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「うたわれるもの」ミリしらプレイレポート~子守唄編~

こんばんは。

今回もゲームのプレイレポートを書いていきたいと思います。

さて、今後取り上げたるは『うたわれるもの』3部作。

コンテンツ名と3部作であること以外、何も知らない状態でどのような体験を得たのか。
今回はは第一作目のリメイク版『うたわれるもの 散りゆく者への子守唄』をSteam版でプレイした感想を残します。

まずはいきさつから。

はじまりはひょんな会話から

年末年始、久々に地元の友人と顔を合わせた際の夕食にて。
ゲームの話題で「何かシナリオが面白い作品ない?」と問いかけたのです。
返ってきた答えが「じゃあうたわれるものやろうぜ」でした。

思い返せば、その答えが返って来るのは必然。なぜなら遥か昔にも布教されてたから。当時は諸々あって敬遠したのですが、今の私はシナリオに浸かるためなら一切の躊躇いを持たぬ身。よって、「OKわかった」と即答。
その場で調べると、偶然にもSteamにて三部作がウィンターセールの対象。そのままポチる。
そしてスタックしてたゲームとその感想をきっちり書き終えたので、この度一作目を走り抜けてきた次第です。

…二つ返事でOKと返しましたが、考えたらこのゲームについて、3部作であること以外ジャンルすらまともに知らん。
そう、ミリしら状態です。オリジナルからカウントしたら20年経ってるゲームをそんな状態で遊べるとは、なんて幸運でしょう。

なので、ここから語る感想はエンディングまでの範囲をすべて含み、考察なり推察なりもしてますが、ミリしら人間から出た与太話と思ってください。
クリアしてなお調べられない(次作以降のネタバレを踏みかねない)ため、温かい目で読んでいただければ。

プレイ期間:2/1~2/19
プレイ時間:52時間(クリアデータ作成まで)、ゲーム内カウントは44時間

…ん?公式のガイドには2~30時間って書いてあったんだが?18,000字のメモとってたせいか?

村民や仲間の温かさと戦の二面性

主人公ハクオロは謎の大怪我を負い、かつ記憶を失った状態から始まるため、右も左もわからないプレイヤーと同じ目線。

▲見知らぬ天井、耳飾り?のある少女。王道のスタート

エルルゥ姉妹とその祖母トゥスクルさんに助けられたことを把握し、怪我が感知するまでひとまずその村で過ごすことに。

▲日常の温かさが印象に残るよう描かれている。タイトルバックにもした好きなシーン

村人と親交を深める過程がADVパートで描かれ、発展していく村に対する障碍を対処する場面でSRPGパートが差し込まれます。
やってみて初めてテキストアドベンチャーとSRPGの二面性を持つことを認識したのです。(SRPG要素は察してたけども)

▲初陣はサル退治なんてやってたのに…

物語を進め、トゥスクルさんが凶刃に斃れてしまうところから空気感は一変。一気に戦記物としての面が色濃くなります。

▲この言葉が、抑えられないナニカの衝動が、運命を変えていった

戦記物ならではを詰め込んだストーリー

トゥスクルさんの仇討ちとして叛軍を率いるようになってからはSRPGパートも一気に増加。現政権を転覆させ新たな国を立ち上げれば、自然と他国との衝突が起き、戦禍は広がっていきます。
陰謀、誅殺、愛憎、忠誠…同盟や和平など、国と国ならではの駆け引きも多様に描かれていました。

▲クッチャ・ケッチャとの争いでハクオロの謎を引っ掻き回されました
▲個人的にはヌワンギには救いは要らなかったかなぁ

最も印象に残っているのは、女性陣がハクオロを引きずって向かったナ・トゥンクでの一連のストーリー。
スオンカスとカルラ、デリホウライの因縁が入り混じり、ある意味誰も幸せではない結末となりました。
健在な肉親と離れる選択を責めたエルルゥとカルラのやり取りや、スオンカスの想いを受け止めたカルラのシーンは特に深く印象に残っています。

▲スオンカスの最期。終わってみればストレートな奴でした

それまで飄々と好き勝手やってる印象ばかりだったカルラへの感情が全く変わり、とても好きなキャラになりました。

無情さを感じたのは、やはりヤマユラの人々のあっけない最期でしょう。
テオロの報せを受けたとき、まさかそのまま逝ってしまうとは考えておらず、テキストを淡々と読み進めようとしてたところでショックを隠せませんでした。

