努力度の低いトレーニングと有酸素運動で走力が向上した話
このnoteで記録したいのはざっくり下記のとおり。
昨年は5000mでのPB更新を目標に、努力度の高いスピード練(レースペース以上)を主軸にトレーニングを組んでいたけれど、今年3月後半から努力度を下げた「有酸素運動」を主軸に変更した。レースペースで走ることはほぼなく、トレーニングの継続性を意識して3ヶ月弱を過ごしたが、結果として、走力向上を体感する機会が増え、効果検証として臨んだ6/9の5000TTでPBを更新した。(16'28→16'18)
上記について実体験と考えを記録するにあたり、まず用語を定義します。ランニングの用語って、同じ言葉でも人によって違う意味で捉えていることが多いけど、以下はあくまで【自分が個人的に使っている】水準を示す言葉です。普段、同じ言葉を違う意味で捉えている場合は読み替えをお願いします。
◯AT…Anaerobic Threshold 無酸素性作業閾値
→有酸素運動と無酸素運動の境。
AT以上の心拍数は無酸素運動。以下公式で算出。
{(220–年齢)–安静時心拍数}×0.75+(安静時心拍数)
※自分の場合
{(220–31)–43}×0.75+(43)=152.5
◯SSR…Steady State Running
→ AT×0.9-0.95の心拍でのランニング(4'05-10/km)
※リディアードはAT×0.7-1.0のランニングを指しますが、よりATに近い心拍数で走る方が有酸素能力の向上に効果的なため、上記心拍域で捉えています。
◯eペース走
→AT×0.8の心拍でのランニング(4'30-5'00/km)
※今回の5000PBのタイムからダニエルズのVDOTで計算するeペースは4'14-4'41/kmなので、それより少し遅いくらい。
◯jog
→AT×0.7の心拍でのランニング(5'00/km〜)
ポイント練の前日や翌日のランニング。
1.トレーニング方法を変更(2021.3〜)
3月17日、UTMF2021の中止連絡を受けてから、今年はベースアップに振り切ることに決めて、トレーニング方法を大きく変更した。具体的な変更前後のトレーニング方法は以下。
■〜2020.12
目標:5000PB更新→フル2'45切りへ移行
トレーニングの内容は、週2回の“努力度の高い”ポイント練が中心。“努力度の高い”とは最大心拍数×0.9が目安。速度は5000レースペースかそれ以上。
〈主な週間スケジュール〉
月曜 オフ
火曜 ミドル〜ロングインターバル(最大心拍×0.9)
水曜 jog(30-40分 5-7km)
木曜 ショートインターバル(最大心拍×0.9)or jog
金曜 jog(30-40分 5-7km)
土曜 eペース走(60-70分 10-12km)
日曜 jog(50-60分 10-12km)
週2回のポイント練で、各メニューでのタイム向上を常に意識した。vo2maxは大きく向上し、1年間で5000mのPBを2分縮めた。(18'24→16'28)
その分、ポイント練の翌日は疲労、足の違和感でAT以下の心拍でのランニングが疎かになり、まとまった時間(90分以上)走る機会はほとんどなかった。
10月のMKディスタンス(5000)でのPB更新後、12月のフルに向けて距離走を始めたものの、そこに至るまでにまとまった時間を走っていなかったので、20km以上の距離走を余裕をもってこなすことができなかった。結果として、勝負レースとして位置づけたフル(beyond)では30km地点でDNFという悔しい結果に。
■2021.1〜2
前回のnoteで記録した故障期間。
walkとbikeでのグラデーション、サーフェスを不整地に変更、走行距離をダニエルズで管理するなどし、2ヶ月かけて後脛骨筋腱炎から復帰。
■2021.3〜
目標:身体のキャパシティ拡大
→目標をだいぶ先(2024年)に設定したので、それに向けて、ボリュームあるトレーニングをいつでも詰めるような身体に変えていく。あわせて、継続的にトレーニング時間を確保できるよう生活を効率化する。
〈主な週間スケジュール〉
月曜 オフ
火曜 中強度のポイント練(最大心拍×0.75-0.9)
筋力トレーニング(20-30分)
水曜 jog(50-60分 10-12km),ws
木曜 eペース走(70-90分 15-20km)
筋力トレーニング(20-30分)
金曜 jog(50-60分 10-12km),ws
土曜 SSR(90分 21km)
日曜 eペース走(120分 25km)
ポイント練は火曜のみ。設定は10kmからハーフまでのペース。ダニエルズのVDOTで言うとTペースか、それより少し遅いくらい(3'30-40/km)。Iペース(3'14/km)以上で走ることはほぼなし。ポイント練で意識したのは以下3つ。
1.翌日も走れるくらいの強度に抑える
2.フォームを崩さず走る
3.総疾走距離を8-10km以上にする
「ボリュームあるトレーニングをいつでも詰めるような身体になる」ことが今年の目標なので、何よりもトレーニングを継続することを意識。
2.有酸素運動を主軸に変更
ポイント練よりもSSRとeペース走の時間を長く取ることを重視した。というのも、UTMF2021の中止が決まったとき、以降のトレーニング方法を考えるにあたり、世に出回ってる既存の情報をもっとインプットする必要があると感じて、「リディアードのランニング・バイブル」(著:アーサー・リディアード 訳:小松美冬)を読んだ。コーチに、自分の長期的な目標と今後のメニューの相談をしたところ、本の内容とコーチのアドバイスがある程度同じ方向性にあると感じて、今の自分にはこれが必要だと判断。俗に言うリディアード式を取り入れることにした。
興味のある方には読んで欲しいし、トレーニングのことをあれこれ考えるのが好きな人にはおすすめしたい。とはいえ自分の周りのシリアスランナーには既知の内容かと思うので詳細は省略。
