『アナザーコード リコレクション』プレイレポート【ネタバレ後半】
こんばんは。今回もプレイレポートになります。
取り上げますは、2024年1月19日に発売されたNintendo Switch用ソフト、『アナザーコード リコレクション』。
ということでネタバレしたりもする感想noteになります。
2005年発売のNintendoDS用ソフト『アナザーコード 2つの記憶』および、2009年発売のWii用ソフト『アナザーコード:R 記憶の扉』の2作品が原典。これらを1つの作品としてSwitch向けに再構築したものになります。
再構築、と表現したように、この作品は「リブート/リビルド」の位置づけです。当時のプロデューサー、ディレクター、シナリオ担当にイラストレーターと、オリジナルの主要スタッフが参加なされていますが、ボイスの追加とビジュアル面の強化・リデザインにとどまらず、ストーリー自体も加筆…いや、変化しているため、生まれ変わったと言ってよいでしょう。
今回は、大きく3つに分けてお話します。
Switch版のプレイ感触・感想【ネタバレナシ】
原典からの変更内容の触り部分【原典既プレイの方向け】
ストーリーの感想【ストーリーネタバレ解禁】
ということで、まずはSwitch版を通していっての感想など。
Switch版のプレイ感触
Switchに適した美しいビジュアル
ビジュアルは高精細とは言いませんが、Switchのスペックに適しつつ、美しい情景が描かれ、建物の古さなどの空気感は描写できていると思います。
全編通して処理落ちもなかったので、プレイしてて適切なバランスだったのだと思います。
愛嬌いっぱいのキャラ造形もなかなか魅力的。あんまり媚び過ぎないのがよい印象。ポッと出のキャラクターもおらず、印象が薄いこともありません。
気になった点としては、探索パートにおいてカメラがそこまで引かないため、主に小部屋などで画面が窮屈に感じる場面がありました。ついでにもうちょっとカメラの回転速度が上がるとよかったかも。
また、調べられるものに目線がいくのかアシュレイの視線が落ち着かず頭がふらふらしているように見えるのもちょっと気になった。
謎解き・アクションについて
ネタバレにならない範囲で、謎解き周りについても。
今作でアシュレイが持つ端末『DAS』はNintendo Switchによく似た形状。その機能を活かしたり、周りの様々なものを利用して謎を解いていきます。
原典のDS/Wii版と異なり、Switchは様々なプレイスタイルがある上にjoy-conのないSwitchLiteもあるからか、ハード特有のギミックを用いた仕掛けはジャイロ機能くらいでした。
謎解き全般は優し目ではあるけれど、ひらめきを求めてくる場面もあって唸る場面もありました。ジャイロの挙動に泣かされた場面も
会話の中で段階的にヒントが示されることもあったり、ナビゲーション機能やヒント機能も実装されているのでフォローもしっかりしているようです。
(私は息をするように両機能をOFFにしましたが)
また、今作には折り鶴の画像スキャンという収集要素もあります。DS版でいう「青のDASカード」にあたる要素。最初の一つ目だけチュートリアルで、残りは自力で見つけていきます。
本筋とは少し外れた裏話が見られますが、なるほどな話もあるので考察勢としては楽しい。油断すると見落としたり…(2敗)
ちなみに、『記憶の扉』編については少々謎解きを行う場面やバリエーションが減り、ストーリーを読む比重が大きいという感覚。
仕掛けだらけの屋敷から、屋外レジャースポットへと舞台が移った影響が大きいのでしょう。謎解き目当てだと気になるやも。
丁寧な演出・ストーリー
演出は全般的にいい味だしてます。キャラの動きは汎用感が薄く、モーション使いまわしが目立つということもありません。なかなか丁寧に作られている印象を受けました。目線もちゃんと意味がある点は高ポイント。
ムービーに関しても、次に意識すべき物体をしれっと示唆してくれるなど、かなり細やか。
BGMは雰囲気づくりをすっと支えてくれるし、ボイスによる物語への没入度もなかなか良い感じ。