クーヤの顛末も語らざるを得ない。民に煽動され不本意ながら進軍したと思えば、戦局を傾かせたのは他ならぬ心を許したハクオロであり、その正体が自ら憎む怨敵とした存在そのものではありませんか。
知らぬ間に背負わされていた因縁も周りの尽力で断ち切られたものの、そのために忠臣の最期を目の当たりにして発狂、すべてを忘却してしまう…作中の戦乱の凄惨さが彼女に詰まっていました。

▲この場面でどれだけ心が痛んだことか

戦がひと段落するとADVパートが大量発生、仲間との交流が描かれます。
普段は頼もしい戦士たちの魅力が多く引き出されていました。

初登場以後爆速でヴェールが崩れていくトウカに何度も笑わされたり、
単なるオボロの付き人の印象だったドリィ・グラァコンビもじわじわと属性が盛られ「そうか君らはそっち系かー」となったり。

▲オボロに対して割と遠慮のないドリグラコンビも結構好き

基本ハクオロハーレムですが、その中に男たちの魅力もきっちりと出ていてどのキャラが薄くない点は作品として好印象でした。
先の話題でカルラを好みに上げましたが、男キャラだとクロウがいい味出してます。安易に三枚目なとこがないのがポイント。

▲多くの伏線とヒントを与えつつ、温かく締めくくったウルトのエピソードも好き

あと、これは完全に余談ですが、プレイ当時は分岐はあるかないかとADVパートで複雑なフローチャートが組まれた場合は徹底的に構成を辿ったりしてました。(そのせいで進捗なしで1時間費やしたことも)
結局はどう選んでも見落としは発生せず分岐もない一本道ではあったのですが、遊び慣れてると警戒しちゃいますね。

▲クッチャ・ケッチャ撃破後のADVパートのみ、5回移動するまでに「通路」を訪れたかで分岐。カミュの吸血イベントとユズハの責任イベントのどちらが先かが変わる(通路通過時は後者が先)

SRPGパートに与えられた役割

戦を行う場面はSRPGパートの出番。なお当方スパロボシリーズしかSRPG経験がありませんでした。
違いとしては回避の概念が実質なく、属性の概念向きの重要性が高いことでしょう。これらをおろそかにすると、あっさり撤退の憂き目に遭いがち。巻き戻しシステムのおかげで立て直しは容易ですが。
慣れてくると正面同士で戦闘させて安全に吊りだす、敢えて術を撃たせ状態異常を回避する、なんてこともやりました。(気絶と混乱が治しずらすぎるのが悪い)

▲キャラの掛け合いが見られる協撃システムも面白い
必殺技と協撃でカットインが異なるのも特徴

システム初見のため難易度は普通としたためか、詰むような盤面はなし。
カツカツに考える必要はないためゲーム性はやや大味な印象。勝利条件は殲滅にとどまらず多様性がある点は良かったです。

微妙に感じたのはアヴ・カムゥというただ硬くて厄介なユニット集団。
向きでの有利が取れない上にただ硬く、クンネカムンとの決戦では増援込みでわらわら湧いてきてワンパターン。
ずっと毒撒いてくる弓兵も困らされましたが、このあたりの敵ユニットの多様性は欲しかったかも。

ユニットとしてはベナウィがただ強かった。攻防のステータスが高水準、貫通持ちなので頼りになる。クロウとの協撃が気絶付与なのも大きい。

▲最終的にステータスが先述のアヴ・カムゥと相違なくなる。おかしい

逆にうまく扱えなかったのはトウカでしょうか。目に見えた強みがなく遅めの加入なのもあってあまり活躍の場がなかったです。
活躍がないとLvもBPも稼げず能力を伸ばせないからやっぱり活躍できず…とループになるのが辛い。
言い換えると、愛があれば強くできるという意味にもなるのですが。

SRPG自体は大味ではあるのですが、個人的にはそこに付けられた個性がストーリーを引き立てていたと思います。
ムアの加護を覚えるカルラ、属性が光闇で真逆なウルトとカミュ、ディーとハクオロの無属性などなどはストーリーに添えられたフレーバーとしても機能しています。

▲特にカミュは闇属性持ちと知って「なぜ仲間になる!?」からスタートすらした
オマケに夜神楽の鼓で異常確率軽減させスクショの状態になったため無駄に疑惑を深めるハメに
(バフも状態異常判定なので当然こうなるのだが…)

特に、敵味方含めただ一人薬術を扱えるエルルゥは顕著。
回復は本来道具でしかできない上に、次第に扱えるようになる各種バフデバフはすべて状態異常と位置づけられています。
作中でエルルゥが交わした契約を思うと、これは貴重な回復ユニットである以上の意味づけができるのではないでしょうか。
ハクオロがディーに「駒のようにあつかうこと」を指摘されたように、SRPG要素が超常性の表現として機能していたように思います。

