ごみちゃ

ハヤカワ五味のアパレル立ち上げのトリセツ | #SUF by リカックス

この書き起こしは #HiveShibuya で行われたイベントの書き起こしを再編集し、記事化したものです。

-前提知識

 『ハヤカワ五味とは?』

ハヤカワ五味は偽名なんです(笑)「ハヤカワ」はもともと私が漫画を描いてた時のペンネームでした。五味は2chで「ゴミを量産するな!」って叩かれたんで。ダストのゴミから来てます。
「ハヤカワ」がカタカナで「五味」が漢字の理由は、ユニクロがカタカナと英語のロゴの2つで展開していたからなんです。海外の人にはカタカナがウケると聞いて、自分の名前にもカタカナと漢字両方入れました(笑)「起業しろ」の「しろ」をカタカナにしたらハマるかもしれないです。

株式会社ウツワは3年半やっていて、今年で4期目です。ブランド自体は5年目に入ったところです。もともと自己資金でやってて、高校時代から物を作って販売しているので、物売り的なキャリアは7〜8年あります。最初はタイツ作って、その売り上げの300〜400万円で今のブランド立ち上げました。


『ハヤカワさんがアパレルを選んだ理由は?』

大前提として、今から起業するなら私はアパレルを選ばないです。100入れても、せいぜい300しか戻ってこないんですよね。ITの場合だったら、100入れたら1,000や20,000に伸びる可能性が大きい。その意味でいうと、工数やリソースの割に戻りは悪いんです。ただ、魅力としては継続性が高いことです。継続することに価値があると思っています。合理的かどうか聞かれたら、非合理的です。それでも私がアパレルを選んだのは、「衣食住」の一つであるアパレルは、世の中に対して与えるインパクトって大きいなと思ったからです。人の生活や環境を変える可能性を秘めている。

例えば、スカートの普及によって、女性の地位が上がり、社会の価値が変わったことから分かるように、衣服は社会との繋がりが強いものです。私自身中学時代にお金がなくて....でも服が欲しかったので、競取りをやっていたことがありました。当時某サイトで、オークションで仕入れたものを転売して儲けて.....その儲けで、服を買って、また売るっていうのを繰り返していました。特に、ロリータ服って結構株に近いんですよ。再販がある・なしで値段が随分変動するんです。だから、同じ商品でもどうしたら高値で売れるか、どうしたら自分の負担が少ないか、考えていました。今でも、アパレルやブランドの仕組みを知りたいのであれば、実際に転売してみるといいかもしれません。ただ、気持ちいいわけではないですよね。自社ブランドにすれば、楽しくできます


『バズったり、ヒットしたりするためにやっているハヤカワさんならではの手法とは?』

実は新卒の代なんですけど、一応私は広告を専攻していたので、広告代理店に入ろうとしていました。

私なりの考えとしては、バズの根本的な原理って「人に話したいかどうか」だと思います。リツイートするのって、自分のタイムラインという机に乗せた上で議論をするとこから始まっていると考えていますね。政治や社会問題がバズりやすいのは、問題に対して自分の意見があるからなんです。炎上も一緒で、ツッコミどころが多かったり、否定したくなるからこそバズる。この理論で、うちのブランドがバズった理由を解体することができて......うちは最初「胸が小さい人向け」のブランドとして打ち出していました。これを世に出した時に「私Dカップだから入んない〜」っていう「自分のカップ数を自慢したい人」が反応してくれました。実は、皮肉なんですが、胸が大きい人のおかげで流行ったんです。あとは女性だけじゃなくて「俺は小さい胸の方が好きだけどね」っていう男性たちの反応もありました。身体的なことって意見が出やすいんですよね。

特に身長とか、胸のサイズとか。同じ理論で展開していくと、例えば「足が小さ人向けのブランド」も流行りやすいと思っています。「私、足小さいから合う〜」とか「大きいから可愛いのない〜」とかも同じ理論でバズりやすいのかな〜って感じますね。私のブランドは意図してやったわけではないですが、そういう手法に結果としてなりました。バズらせたいのであれば、議論が起きるような題材を投げかけるのがいい。人がリツイートして、自分の意見を言いやすいような内容のものを提供してあげるのは、バズる法則の一つかなと思います。

