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手の鳴る方へ行けなかった話



差し伸べた手を握れなかったのに
今でも手の鳴る方へ行きたくなる夜がある

でも行かなくてよかったなの朝もある




いっしょにいて傷ついたことはたくさんあって
それは嘘じゃないし弱すぎるわけでもない(と思っている)し
吐きそうなくらいつらい瞬間はいくつもあった

けど

多分同じくらいか、
いやもっと深く深く傷つけていたと思う
胸を張って言えることじゃないけど
傷つけけていた自覚がある
(意図的ではないけどわたしの存在が、
取り巻く環境が、傷になっていた)

逆の立場ならとっくに逃げ出していたと思う
でも自分ならそうするからこそ
なんで傷ついてもつらくても弱音を吐きながらも
わざわざ一緒にいてくれるかわからなかった

当たり前のことかもしれないが
傷をつけられるのもつけるのも耐えられなかった

結局はわたしが逃げだした いつもそうだ




別れの後には失恋ソングで思い返す
とか
歌詞に大共感してわんわん泣く
とか
よく聞くけれど
わたしは自分の気持ちより
もしかして相手はこういう気持ちだったのかって
歌に、詞に、教えてもらっているような感覚になる

_back number 手の鳴る方へ

君の横にずっといたいんだけどな
君はあいつを忘れていない 前はそれでよかったのに
確かに過ごした季節も 思い出の数だって
かなわないけれどそうじゃない ここにいるのは僕だから

君がまだ知らないどこかへ 今連れてゆくから手を取って
想い出なら平気だよ誰もが 新しく素敵な今日の日で
塗りつぶすのさ さあ手を握って
_


何度も手を握るチャンスをくれた
過去から抜け出せないわたしを救おうとしてくれた
でも結局過去を捨てることもできず
新しいを始めるのもできない臆病な私は
手を握れないまま、手を振り切って逃げ出した

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