ちょっとだけ踏み込むと、例えば『2つの記憶』編のある場面ではディー(アシュレイが出会うゴースト)は陰鬱に、アシュレイは戸惑いに駆られるのですが、それを象徴するかのように探索するエリアは薄暗い屋敷西側。プレイ時の気持ちとリンクするような空間が物語を盛り立てていました。
ストーリーについても、期間が開き、かつ別ハードで展開された作品を1本にまとめたからか話はとてもわかりやすく、設定もきっちりと噛み合っていると感じます。
基本的にはそれぞれの編でお話をまとめつつ、前編で伏線を撒いたものについては、後編できちんと消化するようになっていました。
主人公と家族の絆、そして彼女にまつわる「記憶」の物語。物理的な謎を解きつつ、その記憶に秘められた謎を解き明かす作品です。
まとめ
ハイミドルプライスといった価格帯に対して、ややプレイ時間は短めの印象。(1周完走までにおよそ13時間。収集要素を集めきるのに+1時間)
シナリオの完成度は高いしビジュアル面もよし。演出もしっかり。しっかりモーションが付けられている上に一部探索パートを除いてほぼほぼフルボイス。見て聴いて楽しむことができます。
演出面のボリュームがある一方謎解きの比重とボリュームはそこまで大きくないと感じるかもしれません。(特に『記憶の扉』編)
謎解きも楽しみつつ映画的なストーリーも楽しめる点がシナリオを楽しむ人としては◎。作品としてやりたいことは形にできている、作り込みの良い作品だと言えるでしょう。
忘れられない思い出、家族の絆、記憶という概念…これらに琴線が触れる方には進められる作品といえます。
次は、リコレクション未プレイでDS/Wii版には触れていた人、あるいはリコレクションクリアして原典との違いが気になる人向け。リコレクションのネタバレは抑えつつ遊ぶ意味はあるかどうか、判断材料になれば幸いです。
原典からの変化【原典既プレイ向け】
DS版の発売から19年。ハードも大きく変化したため、それに応じた変更点が多数あります。
行動範囲の完全3D化
DS版はトップビューからの見下ろし+イラスト、Wii版は描写は3Dだけど移動はカーソルによる2D移動や視点変更のみ。対してリコレクションは全編通して自由に移動できるようになりました。(エリア移動はロードが入る)
また、『2つの記憶』編は奥へ進んでいく屋敷とリアリティ考えると歪な形をしていましたが、リコレクションでは部屋の数こそ変わらないですが建物として違和感のない構造に変わっており、当時はなかった中庭もちゃんと存在するようになっています。
ただし、調べられる所ならほぼすべてタッチできた原典とは異なり、調べられるものだけ吹き出しが出る形なので、能動的な探索という側面は少し弱まってしまっているかと思われます。
謎ときリニューアル
探索の舞台が3D化され、特殊操作がジャイロのみになったことが合わさって、ほぼすべての謎解きが装い新たになりました。
カギを組み合わせる動作などもシステムのボタン一つとなっているし、謎のある場所から大きく離れて探索するケースもだいぶ少なくなっている印象。
UIで示されたものは余すことなく使うようになっている点は変わらずです。
デザインの進化
現実のガジェットも技術も進歩していますが、それに呼応するように作中ガジェットもデザインが進化。作中の技術の近未来感は大幅に増しています。
QRコードがある折り鶴スキャンなどの画像認識などは現代技術(作中の時間を考えれば未来の技術)の変化を取り入れた要素と言えるでしょう。
『記憶の扉』編で登場する監視カメラの役割変化はその最たるものといえるでしょう。
RASに関しては元々Wiiリモコンを模したものでしたが、こちらもガラッと形を変えて登場することとなります。
また、登場人物もほぼほぼリデザインされました。
グラフィックの大幅パワーアップでモデリングの自由度も増していますから、原典と比してかなり魅力的になったのではないでしょうか。
ちなみにアシュレイの服装が2編とも原典と異なりますが、元の衣装もまったく触れられないわけではないようですよ。
ストーリー構成の大幅変更