 **『ハヤカワさん自身が行っているTwitter運用のコツは?(パーソナルな部分での)』

炎上って、基本的に炎上させている人に理解できない内容を投げつけた時に起こると思っています。例えば「これくらいわかんないの?」って言われたらイラっとしますよね。わかんないことを真面目に言われると、バカにされるって感じるんです。理解できないことを投げつけた瞬間に、自分が理解できないって状況に向き合わなきゃいけなくなるので、「あ!こいつはバカにしてる」って勘違いが生まれやすい。だから私は、理解できないことは絶対に発信しないように意識してます。「キュ〜トでクレバ〜」って肩書でやってるんですけど、周りの人からは「ただ賢いのではなく、専門用語など難しい言葉を使ってないのでわかりやすい」と評価をもらうことがあります。噛み砕いて伝える努力が好感度に繋がっているのかなと。だから炎上しないんです。

あと、誰かの意見を否定しないこと。否定しなくて理解できないことを発言しない限り炎上しないと思うので、そこは守るようにしてます。それに加えて意識しているのは、フォロワーの質をあげることです。やばい人はだいたいブロックしてますよ(笑)よくわかんないクソリプがつくと、ミュートにするか、ど正論をぶつけて撃退するかしてます。クソリプって私と他の人の会話に入ってきたりするので、周りに迷惑がかかるんですよね。ただ、「クソリプするとキレるタイプっぽいな」というブランディングにしているので、今はあんまり来ないですね。必然的にリプライも他の人より圧倒的に少ないです。か、ミュートにしてるから見えてないのか。

あとは主語を大きくしすぎないこと。女性の場合は主語を「男って....」とか「社会って.....」しないほうがいいですね。この3つを守れば、基本的に好感度高く思われます。


 『キャッチフレーズの発想方法は?(子供服を作っている方からの質問)』

キャッチコピーはめちゃくちゃ大事です。一概にメソッドはないけれど、簡単に言うのであれば「一本取られたな」って相手に思わせること。そういう時に人って心が動くんですよね。ブランドの哲学をいかに洗練して一言まで落とし込めるかが大事なんです。例えば、子供服の場合でも、実際誰かしらに響く言葉を作れたら強い。私も実は子供服を作ろうとしてた時があって(笑)ネタバラシをすると『肌育』というコンセプトで考えてました。今までなかった「肌を育てる」っていう価値を「教育」というテーマに乗っけて提案しているので、全く新しいもの考える必要はないんです。

今、世の中が気になっていることや課題だと思っていることを、自社の強みと掛け合わせてみると、意外とキャッチコピーって作りやすいのかなと思います。あとは、広告のキャッチコピー年鑑みるのもオススメです。場合によっては、コピーライターに頼んでもいいのかも。私はコピーを読むのが好きなんですが「テオ[THEO]」のキャッチコピーは秀逸です。(「投資は、ロボが。人生は、あなたが。」)投資ってがめついイメージだけど、お金に関することはロボットに任せるという新しい価値提供をしている。発見がありますよね。自分の今やっていることを一言に凝縮して、いろんなコピーを参考に微調整して行くのがいいのかもしれません。


 『在庫ロスに対する考え方は?処分や海外に回す方法もあるけれど、どう考えてるか?』

そもそも私の会社では、売れない商品を作らないという前提があります。基本的には消化率100%です。saleなどで落としているので廃棄は出ないようにやっています。ただ、最初の頃はどうしてもロスが出てきてしまいますよね。saleやらで値下げした後、いかに適切な価格設定ができるかが重要。今後、ロス在庫をもつブランドは増えて行くと思っています。だから、そういうブランドが集まって、サンプルセールなど大企業がやっていることを、個人ブランド単位とかでできたらいいのかな?? 2次流通とかを考えているのであれば、AmazonとかFBA(フルフィルメント)でそこにものを置きっぱなしでも売れる仕組みを使ってもいいのかもしれません。ぶっちゃけ、管理の人とか含めても手数料が20-30%くらいなので、そこに寝かせて置いて在庫を無くしていく方法もありですね。ただ、基本的には、仕入れ量と価格設定を調整していくことが一番大切だと思っています。


