12ステップ【アラノン】アルコール依存症者の家族と友人の自助グループ
アルコール依存症者を家族や友人に持つ人の自助グループにおいて使われる12のステップは、アルコール依存症当事者(本人)が慣れ親しんでいる12のステップと視点が多少異なります。
アルコール依存症当事者(本人)が活用するための12ステップについては、現在メインブログで更新中です。
アラノン家族グループが活用する「12のステップと伝統」 小冊子が手元にありますが、引用・転載が禁じられているため、わたしの理解と言葉に置き換えて概要を記します。
12のステップ1 私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
家族や友人、特にアルコール依存者のパートナーは、当事者の飲酒が正常でないことに心のどこかで気づいていながら、目をつぶってしまう傾向にあるようです。依存症の問題に限らず、結婚まえのカップルが相手の問題に目をつぶる……結婚すれば、子供が生まれれば改善されるであろう等、都合の良い希望的観測で不安を誤魔化すことは、儘あるのではないでしょうか。
わたし自身、酒乱の男性と同棲をした経験があります。同棲以前から彼が酒乱であることを実際に見て知っていたにも関わらず、わたしと同棲を始めれば、結婚すれば自己コントロールをしてくれるようになる筈という希望を握りしめて、故郷から離れ彼の住む土地へ引っ越すというバクチを打ちました。結果は惨敗です。今でこそ人生経験の引き出しが増えたと思えるようになりましたが、回避できる災難ではあったと思います。
アルコール依存症の当事者が、自身の依存症を認めるまでのプロセスには時間を要しますが、関係者も、つぶっている目をしっかり見開き、大切な人が心の病気にかかっていることを認めるまでのプロセスにおいて、辿るべき必要なステップがあります。
当事者・関係者共に、まずは現実を認める勇気が必要です。
12のステップ2 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
12のステップには自助グループありきですから、ここでは、自助グループへ参加することで自身と同じ問題を抱えている仲間と出会い、仲間が問題解決への道を着実に歩んでいる姿を見聞きすることで希望を見出したと語られています。問題解決の肝になるのは12のステップの実践です。
自助グループや12のステップ以外にも、信頼できる仲間や精神科医・カウンセラーを頼るなど、方法はいくつかあります。
自分を超えた大きな力に頼る、つまり自力を手放すことの重要性を理解する必要があります。あなたがこれまで散々苦しみ、12のステップにたどり着いたということは、自力での解決が難しいからではないでしょうか?
わたし自身は12のステップ1の項目でお話した酒乱の同棲相手とは縁を切ることを選びました。そして自分自身のアルコール依存症問題について、初めのステップとして、依存症問題をいくつも扱っている心理カウンセラーを頼りました。
どう行動すれば良いかわからないとき、まずはどうなりたいのか? 自分の心の嘘を見破り本当の願いを自覚する勇気を持ちます。そして、偶然という名の追い風が吹くのを待つ。行動すべきときに行動できない弱さを持っている人は大勢います。あなただけではありません。わたしもそうでした。
酒乱の彼は別の女性と出会い、別れを切り出してくれました。
次に新しく出会った男性はギャンブル依存症者で、自助グループに通っており、当時わたしが住んでいた街で活動する心理カウンセラーを紹介してくれました。
助けて欲しいと願い、これぞという波が来たときには、波に乗ってみる。
もしも勇気が出ず波に乗り損ねてしまっても、自分を責めず、次の波に乗りましょう。ただし、あまりにも限界であるのにひとりで抱え込み続けないように。「助けて」 と声を上げてください。SOSを出してください。お願いしますね!