ここで触れておきたいのは、本の中でリディアードは、有酸素運動、特に最高安定状態(限りなくATに近い心拍)で長い時間走ること(週160km!)の重要性を説いているということ。これを踏まえて、そもそもの1回のランニングの時間を長くすることから始めた。そして、週に1度は必ず90分程度のSSRを入れる、それ以外の日にも70-90分のeペース走を1回は入れるよう意識した。
(河川敷はSSRに最適なコース)
トレーニングの移行期間に怪我をしやすいので、前回の故障での教訓を活かして、漸進性の原則にしっかり従い、前週の走行距離×1.2を上限にして少しづつ走行時間、距離を増やしていった。
〈3-6月のトレーニング変遷〉
◯3月 走行距離 294km
SSRの走行時間 70分
◯4月 走行距離 322km
SSRの走行時間 75-80分
◯5月 走行距離 403km
SSRの走行時間 90分
◯6月 走行距離 -
SSRの走行時間 100分
「月間走行距離にこだわるな」とよく聞くけれど、これは「今月は◯km走るぞ!」と距離を目標にするな、ということだと思う。たしかに走行距離はトレーニングの成果ではないけれど、予定どおりトレーニングが積めているかを確認する指標としては大事な値だと考える。もちろん何を目的に走るのかを明確にして、その目的にあわせた心拍やペースを意識して走るのが前提だけれど。
なので、トレーニングの目安として週間走行距離を意識して取り組むようにした。3-4月は週間75kmを目標、5月からは90-100kmを目標にしている。来年のUTMFを考えると、今年中には良いペースで週に100km走ってもびくともしない身体にしておきたい。
■変更点のまとめ
・ポイント練は強度を落とし走行距離を増やす
・継続的に走ることを大事にする
・SSR、eペース走を必ず週1回以上入れる
・週間走行距離を意識する
3.トレーニング継続のための朝ラン
仕事、家事育児、家族との時間の合間で、まとまったトレーニングを継続するのはなかなか難しい。なので自分のトレーニングは常に朝ラン。できるだけ家族との時間を大事にしたいので夜は基本走らない。朝は3:50に起きて、4:00-6:00の間で走る。平日も土日もこれはほとんど変わらない。
朝ランのメリットは、外的要因に左右されずに常に時間を確保できること。無補給で走るので脂質代謝にも効果があるかもしれない。人や車がほとんどいないので、気兼ねなく走れるのも気持ちが良い。
(朝焼けのトラック。日の出が早くなった。)
それと、寝起きってその日の身体の調子を感じやすいと思う。胃はもたれてないか、身体は重くないか、脚は張ってないか、頭はすっきりしているか、喉は痛くないか、心拍数は高くないか。身体の調子を気にするようになり、少し不調に敏感になったような気がする。不調につながる行動や、不調につながる食べもの、飲みものについて、なんとなくだけどコントロールできるようになってきたような気もする。結果として、以前よりも健康的な生活習慣、食生活を送るようになっていて、そのおかげでリカバリーがスムーズにできているのかなと感じている。
4.効果測定として挑んだ5000TT
前述のとおり、この3ヶ月弱、有酸素運度をメインにして以前のように努力度の高いスピード練をせずに過ごした。
感覚的な変化として、週1回のポイント練では、以前なら辛くなってくる距離/本数でも、フォームを崩さず余裕を持って走り切れる(むしろビルドアップする)ようになり、持久力とランエコが向上しているかなと感じる機会が増えてきた。
実際に、この感覚のずれを数字で確認したいと思っていたところ、ちょうど所属チームで5000TTを行う機会があり参加した。レースペースでのスピード練を全くしてないので、正直良い記録は期待できないと予想していたけれど、結果として、16:18とPBを10秒更新することができた。
当日は、PBが自分より30秒近く速い方に3000mまで引いていただいた。そのおかげもあり、3000m経過時点でかなり余裕があったので、そこから抜け出し、最後までビルドアップしてゴール。
(Sさんありがとうございます)
(ラスト200mは2'30/kmでスパート)
ゴール直後はご覧のとおり倒れたものの(TT後は倒れたくなる)、5000TTとしては高い余裕度を持って走り終えた。3000-4000区間ってすごく辛いのに、まだまだ脚が回る感覚があった。
当日は最高気温30℃、風もあってコンディションとしては抜群に良くはなかったと思うので、状況によってはもう少し更新できるかな?と思う。そして、TTの翌朝もトレーニングを行うことができた。このあたりでも少し成長を感じる。
5000に関して言えば、このまま有酸素能力を開発し続けて、ベースを大きく大きくしていった結果、余裕のある速度が上がっていき、結果として15分台が出たらいいな〜と思う。
5.今後
今年はベースアップなので、今の方法を変えずに走り続けたい。とはいえ、収穫逓減の法則や故障のリスクを考えながら、色んなメニューをやっていく必要がありそう。(不勉強)
VK入れたり、短いレース入れたり、家族と一緒に旅行がてら行けそうなショートレースを出ながら、年内にフルマラソンをしっかり走り切りたい。
当面は8/1の富士登山駅伝。チーム内のメンバー選考を通ることができればの話だけど、気持ち的にはここにかけてきたので、走れることになったら必死で頑張りたい。
とはいえ、今年はここまで平地でベースアップしかしていないので、6月に入ってからは、垂直方向のトレーニングを始めた。家の周りの坂をつないで90分でだいたい15km500mD+のラン。幸いなことに、自分の早起きに付き合ってくれる方がいて、早朝から楽しくゼェハァしている。今後自分にどんな変化をもたらすか楽しみ。
このまま怪我なく積み上げていけたら来年にはどんな身体になるか、自分に期待して日々淡々と走ります。
stay tuned.
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