ハクオロの正体、裏返された認識

ハクオロの正体はハクオロ自身にとってもそうであるように、プレイヤーにとっても残り続ける謎です。戦記物の傍ら、この謎に迫るのも本作のストーリーの見どころでした。
私の場合、獣のような部位を持たず様々な知識があるところから異邦人説からスタート
周りがアイヌ文化を想起させたため知識レベルの差があるところから流れ着いた可能性を見ていたのです…が、地理の情報が示され日本の中部地方にあたると知り即座にその説は否定。
冷静に考えると日常動作ではないだろう農法・工法の両方がエピソード記憶とともに忘却されてない時点で不自然(どっちかだけならまだわかる)。
ましてや軍師としての才覚は非凡そのもの。転生説に憑依説と突飛な物も考え出されます。
アルルゥが森の女《ヤーママゥナ》であることをいつの間にか正しく把握しているあたりは奇妙に思ったものです。

そうして物語を進めていくうえで、ハクオロが神そのものであるという事実に直面します。
何かが宿ることはオリカカンとのやり取りで確信し、正体もアルルゥを咬んだ後のカミュ探しのくだりでほぼ見えてきましたが、この世界観の始まりに位置するとは想像だにしていませんでした。

しかし、驚きはそれだけにとどまりません。作中時系列が人間が滅びた後の世界という事実には驚嘆せざるを得ませんでした。
オンカミヤムカイの深淵で突如、近未来な研究室の光景がフラッシュバックしたときにパズルが解けた感覚は忘れません。

▲急に近未来の痕跡が出たときの衝撃たるや

登場人物たちはみな人間の亜種であり、ハクオロ自身は神に取り込まれた元人間。こればっかりは全く考え付かないどんでん返しでした。
ハクオロが一度変身した際に差し込まれた過去の回想が、実は私たちでいうところの現代だったとは思い至らなかったのです。
想像の斜め上をいかれて、本気で感心していました。

▲アヴ・カムゥの出自まではっきりして何度「ははーん」となったか

人間の心を持った神

神でありながら人間を取り込み、人間(アイスマン)として目覚めた存在は、ミコトとの交流でヒトの温もりを知ってしまいます。
人間を滅ぼす際に心が分かれたその神は、ディーを新たな依り代として心身ともに分離しました。
私はこの際に、ヒトの温もりを知る神と、使命に邁進する純然たる神に分かたれたのだと思います。
そう思った場面は、ムツミ撃退後のハクオロとディーの会話。

▲よく考えなくても、ヒトとしての意志がありありと見える

ハクオロとディーが行ったことは、双方とも形の異なる選民です。
かたや自らを気にかける人々を護り、仇なすものを淘汰する。
かたや弱き者は切り捨て、強き種のみを残していく。
ヒトとしてみれば前者が自然な一方、平等に扱う神の立場なら後者の方がより正しい。それぞれの信条で見れば正解であり間違い。
ですが、人類を平等に愛しているかという面ではどちらの指針だとしても疑問符がつきます。結局手を下し過ぎてるんですよね、どっちも。
心が分かれたがためにすでに神としての在り方がズレていたのかも。

この会話の中では、ハクオロも「人を駒として扱っている」という事実に言及されます。先述の通り、SRPG要素が超常性の表現をしているため、私は「その通りだな…」となって反論する言葉を持てませんでした。
メタ要素を組み込んだ指摘は好みが分かれるとは思いますが、私は作中人物と一体感があると解釈できるので結構好きです。メタによって、キャラの発言から受ける説得力が増すと没入感も増すってものです。

▲神としての力を奮い過ぎた点はここでも。最序盤の伏線がここで畳まれる

ともあれ、一連の流れで、ハクオロの謎や伏線が一気に解消されスッキリしました。情を持ち、その在り方が変質し、ヒトに堕ちた神。それもまた、存在してはいけないのです。

印象的な最終決戦と3Dキャラたち

最終決戦は一つに交わりあるべき姿に戻った神を封ずるため、戦いを共にした味方全員で戦うというシチュエーション。
主人公がラスボスとなる展開について、察しはついていたけれど私は意外とお初なシチュだったので
「ついに来たか…」という心持ちで迎えました。

▲最終決戦。シンプルながらこれ以上ない舞台と面々

この戦闘で印象的なのは、必殺技と協撃を使用する際の変化。
全員がハクオロを封ずることに複雑な思いを抱えており、台詞がそれをハッキリ示すものに変化するのです。
3Dキャラの表情も苦悶や覚悟、迷いを色濃く滲ませていて心が苦しくなるとともに、自然とコントローラを握る手が強くなりました。

▲例えばアルルゥ協撃。左が通常、右が最終決戦時。二人の表情が明確に沈んでいる

この作品、SDサイズながら3Dキャラによる表現がかなり良いんですよね。先述したスオンカスの最期の場面でも、カルラがスオンカスを抱きとめる場面は専用にモーションが作られていますし、エンディングの場面も3Dキャラを生かして描かれます。

▲オボロが子を抱えるのもこの場面だけ。
ところでこの都で買ってた鈴、遥か過去の因縁だったりは…する?