12のステップ3 私たちの意志と生き方を、「自分なりに理解した神」の配慮にゆだねる決心をした。
12のステップにおける「自分なりに理解した神」 これをハイヤーパワーと表現することが多いようです。スピリチュアル思想に馴染が深い人であればハイヤーセルフのことかな? とピンと来やすいかも知れません。けれども12のステップにもスピリチュアル思想にも、これまで馴染のなかった人が置いてけぼりにされることは良くありません。もっと現実的に活用しやすい内容に置き換えてみましょう。
特定の宗教を信仰しているわけでなく、やおよろずの神や自然信仰にもピンと来なければ、神という言葉を忘れてしまってください。神にゆだねるとか、神の導きとは、すなわち「偶然」のことです。自力でどうにかしなければならない執着を手放し、自分の心にひそむ嘘や誤魔化しを明確にし、本当の気持ちを認めることから奇跡がはじまります。現実が動き出します。
ただし、ゆだねるとは行動をやめる・すべてを他人任せにすることとは違います。あなたを導く偶然のチャンスに気付いたら、その時々に必要な行動を起こしてゆきましょう。大きなワンステップでなくとも、1ミリずつで良いのです。
偶然のチャンスに気づけるか? どのような行動を起こすべきかが自分に理解できるのか? そのコツは、繰り返しになりますが自分の心にひそむ嘘や誤魔化しを明確にし、本当の気持ちに気づき続けることです。本当の気持ち、あなたの本心からの声それこそが、神からのメッセージなのですから。
たとえば依存症のパートナーと共に成長する道を歩むのか? 自身の平安を取り戻すことを優先して別れを選ぶのか? どちらも間違ってなどいません。あなたの本音こそが正解です。
12のステップ4 恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸を行ない、それを表に作った。
12のステップ3において、自分の嘘を見破り正直になることの重要性をお話しました。
12のステップ4は、自身の内面を紙に書き出しておこなう棚卸のワークです。詳しいやり方は以下のリンクを参照されてください。
自分自身を誤魔化してきた部分だけでなく、自分自身の長所・素晴らしい面を認識しましょう。そして、これまでの家族関係をはじめとする人間関係において傷ついてしまったエピソード、または誰かを傷つけてしまったエピソードも棚卸してみませんか。傷ついた体験は風化したように錯覚しているものでも、案外根深く潜んでいて、あなたの人生の平安や幸福度を下げているかも知れません。傷を癒す方法はいくつかありますが、12のステップにおいては相手を許すことに取り組みます。そして、誰かを傷つけてしまった自分自身を許すことにも取り組みます。
許す愛は、スピリチュアルにおいて上級ステップに位置しているものです。たやすくできるものではありませんが、あきらめずに取り組み続けるプロセスの中に必要な気づきや導きがもたらされるでしょう。
12のステップ5 神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
12のステップ4の棚卸ワークによって、自覚した内面を明るみに出します。闇に光を当てるためです。
悩みごとや失敗・後悔したこと、誰かに対しての不満や怒りの感情などを信頼できる他者に話して気持ちが軽くなったり、整理することが出来たという経験があるのではないでしょうか?
12のステップ5は、それよりも更にディープで勇気を要するワークですが、言葉にして話す(放す)ことで得られる効果は絶大です。自助グループに参加して、スポンサーの役割を引き受けてくれる仲間を探す、またはカウンセラーを頼ってみてはいかがでしょうか。
あなたの内面を包み隠さず仲間に分かち合う勇気が、同じ道を歩もうとする人を助け、勇気を与えることにつながるはずです。
例えばカウンセラーを頼るのであっても、カウンセラーとあなたとの間に上下関係はありません。カウンセラーは、今回偶然にもあなたの話を聴きフィードバックを与える役割を担いますが、フィードバックを与える役割をあなたから与えてもらっていると言えます。カウンセラー自身も、あなたの分かち合いを通じて学び、ひと回りもふた回りも成長することでしょう。
12のステップ6 こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。
12のステップ6は、自我を手放すステップです。真の平安を得たいのであれば、自力を手放しゆだねるというお話をしてきました。一方で他者任せにせず必要な行動は起こす必要があることも述べました。
12のステップ6においては、自分自身がより良く変容することを恐れない。自我(エゴの存在)は変化を嫌い、今のまま何ひとつ変わらないことを望みます。わたしたち人間が変化をおそれるのはエゴの働きであり、自然なことですから、変化をおそれる自分自身に対して厳しくジャッジする必要はありません。
これを理解した上で、より良い自分へと成長するための変化を受け入れるチャレンジを促がすのが、12のステップ6です。あなた自身はもう充分過ぎるほどの努力をしてきたはずです。ここでブレイクタイムをもうけ、神があなたに働きかける余白を用意してみませんか。ブレイクタイムからの、ブレイクスルーを信頼して。今のあなたは充分素晴らしい存在であり、そしてもっともっと、素晴らしく変容する存在です。
12のステップ7 私たちの短所を取り除いて下さいと、謙虚に神に求めた。
アルコール依存症という悪習慣を改善するため、アルコール依存症者の問題から目をつぶって誤魔化す生き方を改善するためには、周囲から学ぶ謙虚さが確かに必要であることでしょう。
自力だけでは解決できないと、すなおに認める謙虚さも必要であることでしょう。
神はあなたの周囲で、あなたと関わり助けようとする皆の内に宿っています。ときには敵と感じる人の内にも、神は今のあなたが学ぶべき課題を用意しているかも知れません。
そして神は、嘘や誤魔化しのない、あなたの純粋さに宿り、あなたを導き続けます。
怒りや苦しみ、悪習慣に支配されそうなとき、呼吸を深くして謙虚さを取り戻しましょう。誰かの内に、自分自身の内に、神が見つかるはずです。