-プライシングについて  

 『saleをやることで生まれる機会損失やブランド価値の低下についてどう考えているか?また値下げ率はどうやって決めているか?』

ユーザー体験から考えたことなんですが、saleをやってもブランド価値が下がらないパターンもあります。saleで感じる「明らかな売れ残り感」を体感することで「やっぱあれ売れなかったよね~」という感覚が生まれ、sale商品以外を買っていたお客様からすると、逆にそれが誇りになっていたりするんです。だからsale自体が、ブランド価値を落とすことにはつながらないと思います。さらに、saleはsaleで機会だと考えて、今は自社のブランド買えないけど今後買ってくれるかもしれないお客様を育てるという視点に立つことも大事ですね、また、福袋にまわす方法もありです。福袋だと基本的に中身は見えないので、すでに買ってる人からしても割と納得感があるし、そもそもお客様が選べないので、「選んで買った!」っていう尊厳がそこには存在していません。福袋を売るときにクーポンを配布して、その後どの程度通常の販売につながったか計算して、それを一つの新規顧客獲得の指標とすることもできますし。

saleで重要なことは、アフターフォロー。sale自体の解釈として新規顧客を育てるための機会と捉えるのが良いと思う。


-店舗経営について 

『実店舗とECはそれぞれメリットやデメリットがあるが、どう考えてるか? (アクセサリーのセレクトショップでの起業を考えている方からの質問)』

そもそも店舗は割が悪いんです。ただ、自社の経験からすると、通販で買う方と実店舗で買う方の顧客層が違います。化粧品だったら、1回目店舗で買って、2回目ネットで買うことってありますよね。服も、ユニクロだけはオンラインで買うとか。結局大切なのは、どの体験をお客様にして欲しいかを考えることです。1回、狙ってる場所があるのであれば、そこに1時間くらい立って何人通りすぎて、何人お店に入ったかを計算して、1年間だったらどのくらいの通りすがりのお客様が期待できるのかを計算してみるといいですよ。特に、アクセサリーって単価が低い分、通りすがり客は多いと思うんです。なんで、場合によってはそれだけで全然利益が立つ可能性がある。オンラインは基本的には検索やSNSでから見つけて来てくれる場合が多いし、自分の展開したいブランドのコンセプトや哲学が、どちらの形態に適しているのか考えてみるのがいいのかな。

実店舗の方がコンセプトが伝えやすいっていってたけど、ECにももってくることができると私は思っています。例えばブログやメディア的な通販にするとか。
やはり、どういう体験をお客様にして欲しいのかを一番に考えるべきです。例えば「女性のプレゼントをかう男性客」がターゲットだったらECの方が良いだろうし。

実店舗出すときに、何客通りすがりがいて、何客購買につながって、名指しで来る人が何人くらいいるか観察することは重要です。客単価での売り上げが計算できますよね。


『大型店よりも小型店の方が有利になるポイントは?』

今、商業施設が増えてきてるんです。渋谷だと、2016〜2021年の間に、7店舗くらいできるらしくて。てなると、そもそも床が増えますよね。ハイブランドは同じ地区に何個もだすことはリスキーなので避けてくるはずで、床は余ると思うんです。最近マルイとかパルコとか、ルミネとか、どこもポップアップスペースを設けています。理由は出店するテナントがいないから。ポップアップスペースブームです。今後もっと増えていくにあたって、1店舗東京に持つのと、日本全国にポップアップ10箇所くらいにだすのだとかかるコストはほぼ同じになります。いろんなところにポップアップを出せるのは小売店のメリットで、今後はそういう戦い方も面白いのかなと思います。

実店舗出してる身からいうと、実店舗にくる顧客とポップアップスペースにくる顧客の層は若干違います。実店舗据え置き型にくる層はより広い。私の見解は、ポップアップスペースをより乱立することができること、個人ブランドで協業して一つのお店を持つ、またはポップアップをだすことが挙げられます。個人的には、協業はもうちょっと流行ってほしいです(笑)


