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JICA海外協力隊・オアハカの産業開発に挑む② オアハカの職人とPuert@インキュベーションプログラムに挑戦
こんにちは、JICA海外協力隊としてメキシコ・オアハカ州で活動をしている井戸です。
前回まで私の活動先であるSEDECOやEmetrica Centralプロジェクトについてご紹介しました。
今回は前回に引き続き、協力隊としての私の活動を交えながらPuert@で何をしようとしているのかをお話ししたいと思います!
Emetrica CentralとPuert@のコラボ
以前もお話ししましたが、私の協力隊での活動は主に以下の2つ。
①Emetrica Centralのシステムを設計し、エンジニアと共に開発する
②事業者へ向けた支援メニューを作る
Emetrica Central では、データ収集や分析に関しては比較的スムーズに行えるようになってきたため、今は集めたデータを活用し、事業者に対して効率的に支援を行うための取り組みを検討しています。
その活動がまさに②になります。
Emetrica Centralで将来的に考えているのは、Udemyやスタディサプリのような動画教育を受けられるサイトを作成して、各レベルの事業者が自身に適した講座を受けたり、対象のイベントの招待を受けられる状況を作ることです。
そして、このために必要になるのがどんな講座やイベントがベストなのかを考えることです。
ここで、Puert@と共に活動を行えないかとなったわけです。
というのも、Puert@の活動の一つには「メキシコのスタートアップを育てる」というものがあります。
Puert@では当初からメキシコの企業に対して、インキュベーションプログラムを提供し新たなスタートアップを育てていくことを考えていました。
そして、オアハカには皆さんがイメージするような新しい技術を使ったり、画期的なサービスを提供するスタートアップはありません。まさに、スタートアップの育成を必要としていたため、繋げない理由はない!となったわけです。
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そんなこんなで、Emetrica CentralとPuert@は協力しながらオアハカ内の事業者に対してインキュベーションプログラムを提供することになりました。
オアハカでのインキュベーションプログラム何やろう?
オアハカでインキュベーションプログラムをやろう!
となったものの、そもそもインキュベーションプログラムって何?
ChatGPTに聞いてみると、
「インキュベーションプログラムは、新規事業の創出と成長を支援するプログラムです。 大学、研究機関、自治体、企業、投資家などが主体となって運営され、起業家やスタートアップ企業に様々な支援を提供します。」
やっぱり何をするかわからない。具体的な事例を調べても、主体によってやっていることは様々。
ということは、事業者のためになることなら何でもやるということ。
そうなると、まずは対象を決めないといけない。
どうせなら、オアハカに一番インパクトがありそうな事業者がいいなということで、さっそくEmetrica Centralで集めたデータを見てみることに。
すると、
・レベル2実験フェーズ:商品やサービスを形にできたが、ビジネスとして試行錯誤中
・繊維産業に関わる職人
の比率が高いことがわかりました。
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この人たちを対象に、インキュベーションプログラムの成功事例を作れたら、かなり多くの人に効果がある。
とはいえ、繊維産業の職人たち。
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なんだか、スタートアップから一番遠そう…。
だけど、面白そうだからいっか!
ということで、まずは”繊維産業の職人”を対象にインキュベーションプログラムを考えていくことにしました。
同僚からのたった一つのお願い
「コミュニティのアイデンティティとなる文化や技術を守りながら、ビジネスの成長を促してほしい。」
これはインキュベーションプログラムを考えていく中で、オアハカの同僚からお願いされたことです。
これまで村を訪れたり、オアハカの人と話していて感じていたことが、この言葉によく現れているなと思いました。
やっぱりオアハカはコミュニティがあり共助で成り立つ社会だし、自分たちのアイデンティティに誇りを持って生きている。
だからこそ、この言葉だけは忘れずにインキュベーションプログラムを考えていなきゃいけない。
そのため、オアハカでのインキュベーションプログラムでは以下の2つは大切にしていきたいなと思っています。
①コミュニティという存在
日本だと自治体や民間企業が取り組むインフラ管理や祭りの運営などをオアハカの約7割の自治体では住民が協力して行っています。
これはオアハカに先住民が多く存在することに関係していて、先住民たちは自らの土地を自分たちで守り運営していきたいという思いが強いためです。
代々力を持つ家族が中心に立ち、住民たちが協力し合いコミュニティが機能することで、人々の生活が維持されています。
そのため、一部のコミュニティではビジネスにより大きな収益を得る人が出て格差が生まれ、コミュニティの均衡が崩れることを不安に考える人々がいます。
そのため、彼らにとって一番良い形を一緒に考える活動が必須だと思っています。
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②アイデンティティを守る
オアハカの中心地にはマクドナルドもスターバックスもありません。
大きな雇用を産むであろうコカコーラの工場の参入も住民の反対運動で実現されなかったそうです。
オアハカの人々は自分たちの土地や文化に誇りを持っていて、それを犯す可能性のある存在を受け入れません。
また、オアハカではお金を持っている人が買うものは海外ブランドのバックではなく、オアハカの伝統服のオーダーメイド品。
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それぐらい、自らのアイデンティティを大切にするのがオアハカの人たちなんだと思います。
だからこそ、彼らのアイデンティティの軸となる文化や技術は大切にしなくてはいけない。
ビジネスの効率性やマーケティング視点での考えを取り入れるとき、きっとその壁にぶち当たるんだと思います。その時は、何が大切なのか見誤らないようにしたいです。
こうやって考えると難しいにも思えちゃいますが、
オアハカの人たちのように力を抜いて、たくさん会話し楽しみながらプロジェクトを進めていきたいと思います!
また、村でのヒアリングの様子やプログラムの内容について随時発信していきますので楽しみにしていてください。