12のステップ8 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
12のステップ8は、ステップ4で作った棚卸表を基に、おこなうワークです。注意事項がありますので下記リンクを参照されながら、焦らず落ち着いて取り組まれてください。
(わたし自身、魂を磨くため絶賛修行中ですから、下記リンク記事の内容には未熟な表現が含まれていますが、この著者も勉強中なのだなとお読みいただけると幸いです)
ここまでの解説において、資料となる小冊子はサラッと確認する程度にとどめ、ほとんどをわたし自身の価値観や言葉でお伝えしてまいりました。
小冊子の12のステップ8には、とても重要だと思える言葉がありましたので、わたしの表現に置き換えながら記します。
「傷つけた人たちに可能な限り、心からの謝罪をしたり、何らかのかたちで埋め合わせをすることは、お相手のご事情をおもんぱかり、ご迷惑をおかけすることはないであろうと確信の持てる場合には大変有用なワークです。僅かではあってもお相手の当時の傷や誤解等を癒すことにつながり、自分自身にとっても過去の清算となり今後の人生が軽やかになることでしょう。
そのために、これまであなたが傷つけてしまった人たちについて出来る限り思い起こし表に書き出してみましょう。
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そして最も重要なのは、あなたがいちばん頻繁に、いちばん深く傷つけたのはあなた自身に対してである……という気づきを得る体験です。
あなたがいちばん許しを請うべきは、あなた自身に対してであるのかも知れません。」
12のステップ9 その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
12のステップ8で書き出した、傷つけた人たちのリストの中から、直接あるいは間接的に謝罪や埋め合わせが可能な人に対しては、実際に行動を起こしてみましょう。あなたが謝罪や埋め合わせをすることによって、傷ついてしまう第三者が居ないかどうかという点には充分な配慮が必要です。
12のステップ10 自分自身の棚卸を続け、間違ったときには直ちにそれを認めた。
12のステップは、ステップ9までを実践し終えることで一応ひとめぐりとなります。けれども終わりではありません。何故なら、わたしたちは小さな過ちや、ときには取り返しがつかないと思ってしまうような過ちを繰り返す存在だからです。もしあなたが完全に悟りを開いている聖人と呼ばれる存在ではないのであれば。
ですから、ご自宅のクローゼットやキッチンの引き出し等と同じように、定期的・あるいはイライラモヤモヤ感情が湧いたときに、くり返し棚卸する必要があります。
ステップ4に戻りましょう。何かを誤魔化し、目をつぶっている事柄がありますか? 自分の心に嘘をついてはいないでしょうか?
12のステップ11 祈りと黙想を通して、「自分なりに理解した」神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
黙想あるいは瞑想って、何だか取っつきにくいです。12のステップにおいての黙想は、小さな自我(エゴの存在)の自分をいっとき手放し、大いなる視点で物事の全体を俯瞰するためにおこなうと良いとされています。
黙想あるいは瞑想の方法は目を閉じて静かにすることだけに限定しません。
ある人にとっては踊ること、ある人にとっては歌をうたうこと、自然を感じながら歩くこと、また丁寧に気持ちを込めてお皿を洗うこと等、日常的な動作を通じても黙想あるいは瞑想体験を得られます。
小さな自分から大いなる視点にフォーカスを切り替えると意図するだけでも、それが成されることでしょう。常日頃から意識的に神なる存在と触れあうことは難しくなく、シンプルです。
わたしの声で録音したラインホールド・二ーバーの祈りは、自助グループで平安の祈りと呼ばれ皆で唱える祈り
「神様、私にお与えください、
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを、
変えられるものは変えていく勇気を、
そして、二つを見分ける賢さを。」
上記のロングバージョンです。
12のステップ12 これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。
さて、ゴールが見えてまいりました。
12のステップについて、依存症問題に苦しんでいるひとりでも多くの仲間に伝えひろめる行動が誰かの役に立ったとき、それは12のステップ実践者の大きな喜びです。12のステップ実践者にとって、人の役に立つ喜びを知る機会であり、愛を実感する機会となるのです。そして、12のステップに取り組み続けることの出来る大きなちからとなるでしょう。
わたしは現在、どの自助グループにも所属しておらず、集会にも参加していません。12のステップについて丸ごと肯定しているかと言えば、少々わたしの価値観とは異なる部分も? けれどもスピリチュアリストとしての視点から、この12のステップを誰にでも活用しやすいよう解説書を作る取り組みを始めてみたいという気持ちが湧いたのは、2018年の終わりごろでした。
自助グループ内での、12のステップ解釈に関しての行き違いを目の当たりにして、曲がりなりにもスピリチュアルに対する学びを独自に深め続けているわたしならではの解釈を提供できるのではないかと感じてきたからです。
メインブログにおける当事者向けの解説はまだ書きかけです。参考資料にと貸していただいたアラノン家族グループ向けの小冊子が、完結させるための大きな助けになりそうです。
小冊子は引用・転載が禁止されているものなので、わたし自身の言葉に置き換える必要が生じ、このおかげで12のステップをより深く自分の価値観に落とし込むことができました。(来週には返却しなければならないものなので、思い立って今朝から一気に書き上げました!)
最後までお読みくださったかた、ありがとうございました。
どなたかおひとりでも、依存症問題を抱えるかたや、生きづらさを抱えるかたの何かヒントになれば、これ程うれしいことはありません。
アルコール依存症を克服したアダルトチルドレンセラピスト|Chicaco