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サッカーにおける選手の得点への貢献度を可視化した指標「ポゼッションバリュー(PV)」とは何か

※この記事は、Stats Performオウンドメディア「The Analyst」から一部編集の上、転載した記事です


ポゼッションバリュー(PV)とは何か

Stat Performのポゼッションバリュー(PV)フレームワークは、ボールポゼッションしているチームが「次の10秒以内に得点する確率」を測定する機械学習モデルを用いた指標です。ポゼッションバリューによって、ピッチ上のすべてのアクションをプラス、マイナスで数値で評価し、個々の選手がチームにとってどれだけ効果的な働きをしたかを見ることができます。

どういうことか

例えば、ケビン・デ・ブルイネが、ポゼッションバリュー 1% (得点 0.01 の貢献) のハーフウェイライン付近でボールを持っているとします(PV start = 0.01)。デ・ブルイネがボールを点線で示されたライン上に運び、ボックス内のラヒーム・スターリングにパスを出すと、ポゼッションバリューは13%(PV end = 0.13)となり、ケビン・デ・ブルイネはチームが得点する可能性を12%増加させたことになります。これはポゼッションの付加価値(PV+)と呼ばれるもので、スターリングが次にどのようなプレーを行うかに関係なく、ケビン・デ・ブルイネの貢献が評価されます。マンチェスター・シティは、次の10秒以内に得点する確率が12%高くなった(PV+ = 0.12)と表現します。

このようにして、これまでゴールやアシストといった従来の指標に基づく評価ではでは過小評価されていたかもしれない選手を再評価することができるようになります。個々の選手の貢献度をすべて見て、その選手のポジティブなプレーがネガティブなプレーを上回っているかどうかを評価することができます。選手のチームへの正味(ネット)の貢献度を計算するための基本的な構成要素は:

  • プログレッシブアクション(ポジティブな PV)。

  • プレー自体は成功したが、得点のチャンスを減少させたアクション(ネガティブな PV)。

  • ポゼッションロスト(失敗したアクション/プレーに与えられる、通常はネガティブな PV)。

  • ポゼッションロストが更に相手チームのチャンスとなった場合(相手チームのポゼッションの危険度に比例して、ネガティブな PV)。


リヴァプールの選手のネットポゼッションバリュー(net PV)の例

ポジティブ、ネガティブなポゼッションバリュー(PV)、更にその差分の net PV がどのように見えるかを、昨シーズンのリバプールを例に見てみましょう。

シーズン1,000分以上プレーした選手のみ抽出
net PV (ポジティブ PV (青) とネガティブ PV (赤) の差分) は90分あたりの net PV として表示
つまり、90分あたりで何得点分の貢献をしたか(net PV)を選手毎に表している

チームの得点の確立を高める鍵となるリヴァプールの選手たちが、サイドエリアでプレーする選手達であることは驚くべきことではありません。フォワードのモハメド・サラーとサディオ・マネは、リヴァプールにとって最大のnet PV 貢献度を示しています。サイドバックのトレント・アレクサンダー=アーノルドとアンドリュー・ロバートソンも彼らに近い貢献度を示しています。


実際のプレー/アクションを例にしたポゼッションバリュー(PV)

例えば、以下のアーセナル戦でのアンドリュー・ロバートソンのクロスを見てみましょう。

ロバートソンが危険度はそれほど高くない浅めの位置からクロスを上げる(PV Start = 0.003)
クロスはチームメイトであるフィルミーノの頭上を越える
その後ポゼッションは失ったものの、(相手チーム選手のクリアにより)ボールが落下した地点は、リヴァプールが次の10秒以内に得点する可能性がより高まるポジションだった(PV End = 0.013%)。これにより、ロバートソンのこのプレーには PV+ = 0.01 として得点の可能性を上げたこととして評価される(PV End 0.013 - PV Start 0.003 = PV+ 0.01)

アンドリュー・ロバートソンは危険の少ない浅めの位置からクロスを上げ(PV start = 0.003)、惜しくも味方のロベルト・フィルミーノの頭上を越えて仲間の選手に渡らなかった。このクロスはキーラン・ティアニーによって中央のエリアにクリアされたが、クリアボールの落下地点はリバプールはその後10秒以内に得点する可能性が高くなる地点だった(PV end = 0.013)ので、ロバートソンはポゼッションバリューの評価によってポジティブと評価された(PV+ = 0.01 )。アンドリュー・ロバートソンのクロスは、チームメイトに届かなかったにもかかわらず、リヴァプールが次の10秒以内に得点する確率を1%(0.01)増加させたのです。


プレーイベントの種類や試合ごとのプレーヤーの貢献度

このフレームワークを使用すると、プレーイベントの種類や試合ごとにプレーヤーの貢献度を分類することもできます。9月28日のアーセナル戦でのリヴァプールの選手のパフォーマンスを見ると、ピッチ上で誰がキープレーヤーであったかがわかります。

net PV が高い選手を降順に並べて表示

リヴァプールのチームの試合での優勢だった状況を考えると、先発選手のほぼ全員がこのゲームで全体的にプラスの影響を与えたことは驚くことではありません。ここで注目すべきは、フィルジル・ファン・ダイクがこの試合で3番目に高いポゼッションバリュー(0.36PV+)をチームに与えたことです。プレス回避のための右サイドのトレント・アレクサンダー・アーノルドとモハメド・サラーへのロングボールがチームへの貢献度アップに非常に重要でした。試合中のファン・ダイクのアクションの合計が 0.36 のネットPV+につながったことがわかる例ですが、これが意味するところは、リヴァプールが試合を通して(ファン・ダイクがこれらのアクションをしなかった場合と比較して)さらに0.36ゴールを決める確率を上げたことを示しています。

ここで重要なのは、チームが得点する確率を上げることは必ずしもすべての選手の意図したことではないこと、そして net PV の順位が低いことが選手のパフォーマンスの質を直接示すとは限らないということです。重要なのは、他の指標と同様、測定しようとする文脈の中でアウトプットを評価することです。

最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。



■オリジナル記事タイトル:What Is Possession Value (PV)?
■オリジナル記事へのリンク:https://theanalyst.com/eu/2021/03/what-is-possession-value/
■オリジナル記事掲載日:2021年3月24日
■オリジナル記事作成者:JONNY WHITMORE