『STEINS;GATE ELITE』2024年より贈られたプレイレポート
ごきげんよう、皆の衆。
今回は『STEINS;GATE ELITE』のプレイレポートを2024年から贈ろうと思う。
本作品は2009年に5pb.(MAGES.)によって生み出された想定化学ADV、『STEINS;GATE』を、TVアニメ版の映像を使いつつ当時描かれなかった分岐や場面を新規カットを追加した上で再構成、「フルアニメーションADV」として2018年にリリースされた代物だ。
先刻運命に導かれるまま再会した旧友に薦められ、これもまた運命石の扉≪シュタインズ・ゲート≫の導きなのだと確信し、物語を"観測"することとなったのだ。
それではそんな私の感想語りに付き合ってもらおうか――
という茶番めいた口調はそろそろ終わり。私にはオカリンをトレースすることなどできん。
これまた世に出てから長い作品。影響力も大きいのかそこかしこでこの作品をパロったネタや台詞が否応なしに遭遇することもあり、全く知らないとは言えない状態からのスタート。
しかし遊んでみると、いい意味でそういうのを忘れていたりネットの民が茶化してくれていたおかげで新鮮なまま遊び抜くことができました。
完全に時代考証や化学考証方面を意識するのは野暮だろうと思い、そこまで深く考えずに進めましたが、やりきった今としてはなかなか綺麗にまとめ上げられた物語でとても触れる意義のある作品でした。
ということで今作もネタバレは普通にしちゃいます。ストーリーの流れに沿って感想を書き連ねていきましょう。
プレイ期間:9/1~9/20
プレイ時間:42h
余談ですがNSW版です。手軽さ最強。
ソフト購入は8/15あたりなんですが、早々にバッテリー膨張が発生してしまったので速攻で公式サポートに修理を出す羽目になりました。
新型どうこう言ってる時期に買い替えはないものね!10日ほどで返ってきてくれたのは大変助かりました。
ELITE版ってどうなん
まずはELITE版について。手軽さもあってNSWで買うのはほぼ決まりだったんですが、そうなると原典版は買えずELITEしか選択肢がなかったのもあって比較調査することもなく買いました。
で、クリアしてから細かな違いを調べたのですが…
アニメ版の素材を使うため立ち絵と背景の概念がない
書いたまんま。アニメでそのまま場面を置き換えるイメージ。
文字通り、立ち絵の差分がそのままアニメカットになっている感じです。
例えば岡部の発言で使われるカットが、ラボだろうとフェイリス家であろうと使いまわる。きっちり記憶していくとじわじわ違和感になったりして一長一短。
とはいえ、印象的な場面はまるまるアニメーション。インパクトはバッチリだと思います。代わりにイベントスチルの概念も消滅したので見逃したシーンの有無をスチル位置から割り出すメタ的攻略も封じられた
能動的→受動的になったフォーントリガー
最大の違いはやはりここではないでしょうか。
原典では都度受信するメールや電話に対してリアクションを取るかどうかを自分で決定する必要があったとのこと。未読を既読にするか、いつ返信するか、誰と通話するか…それらを自分で選び取るのだとか。
しかしELITEでは自動的にメールを受信し、その場でどう返信するかあるいはしないかを決定する形に。大きな分岐となるDメールも送信可能なタイミングが明確になり送るかどうかボタンで決定するように。気づかず手遅れ、というのが皆無に。ゲームの難易度としては大幅に下がったとみていいでしょう。
一方、一部の細かな分岐の条件がELITEではどうやって起こすか不明瞭に。
具体的には萌郁からのメール応答をしなくて紅莉栖に感心されるシーンや、最初のタイムリープの記憶を夢と判断してデジャヴったりゲルまゆメールなど。
ざっと調べた限りELITEでそれを引き起こす条件はハッキリできなかったのでモヤモヤ。NSWだと実績系もないので余計謎なのでした。
返信内容や返信有無の頻度などで分岐するようになってそうですが…
それでは改めて、ストーリー主体に振り返りましょう。
なお、派生作品の量もあってこの作品外のネタバレなど踏みまくりそうだったのでほぼほぼゲーム外では何も調べたり確認したりしないまま感想を書いてます。ご了承ください。
ストーリー感想
ザ・アキバな空気感と濃いオタクたち
あらすじはこの際すっ飛ばします。
初っ端から主人公・岡部倫太郎はオタク…というより厨二病フルアクセルでプレイヤーに一瞬でイタいやつだと確信させるものがありました。
と思ってたらすぐにシリアスな場面へ突入。会ったばかりだった有名人、牧瀬紅莉栖が倒れている場面を見て情報を伝えるメールを友人・橋田至(ダル)に送ったその瞬間、目の前から人が消えてしまった―
何が起こったかわからないまま、講演を聞くため訪れたビルで、殺されたはずの紅莉栖に出会う…という始まり。すごい掴みでした。読み進める原動力としては十二分だと思います。
そこからしばらくは電話レンジ(仮)の仕様を突き止めつつラボメンが増えていって…という日常パート。
出てくるキャラの誰もかれもが一癖二癖もあって愉快なのが面白いところ。
秋葉原も多くの実在の店舗に実名利用許可をもらっているため、そこかしこで既視感ある光景を見られるのも面白い。存分アキバオーラを浴びられます。