当時、「アナザーコード」シリーズは事実上2作で完結しました。更なる続編の構想の噂もあったとかで、解決しきられなかった伏線もありました。
リコレクションでは、2作分の内容で完結するよう、ストーリーが再構成されています。これが原典からの最大の変化です。
『2つの記憶』編は、骨子となるイベントはほぼそのままですが発生する流れはかなり変化しており、「彼」の初登場がかなり早められています。
「彼」が登場して以降は「彼」を単に追う展開ではなく、別の目的も新たに付加されます。のちの伏線もこの時点からちゃんと盛り込まれるようになっており、Wii版で突如追加された描写が…なんてこともなくなっています。
『記憶の扉』編に至っては登場人物レベルで変更が入っており、辿り着く真相は全くの別物に。
Wii版は後半からやっと登場するキャラクターもいますが、中盤までに全員が顔見せするよう序盤の流れもかなり変わっております。
当時は曖昧だった伏線も本作だけで完結するようになっているので、原典を知る人ほどその変化にビックリするかも。
ちなみに、シナリオは原典と同じく鈴木氏が担当しているそうなので、勝手な再解釈がなされたということもなさそう。
ちなみに2作通して一番の違いは、章の終わりにアシュレイがそれまでのことを整理するパートがなくなったことかもしれません。
正答を選ぶ場面自体はここぞというところでちゃんとあったりしますが。
「これで、忘れない」などの決め台詞も無かったりします。
ここまでは原典からの変更点を、リコレクション未履修あるいはリコレクションのみ履修した方向けに挙げてみました。
移植ではなくリビルド、再構築だったことが分かって来たかと思います。
私個人はリコレクションプレイ後、DS版はたまたまプレイできる環境だったので自力でクリアし、Wii版だけは別途調べる形で対応しています。
それではあらためて、リコレクションをクリアした後、ストーリーの感想を書き残していきたいと思います。
家族の絆に迫るストーリー【ネタバレ注意】
言葉だけでなく、動きで示す心の機微
様々な動作にきっちりモーションが付いたこともあり、非常に演出がよかったと感じました。画で魅せる、といったシーンがチラホラ。
ちなみに、個人的には彼の初登場の時点で「絶対これ偽パパだよ」と謎に確信しておりました。船長の発言もちゃんと覚えていたので疑う要素しかないんですもん…
(ちなみに、ビルがエドワード家の人間である事実は終盤まで伏せられてる)
『2つの記憶』編でのリチャードと真に再会する場面はかなり好きです。
アシュレイは彼から漂うチョコレートのニオイに気づき、直感とフラッシュバックで本当のパパに気づきます。それは確かな絆を示す場面でした。
しかしリチャードのほうは娘を抱きしめようとしても、別の記憶が存在するためにそれができない…
見てるこちらまでもどかしい気分になってしまいました。
推理モノにはやはりバディ
推理していくタイプの物語には、やはりバディはつきもの。
『2つの記憶』編では終始ディーが一緒であり、副題の通りアシュレイ3歳児の悲劇の記憶とディーの記憶、それぞれの真相を求める物語が同時に進みました。
『記憶の扉』編では、サヨコがジュリエット・レイクに訪れた真意をアシュレイが追い求めつつも、「湖の汚染の真相」「ライアンの真意」「新たな友達」と複数の物語が絡み合います。
その中でともに行動するバディ役が変化し、前半はマシュー、研究所ではリチャードときっちりと分けられるようになっていました。パパがしっかりカッコいいのがよい。
推測を越える結末
『2つの記憶』編はまだスッと真相が推理できたところはあるんですが、『記憶の扉』編はなかなかに衝撃でした。
意味深に監視カメラに注目させたうえで、その度に登場していたライアン。
監視カメラのある周辺にしか現れないことはすぐにわかるんですが、しっかり影が付くからホログラムでもなし…と謎は深まるばかり。
まさか監視カメラ自体もアナザーであったとは衝撃だった。
ライアンがアシュレイに施そうとした、アナザーによる記憶操作。
記憶が上書きされようとする中で、サヨコとアシュレイは対面します。
これもまた私の記憶にも残るだろう名シーン。
