UXデザインは、サービスに愛を注ぎ込む役割なのかもと思った話
自分の好きなことばっかり書いていてUXの人感ゼロですが、学生時代も含めて10年以上UXに携わって来て今思うことを。
念の為、UXに携わっていた略歴
2009頃〜UX関連の研究 @東工大 Affective Lab
2010〜11 デザイン思考関連の留学 @スタンフォード d.school, aalto univ
2013〜18 UXコンサル @beBit
2019〜 UX デザイングループ @AIスタートアップ
UXデザインっていいなと思った話①:
新サービス/新規事業コンサル時代の経験から
優れた事業/サービスを0から発想する、とかそんな話は私はできなくて。
どちらかというと
・クライアントが何十年もそのドメインにいる中で感じた「違和感」や「あるべき」を捉えて、
・これまで企業が培ってきたアセット/アドバンテージを活かしつつ、
・それをターゲットユーザの「価値」に昇華し、
・具体化→検証→分析の繰り返しの中で上記すべてを満たすスイートスポットを探しに行く
ことがコンサルとしての私の役割だと捉えていました。
ターゲットユーザに受けいれられ、事業が成立した瞬間にそのサービスはクライアントにとって「ずっとやりたいと思っていた仕事」となり、
サービスの運用・改善方針は、「あの人みたいに喜んでくれる人をもっと増やすためには?」という問いに変わるので、
UXデザインコンサルは「誰もが、誰かを想いながら仕事をできる環境」を実現できるとても稀有な仕事だと思っています。
※ もちろん上記を実現するためのビジネス的な試算(ターゲットをどう定めるか、十分にペイするかなど)も不可欠ですがそのあたりは割愛。
UXデザインっていいなと思った話②:
事業会社の経験から
いろんな側面があると思いますが…顕著に出る2側面から。
1) 「企画」の段階でより深く「ユーザ」についての話ができるため、構想に厚みが出る
これは「プロトタイピング→ 検証」というプロセスが組み込めるのが背景です。プロトタイプは、サービス企画界における「共通言語」みたいなものなので、認知的な負荷ややり直しの負荷を無視して検証・ディスカッションができるんですよね。
プロトタイプの素敵なところは、「問を検証するための最小限」で作れるところ。一般的には作るのに時間をかければかけるほど壊すのが怖くなってしまうので、「壊してもダメージが少ない」ものをベースに議論ができるのは非常に建設的。
※ その分結論を先延ばしになってしまうこともあるので、PJT設計的な要素も非常に重要になってきますが。
上記により、企画の段階で「ユーザや提供価値」について共通認識が取れること、上記を前提とした上で、検証を通じてファクトベースで話を前進させられることは本当にいいと思っています。
また上記を徹底することで、検証後の「仮説の何があってた/間違っていた」も議論しやすくなります。
2). ユーザへの価値提供/ビジョン実現を目的にコミュニケーションが取れる
「ユーザへの価値提供」が抜きになると、施策やKPIベースで議論がドライブされがちになると感じます。
例えば「この施策は、CVRを向上させるのか、継続率を高めるのか」「CVRを向上させるためにどんな施策が必要か」など。
上記のような話はもちろん大事ですが、提供価値とアンマッチの施策・機能・コミュニケーションは結局パッチ当てにしかならず成果にはつながらないですよね。
特に「ポイント」や「ゲーミフィケーション」というワードが提供価値不在で語られるシーンは要注意です。
「チームとしてユーザ・提供価値にまっとうに向き合いながら、ビジネス成果に対しても会話ができること」はUXデザイナが居なければ蔑ろになりがちだと思っています。(追記: というよりは、チームにUXの概念が根付いていなければ蔑ろになりがち、というのが正しいですね。)
また、顧客や提供価値が抜きになると活動の意味合いがわかりづらくなり(何のため?誰のため?となる)、多くの場合ビジョンと活動との接合がしづらくなる感覚になるとも感じています。
いろいろ言ったけどつまり愛を持つこと、持たせることこそが大事
更に言うとUXデザイナは顧客に価値を届けるだけでなく、「サービス提供者がユーザに向き合うことやサービスを通じた貢献実感を持つこと」を加速させる役割も担うと思うんですよね。
「ユーザから愛され、サービス提供者からも愛され、事業としてもサステイナブルに続いていく」
そんな世界を実現するために、UXデザイナは存在するのかなぁと。難しいですけどね。
とはいえUXについて考えるのはUXデザイナの専売特許でもなんでもなく、サービス提供者全員が前提として捉えないといけないことだと思ってます。
そういった文化を作るのもUXデザイナの役割ですよね。頑張ろ。
サービスの良し悪しの半分以上は運用の中で作られていくものだとも思っていますし、「提供者全員がユーザを想い、価値を届ける」意識を持てるとやっぱり強いですよね。
余談: 「なぜUXか」を時代背景から捉えてみる。
完全に余談ですが。なぜUXという概念が重要かという時代背景の解釈をば。
デジタル・AIが普及していくことで、下記のような世界になっていると思っています。
【市場】究極に透明性が高まっていく
・嘘ついたらしっぺ返しが来る(ex. 過大広告⇔実際の利用にギャップがある際は、必ずネガティブな形で伝わる)
・結果「本質的に価値提供できるサービスだけが生き残っていく」
【競合/競争優位】論理的に再現できない「想い/人らしさ」が競争の源泉に
・論理的に構成される全てのものは再現可能になり、モノ自体の価値が極限まで下がる。
・結果、デジタル化できない情報の価値が高まる。「より人間的で主観的な」想いや価値観などが価値の源泉となる。
【自社/運用】デジタルは法人/社会と顧客をつなぐ「神経」になる
・世の中でどのような反応があったかが即座にわかるようになる。逆もしかり。
・結果、提供者と顧客との距離が圧倒的に縮まる(競争優位で述べた「人間的で主観的な思いや価値観の体感」にもつながる)
つまり、これからの時代にサービスとして生き延びていくには
・本質的に顧客にとって価値のあるサービスを、(→ 市場の透明性)
・「想い・ビジョン」を軸にしながら、(→ 競争優位としての人間味)
・顧客の反応・変化と対話しながら育てていく(→ デジタルという神経からの信号を見逃さない)
ことが大事なのかなと。これってUXデザイナが生業としていることですよね。
※ 一応UXデザイナとして働いてはいますが、出自自体は理系大学だったりコンサルだったり少し特殊な背景なので、変な目線かもしれないですが許してください。もはやUXってなんだって話になってきますがね笑 どちらかというと「サービスデザイン」の話をしているかもしれないですがご愛嬌。
以上です。
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