オタク文化やそれにまつわる用語も大量。ヒトを選ぶのも間違いないですが私は使いこなせずとも意味は全部わかってしまう側の民なので問題なし。…いいのか悪いのか。
好奇心の先の悲劇
転機が訪れたのは5章・時空境界のドグマ。
偶発的に過去へ送信できるメール ― 通称Dメール ― の仕組みを解明、ラボメンたちが使用し過去を書き換えていった中、様々な要因が絡み合い電話レンジはパワーアップ、タイムリープマシンが完成。
しかし、その完成祝賀会の最中、テロ予告が起こり嫌な予感がする中、ついに悲劇が起こってしまう。
どこかで痛い目を見ることは冒頭のモノローグから明らかでしたが、実際目の当たりにするとものすごく辛い場面でした。
ともあれ眼前に降って来た「死」を前に使うつもりのなかったタイムリープマシンを使う決断に。ここから岡部の戦いが始まっていくんだな…
紐解かれる過去、絡み合う因果
タイムリープを繰り返すことで悲劇の原因が見えてくる。変えてしまった過去を"なかったこと"にする必要がある…というのが後半の流れ。
そのきっかけとなった、引き留めたことで開始が遅れた鈴羽のタイムトラベルの顛末は非常に印象に残ります。
今までさんざん"ネタとして"目にしてきた「失敗した」の羅列は非常にシリアスな場面に投げ込まれる本当の慟哭だったのだと知りました。
そこからはチャプターごとにラボメンガールズ個人がフィーチャーされ、関係者ふくむ過去や本性が明かされていくのですが、とりわけ衝撃だったのは9章:無限連鎖のアポトーシス終盤でしょう。
萌郁が送ったDメールを打ち消すための方法を模索していく中でミスター・ブラウンこと天王寺裕吾、そして娘の綯すらも因果に関わっていたのは完全に予想外でした。
このキャラと出会うことに、タイムリープを行う条件が揃うことにすべて理由がある、というのは見事。うまく構成された作品だなと驚かされます。ヴァイラルアタッカーズの彼はまあ仕方ない
到達した結末、あったかもしれない未来
そんなこんなで10章、透明のスターダストに到達し、何人もの思いを犠牲にしてひとまずの景色、まゆりが生き続ける日常に辿り着きました。
絶対にトゥルーではないとわかっていながらも、これまた綺麗な終わり方ではあるんですよね。
そして、6章・形而上のネクローシス以降は重大なフォーントリガーで大きく話が分岐、ヒロインたちの個別エンドを見ることができます。
中でもるか子エンドは結構印象深いですね。まゆりの結末を受け入れるという悲しみはあれど、それを乗り越えタイムリープマシンを岡部以外が使う、というのもメインの流れにはなかったし。
そして、メールとの苦闘へ
1回通し辿れる分岐を辿った結果、まず埋まったエンドは4つ。
紅莉栖エンドおよびトゥルー(暫定)があるだろう…までは容易に推測出来たところでそれらを探し出すのにはまあ苦労しました…
2周目…最初のタイムリープ後に変化が発生。
リープしてすぐ行動に移した初回と違って日和って同じ光景を繰り返し、さらにゲルまゆを見てしまうことに。
3周目にはケータイのメール受信に即返信しないことを紅莉栖に褒められ、しかもフェイリスからIBN5100の情報を得る過程が大幅に変わる…など、周回での分岐とは思えないものも発生。
それもそのはず。フォーントリガーとしてELITEでは大分岐だけが強調されていましたが、原典においてはケータイの操作全般がフォーントリガー。なのでメールの未読/既読、そして返信内容で細かく話が分岐するのが真相。
しかしそれを途中まで周回差分(途中で分岐が増えうる)と勘違いしていたために時間がかかったのであった。初回プレイからトゥルー行けるそうで。
ELITEではメールの受信/返信がその場でしかできなくなったこと、電話に出る/出ないをプレイヤーが選べなくなったことで分岐条件は大幅に変化したみたいですね。その条件や影響はエンディングに関わるものを除きどこにも情報が転がってないので、今も未読の分岐があるんじゃないかと気になってしまう。ここはちょっと微妙ポイント。
そうして分岐を探していった先で、ようやく紅莉栖とのメールが増えていき、あれよあれよと分岐が起こり、紅莉栖ENDにも到達したのであった。
辿り着いた境界線
紅莉栖ENDに辿り着く、因果律のメルトに連なる時系列だと、誰からのメールも来なくなるという違和感はあったので、さらに紅莉栖とのやり取りが続くと予想。仲が深まっているなと読み取れるけどどこまで続けばいいんだと不安になりつつ進めました。
途中で条件満たしてそうだとわかる描写が何もないって不安ですよねー。
ルートENDムービーの曲が変わってようやく安堵したのを覚えてます。
一番最初、紅莉栖が斃れていた経緯が明かされた時はさすがに衝撃でした。お約束じみたところだったかもですが、プレイ開始当初は思いもしませんでしたね…
もちろん、プレイヤーもとい観測者が思いもしなかった=確定できなかったからこそ、トゥルーにおける改変が起こせたのですが。
あとは全部の流れを綺麗にまとめて望んだ未来を作り出すのみ。アツい展開でございました。
ここで唐突に未来から更なるミラクルカードが飛んでくるのはちょいと驚きましたが、因果としては違和感はさほどないかな?