ADVパートが立ち絵メインだった上に、クーヤとサクヤなんてこの場面でしか3Dモデル出てこないのにすごいですね。
…そういえばこの作品、3部作完結後に出てるリメイク…まさかね

宿命づけられた出逢い

最期に、主人公とヒロインの運命について考えてみます。

本編開始の少し前、二神の激突で凄まじい地響きが鳴り響き、その余波に巻き込まれたアルルゥ。彼女を救いたいエルルゥは出くわした神(ハクオロ)と契約を結びました。

▲今思えばこのシーンも盛大なミスリードを引き起こしていた

初戦のキママゥ戦、エルルゥは増援として現れましたが、そもそもこれもハクオロを癒さなければならない契約がそうさせたと解釈できます。
エルルゥを突き動かしたのは契約か、想いか。いつから天秤は逆に傾いたのか。このあたりはいつまでも考えていられそうです。
アルルゥがハクオロを「お父さん」と呼び慕うのも、単にハクオロが亡き父に似ていたからではないと思っています。
でなければ異形の姿となっているハクオロのことを「お父さん」と即断はできないでしょう。そして「父」と形容されるのは作中だと他にムツミからディー(神)への呼称くらい…
このあたりを加味すると、エルルゥとアルルゥ、ウルトリィとカミュは「偽りの崇拝と正しき崇拝」「選ばれた者と忘れられた者」といった感じで対にデザインされたのだと思ったりしましたがどうでしょうか。

物語の節目では、エルルゥはハクオロを癒す子守唄を歌います。ハクオロにとってもどこかで聞いたことのある歌。
エルルゥが身に着けている、いつかミコトの子に託した髪飾り。
アルルゥと同じく、森に"呼ばれた"というトゥスクルの姉、先代エルルゥ。
そこに思いを巡らせたとき、ハクオロと呼ばれることになる神はエルルゥに出会うべくして出会ったのだと信じます。
ハクオロの内に眠る神がその存在を謳われてきたように、子守唄も親から子へと謡われてきたもの。
すべてを見届けたとき、リメイクにあたってつけられた副題のすばらしさに、思わず息をもらしました。

▲封印の間際にハクオロが残した言葉。当時はこれで一旦完結ですが
物語は続きました。この先でどうなるのか

まとめ

やっぱり長くなりましたね、感想。
SRPGとしては幾度のリメイクを経てなお大味という評価にはなりましたが、当時でみればおそらく相当に、そして今体験しても全く褪せぬ驚きと感動と、楽しさと哀しさが入り混じるストーリーは非常に良かったです。
どのキャラも薄味なんてことはなく、存在感を出しています。やや気になるのはポナホイくらいかな…?
伏線も基本的に回収されているのであまり気にならず。強いてあげると、「何故カミュは吸血行動に出たのか」「トゥスクルへのクンネカムン進軍時、ベナウィたち別動隊との交戦結果が描写されなかった点(特にハウエンクアはなぜハクオロのところに向かった際言及がなかったのか)」は描写として少々消化不良。

▲あとはユズハのこの描写。これは覚えておくつもり

ストーリーを盛り立てる音楽とキャストの演技も良いものでした。特にアルルゥの声優さんをエンドロールで見たときは感嘆の声が漏れてました。流石でございます沢城氏…
劇伴はいの一番に耳にすることになる『哀吟』が印象的かつ最も好き。これ一発で時代感とこれから先に待つ展開が伝わってくるのです。他の劇伴も物語を邪魔することなく引き立ててくれました。
『運命-SADAME-』『キミガタメ』などボーカルも非常に心に染み入ってきます。EDは歌詞と映像がリンクするところがあって思わず涙が…
(ちなみに、リメイクなのでスペシャルエクステンテッドも選択可能でしたが息をするようにオリジナルでプレイしてます。実績なんてなかったんや)

まとめも長くなりましたが、とても良い作品でした。何も知らない状態から遊べてこういう体験ができるのはホント幸せですね。
これを書き終えたということは『偽りの仮面』に手を出せるってコトです。『二人の白皇』までもう買ってあるんだからじっくりやっていくのみです。
いつやれるかは別。

では今度こそ締めたいと思います。それでは。

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