-組織作り

『チームの作り方は?ジェネラル?スペシャライズ?』

最初の2年は自分一人で、お手伝いの方が一人いました。だから、今私は全ての業務をすることができます。今現在は、私がPRや最後の1ミリ(お客様と接点やSNSでの見せ方など)、そして経営を担当しています。デザイナーが2人いて、生産管理までやってます。うちの経理が配送も管理しているので、在庫管理も若干任せています。プラス配送のバイトの子、店頭の子、さらに店頭の中に副店長がいて、私は店長をしています。経理や税理など外に出せるものは、なるべく外に出すようにしていますね。ただ少ない人数でやってく時に、責任範囲をはっきりしておかないと結構なーなーになりやすい。どこまで決定権を持ってて、誰に責任があるのかは明確にするように伝えています。

-その他

『ハヤカワさんの哲学的な面と、ビジネス的な面のバランス感覚は?』

根本的に哲学感が強い経営をしてますね。哲学感があるからこそ、非合理的な選択ができる。だから、店舗出すのって現段階だと、合理半分・非合理半分だと思ってるんです。でもどの決断をしたのは、ハヤカワ五味としてこのタイミングで店を出すのはめちゃオイシイ!という哲学やストーリーテラー的な目線があったからです。販売とデザイン、合理と非合理、つまり実技と哲学の割合は5:5というバランスでやってます。というのも、もともと私はアーティストになりたかったんです。

ただ、私の得意なとこは合理的なことを扱うことでした。自分のスタンスは非合理100%なんですが、得意なのはより合理的な計算だったりどっちがベターかを思考する方なので、その結果、両方大切だということに気づきました。うまくバランスをとるためには、どういう価値を提供したいかや自分がどうなりたいかを考えるのが大前提としてあって、自分がどこまで合理的な考えで突き通せるか、非合理の要素を入れ混むかのパーセンテージは持っておいたほうがいいのかなと思います。ビジネス100%だったら、非合理なんかいらないんですけど、非合理なこと繰り返すことによってブランドができたり、非合理が合理的なものへと変わる可能性もある。自分の中で、どちらかに偏りすぎないようにすることは意識してます。


『ハヤカワ五味さんの2018年やりたいことは?』

うちの服を着てるから体験できること」を創出することです。最近は、勉強会や豪華客船を見て回れるイベントなどを予定しています。非現実的なかもしれないんですけど、顧客単価をあげるためには、お客様自身の収入そのものをあげることがいいのかなと思いました。収入が上がれば顧客単価も上がるという謎理論で考えていて、お客様のリテラシーをあげることが、ここ一年の目標です。

 『新商品を開発する上で意識しているところは?』

基本的には売れる商品を作る。売れるかどうかわからないものは、なるべく小さい規模感で出して、うまく行かなかったら、なかったことにする方法がオススメです。私結構ツイ消しする方なんですよ(笑)5分くらいで動きが悪いツイートは消去します。社内で「こういうの良くない?」ってしれっと言ってみて、反応がよかったらとりあえず進めて、ツイッターにあげます。初速の反応が悪かったら、なかったことにしますね(笑)意外と誰も気づかないので、それを細かく繰り返しています。反応いいやつに、レバレッジかけていくのが一番やりやすいのかなと。


 『ハヤカワさんが高校生なら何をするか?』

何をするか次第だけど、私の場合はもうちょっと本を読んでおけばよかったかな。あと自分が小売に進むんだとしたら、やっぱりオークション転売で一稼ぎしてたと思います。メルカリでいかにビジネスを起こすかを考えてと。バイトよりも絶対稼げるので。高校生時代は自分としては黒歴史なんで、もうちょっと学校行事を楽しんでおけばよかったなとも思いました。

もっと知りたい人はYouTubeまで!


** ハヤカワ五味 / 稲勝栞 (22歳)**1995生まれの22歳。東京出身、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。課題解決型アパレルブランドを運営する株式会社ウツワ代表取締役社長。 高校1年生の頃からアクセサリー類の製作を始め、プリントタイツ類のデザイン、販売を受験の傍ら行う。大学入学直後にワンピース等の《GOMI HAYAKAWA》、2014年8月には妹ブランドにあたるランジェリーブランド《feast》2017年10月にはワンピースブランド《ダブルチャカ》を立ち上げ、Eコマースを主として販売を続ける。複数回に渡るポップアップショップの後、2018年にはラフォーレ原宿に常設直営店舗《LAVISHOP》を出店。

/note担当:リカックス@Rirara0508

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#アパレル   #小売   #経営論


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