特に、完全復活した狂気のマッドサイエンティストはカッコよかった。最初はただの大法螺吹きだったはずなのに、気が付けば真実を伴った言霊で執念もあってなんかサマになっている。ついでにメンタルボコボコのドクター中鉢にあまりにも効果覿面になるという展開に感嘆の声を上げました。
主観=岡部が観測したこと以外は確定でないならそこを挿げ替えていけばよい、という解決策はホントに成立するか?と思いつつ見てました。
ガチャガチャで引けたうーぱのレア度に関する問答は十分主観足りえる気がするし、まゆりもコモンアイテムに名前書くだろうか…?とか。
あの日の岡部たちの行動が変わらなければいいのかな…?少なくともドクター中鉢(と彼によって齎されたはず)の運命はめちゃくちゃになってるけど。
全てが丸く繋がった満足感のある作品
こうして全ENDを見終わって、きっちりまとめられた作品だというのがまず一言。
フィクションを交えつつもかなりきっちり練られたであろうタイムトラベルやタイムリープの設定ももちろんですが、なんといってもキャラクターの繋がりに感心し切りでした。
未来人疑惑があった鈴羽の血縁なんかはそんなバカなと笑っちゃったくらい。すごい繋げ方で驚かされたものです。
フェイリスも単なる行きつけの店の厨二病メイド…ではまったく留まらず、むしろ作品の舞台を整える役割すら持たされているという。
まだ若いのに経営に口を出せた点など、前半に出た疑問点に対して後半に理由が示されることでカチリと歯車が合っていくのはたまらないです。
Dメールの過去改変も、迷惑にならない程度のちょっとした改変から始まり性差による役割の変化、自らの欲のための悪用、悲劇の回避と、メジャーな運用法はきっちり抑えられていたと思っているので物足りなさもナシ。
それらが見事に岡部を振り回してたのは後になれば笑ってしまいますが。
こまかーい点を気にしだしていくと大変だと思うので敢えてその辺抑えてはいますが、大抵の疑問は残らないまま走り切れたため満足です。
(綯のタイムリープは年齢的に電話の手段がないタイミングもありそうだが成立するのか?とは感じた)
あとは作品中では萌郁の扱いがちょっと他ヒロインと比べて凹んでる感があること、フォーントリガーが受動的ゆえに複雑さが減ったり分岐条件がわかりにくくなってるっぽいのが惜しいかしら。
なかなか知られてはいるしネタには触れてきたけどなんだかんだ触らないまま、そんな作品は結構あってこの作品もそのひとつでした。
そしてやってみたら非常に面白かったです。きっかけを与えてくれた知人には感謝。
今のところ、派生作品まで手を出すかはわかりませんが、ダイバージェンシズアソートが手ごろになるタイミングで買うのも手かしら、という感じです。
(ダブルパックの存在は知らないままDL版を買いました…)
最後に、この作品、トゥルーの締め方がすごく良かったです。
到達したシュタインズ・ゲート世界線は、アトラクタフィールドの境界線。別の世界線のifも重ね合わさるのか、岡部たちと紅莉栖が出会う未来は収束していた…というのはなかなか世界観にあった終わり方で、後味スッキリ。
この先も気になっちゃうところですが、ひとまずここまで。
最後まで目を通してくださり、ありがとうございました。