変換する性能を「スピーカーの能率」といい、一般的に「1Wの信号をスピーカーから1m離れた場所で測定した音量(dB)」で表され、一般的には「80dB以上」で高能率のスピーカーと言われます。また同様にスピーカーからの距離に応じてどの程度の音量が必要か、を計算して、スピーカーとアンプの選択をすることができます。この辺に関してはUNI-PEXさんがいい資料を公開してくれています。
http://www.unipex.co.jp/seihin/story/pdfdata/pa_story7.pdf
また、スピーカーの周波数特性(F特)によっても、聞きやすさが変わってきます。聞きやすい音声は大音量でも聞き手の負荷にならず、というか、選挙カーに積載されているスピーカーは多くの場合F特が極めて狭く、電話の音に近い音質であるため、大きな音になるほど、耳障りの悪い音になってしまいます。「聞きやすい音質」に調整することも重要だったりします。
まとめ
PAを使った演説は、ともあれ「聞いてもらってなんぼ」です。であるならば、聞いてもらえるように、技術的な側面からもアプローチすることが極めて重要かな、と思うわけです。