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フリーランス?労働者?


フリーランスのメリット

 近年、フリーランスとして働く人が増えており、特にITエンジニア、デザイナー、クリエイターなどの職種で顕著です。また、このような職種だけではなく、営業職や経理などのバックオフィスでもフリーランスを採用する企業が増えています。特に、スタートアップでは柔軟な働き方が企業、労働者のいずれにもメリットがあることから、フリーランスに業務委託といった形で仕事を依頼したいという相談を数多く受けています。

 フリーランスとの業務委託契約である場合、雇用契約によって働いてもらうことに比べて、労働法の適用がないことから柔軟な働き方としやすいといったメリットのほか、企業が社会保険に加入する義務がないといった費用面でのメリットもあります。他方、フリーランス側からしても、働きたい時間・時期に働きたい方法で働けるといった自由度が高く、また兼職もしやすいといったメリットがあります。そのため、フリーランスとして働くこと、採用することが注目を浴びています。

実際には労働者だったら

 しかし、フリーランスと言いながら、その実態が労働者(雇用契約)であるという事例も少なくありません。「業務委託契約」といったタイトルの契約を結んでいても、実際には労働者であると判断されると、各種労働法が適用されることになりますので、次のような問題が生じます。

・業務委託料が最低賃金を下回っている場合、最低賃金を支払う必要がある
・法定労働時間を超過して働いていた場合、割増賃金(残業代)の支払いが必要になる
・社会保険への加入が必要になり保険料負担が必要になる
・労働組合を結成し、団体交渉を申し入れられた場合には応じる必要がある

 したがって、本当にフリーランスであり、労働者ではないと言えるのか、しっかりと確認・運用することが重要です。

フリーランスか、労働者かの判断基準

 フリーランスであるか、労働者であるかの判断は、締結している契約書のタイトルからは判断できません。したがって、契約書は「業務委託契約」となっており、雇用契約書や労働契約書となっていなくても、その実態から労働者である(雇用契約である)と判断されることがあります。

 そのため、フリーランスであるか、労働者であるかの判断基準が問題となります。この判断は様々な要素を総合的に判断することになりますが、その中心は次の2点です。

①指揮命令下で労働していたといえるか
②労務に対する報酬を受けていたといえるか

 「①指揮命令下で労働していたといえるか」の判断のためには、次のような要素が考慮されます。

 (ⅰ)仕事の依頼や業務指示に対して拒否することができないか
 (ⅱ)業務の内容や進め方に対する指揮命令があるか
 (ⅲ)業務遂行の場所や時間が拘束されているか
 (ⅳ)本人に代わって他の者が業務を代替できないものか

 また、「②労務に対する報酬を受けていたといえるか」については、以下のような要素が考慮されます。

 (ⅴ)報酬が労務提供時間によって算定され、その結果による増減が小さいか

 そのほかにも、

(ⅵ)業務に使用する道具や設備を発注者が用意しているか
(ⅶ)報酬の額が一般従業員と変わらないものであるか
(ⅷ)他の業務に従事することが不可能または困難であるか
(ix)報酬から給与所得として源泉徴収をしているか

といった要素も考慮されることがあります。

 以上のような各要素を総合的に判断し、フリーランスであるか、それとも労働者(雇用契約)であるかを判断することになります。もっとも、「上記の各要素のうち、Yesが何個以上であれば労働者であり、そうでなければフリーランスである」といった明確な基準があるものではなく、それぞれの要素の程度も踏まえて、総合的に判断することになります。

 このように見ていくと、フリーランスであるか、労働者であるかの判断は容易ではないことがお分かりではないかと思います。もっとも、ごく簡単に言えば、フリーランスには「自由」があるといえ、反対に労働者には「自由」がないということになります。

契約書だけではなく運用にも注意

 フリーランスに業務を依頼する場合には、上記の各要素、端的に言えば「自由」があるかどうかという観点に注意をしなければなりません。これを怠ると、実際には労働者として各種労働法が適用され、後から思いもよらぬ費用の負担が生じたり、トラブルになったりすることがあります。

 このような事態を防ぐためには、フリーランスとの間で締結する契約書の各条項に注意をすることが重要です。雇用契約を締結している一般の従業員と同じような内容の契約書になっていないかという点だけでなく、業務の諾否の自由があるか、場所的・時間的拘束がどの程度であるかなどについても、契約書の規定をしっかりとチェックすることが必要です。

 これに加えて重要なことは、契約書の規定だけではなく、実際の運用がどのようになっているかという点です。契約書上は自由があるように規定されていても、実際には断れない状況であったり、口頭で指揮命令を行っていたりというような場合は、その実態からフリーランスではなく労働者であると判断されることになります。この点は、特に現場の上長が指揮命令をしてしまっているという例も散見されますので、フリーランスであり労働者ではないという認識をしっかりと持ってもらうようにすることも必要です。

 そのほか、フリーランスについては、フリーランス法への対応を含めて注意すべき点があります。このような対応をうっかり忘れてしまうと、大きな問題となってしまうことがありますので、注意が必要です。

 フリーランス法については、こちらの記事をご覧ください。また、フリーランスへの業務の依頼に関する契約書や仕組みづくりのご相談は、下記までご連絡ください。

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