湖の汚染原因と液体メモリ、ライアンの真意とサヨコがジュリエット・レイクに来た目的…一つ一つの出来事に付随する要素が絡み合って分かった真実は、とても切ないものでした。
完成度を上げたシナリオ
続編を意識せずきっちり区切られたことで、Wii版ではぼやけたままだった伏線もほとんど回収され、ストーリーはより綺麗にまとまりました。
『2つの記憶』編は副題の通り、繰り広げられるストーリーラインが一貫して2本、それも並列に続いていくのでシンプルに理解していくことができました。DS版でもそれは変わらず。
一方『記憶の扉』編から登場人物が増え、展開されるエピソードも複数にわたりますが、それぞれちゃんとまとめていたように思います。
それらしい人がいた、で留まっていたマイケルの消息がハッキリし、マシューとケリーの対面もグッとくる重みのあるものに。原典で噂止まりだった要素が活用されたのも面白いですね。
バンドコンテスト周りのエピソードも整理され自然な形に。ギターセッションもきっちり魅せてくれました。
残った謎と言えば、ビルが右手首を痛めている描写くらい。
DS版2周目の青のDASカード情報で、金の鳥の調度品に触れた場合に無意識にそうなることが記述されていますが、あれはどういう伏線だったんだろう…ビルもなにか記憶を弄ってたりしたのだろうか?
最後のぶっちゃけ、Wii版の衝撃【ネタバレしかない】
リコレクション完走後、たまたま家にあったDS版を初プレイ。
タッチペンやマイクをフル活用した仕掛けを楽しんだりしていました。
ビルが出てくるのが遅かったり、フラニーとビルの関係が唐突感あったり、屋敷の形が歪だなぁと思ってしまったり…リチャードとアシュレイの再会時の温度差が結構違うのが一番の驚きでしょうか。
パパ(ビル)に会ってからの時間経過の違いで疑念や戸惑いの多寡がこう変わるのかと両バージョンともに納得したりしていました。
その後Wii版のストーリーを追っかけたのですが、こちらはうってかわってあまりの違いに衝撃。Wiiでしか出ないキャラすらいるなんて。全然出番がないキャラをボイス付で喋らせても勿体ないかもですが
サヨコの行動の真相は概ね一緒でしたが、まさかライアンの出自と目的がこうまで違うとは想像だにしませんでした。
Wii版のライアンは完全に悪役で、サヨコの記憶に執着する理由も研究成果だけ、と冷酷な研究者。幼少時の記憶に関する末路も残酷なほど違う。
けれど一番違うのはクライマックスでしょう。Wii版では、DS版において崖から落ちかけるビルの手を掴むリチャードというシーンを再体験させつつ、父の成長を描写する側面がありました。
リコレクションはあくまでライアンとアシュレイの対話とし、母娘の絆と受け継いだ想いで救うという流れに。
まったく違う流れで比較するものではないですが、主人公の行動と言葉が真にわだかまりと未練を解いていったリコレクションのほうが好みです。
研究データは持ち去ったソフィアの去就やクルーソー家の今後、ライアンは改心するのか、そして湖の汚染とJCヴァレーの因果関係…こうしてみると、Wii版は明確に未解決の伏線が多かったんですね。リコレクションはこのあたりすべて整理しているので1作でスッキリ出来るようになっています。
その先があるのかは…どうなのでしょうね。
と、なんだかまた長い文章になってしまいました。書きすぎだろうか…
謎解きやアクションチックな仕掛けを求めると、会話や演出がタップリ入っていて重い!という感想もあるんだとか。
これまでのnote記事でも明らかなとおり、私個人はそういうのが好みなのでリコレクションにもしっかり入り込めました。
知人とのちょっとした会話がキッカケで、余っていたカタログチケットのいい使い道だと思って買った作品でしたが、これまた良いものに出会えたと思います。
記憶というものを描いた作品を見ると、これまでの記憶を辿ったり、他人の記憶に私はいるだろうかとしんみりしちゃっていけませんね。
といいつつ、そういう作品をこれからも求めたりするのでしょう。
といったところでこの辺で。
長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。