【CTOインタビュー】 アート×ブロックチェーンの会社で働くって、どんな感じ?
こんにちは!スタートバーンの水野です!
今日のnoteは、前回に引き続き、スタートバーンのCTOを務める中村智浩(愛称:ともさん、Twitter, Medium)へのインタビュー記事です!
前回の記事はこちら!
スタートバーンでは、ブロックチェーンを用いて、アートのためのインフラやサービスを開発しています。エンジニアそれぞれの高度な技術や知識はもちろん、彼らを取りまとめるプロジェクトマネージャーやCTO(最高技術責任者)も、非常に重要な役割を担っています。
今回は、私たちが運営しているウェブサービス「Startbahn Cert.」が生まれた理由や、アートとブロックチェーンという両極端の2分野を扱う会社ならではのコミュニケーション方法について聞いてみました!
また、既にスタートバーンにいるメンバーや、これからジョインするメンバーに求めるキャラクターや能力などなど、盛り沢山です!
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—— ともさん!前回に引き続き、インタビューよろしくお願いします!
お願いします!
—— 前回は、スタートバーンがメインで開発しているStartrailについてお話いただきましたが、今回はStartbahn Cert.についてもお伺いしたいと思っています!
Startrailは目に見えない...
—— 早速ですが、Startbahn Cert.って何ですか?
—— 前回のお話聞く限り、スタートバーンの思想は「Startrail」として形になっていくと思うのですが、だとするとStartbahn Cert.はなぜ生まれたんでしょうか?
我々がブロックチェーンを使って開発しているStartrailっていうのが、「誰がいつまで何のアート作品を持っていました」という情報が書き込まれる場所。アート業界でいうところの「プロビナンス」や「来歴」が記録できるところね。
—— コレクターは自分の欲しい作品が見つけやすくなって、アーティストは売買の度に還元金が支払われて…みんながハッピーになれる仕組みの基盤になっているところですね!
※ 詳しくは、こちらの「スタートバーンが目指すのは『誰にとっても良い世界』」から!
そう。でも、これって、みんなが使っていたら意味がありそうだけど、まだ誰も使っていないなかで、「なぜ自分たちが最初に乗り込んでいくのか」というのには、きっかけが必要だよね。ルーブル美術館が使っていたら日本の美術館も使ってくれる可能性が高いし、サザビーズが使ってくれたら他のオークションも使ってくれるはずだけど。
—— 「0」から「1」への壁が大きいということですね。
「ここで既に1000万件のアートが流通しているので、あなたたちも入るといいですよ」というのは説得力のある話だけど、「ブロックチェーンでアートの来歴を記録できる仕組みを新しくつくったので、1人目の利用者になりませんか?」と言われても、正直あんまり旨味が感じられないわけ。
—— だとすると、今の段階でStartrailを利用するメリットは何もないのでしょうか...?
イーサリアムというブロックチェーンを使っている限り、誰もズルができないっていうことはメリットとして言えるかな。例えばスタートバーンが、自分たちのためだけに恣意的な仕込みをつくっていたりすれば、それすらも全部記録されてしまうから。自分たちにとって都合の良いことばかりやっているとか、都合の悪い記録を取り消したり書き換えたりしていたら、それも目に見えてしまうわけ。イーサリアム自体をスタートバーンの力で変えることはできないからね。そういう意味では、どこか特定のウェブサービスとかデータベースだけでやるよりも圧倒的に安心だよね。
—— ある日突然そのサービスが閉じてしまっても、データはブロックチェーンに残り続けますしね!
とはいえ、現状は開発しなきゃいけないから結局コントロールしているでしょ。しかもまだ作品は入ってないでしょ。だから来歴もないでしょ。そして何より、例えば「改ざん不可能なブロックチェーン証明書が発行できます」と言われても、「それって、どこで見られるんですか?」みたいな感じじゃん。「ブロックチェーンってどうやって見られるんですか?」って。
Startbahn Cert.は目に見える!
—— これを見えるようにしたのが、Startbahn Cert.ですか?
そうそう!
—— Startbahn Cert.は、アート作品のStartrail証明書と、その情報に紐付いたICタグを、セットで発行できるサービスですよね?
そう。自分の持っている作品に貼り付けられた、ICチップ内蔵のシールやカードに、ピッってスマホをかざしたら画面が開いて、「このアートは、○○さんが○年に作った〇〇という作品で、この所有者はあなたです」という情報が見られる。そして、このデータはブロックチェーン上にあるので、誰も書き換えられない。もしその作品が別の誰かの手に渡った時にも、そのタグが一緒についてくるから、ブロックチェーン上の情報と乖離してしまうこともない。
こんな感じで、ICタグという物理的で分かりやすい入口と、ウェブ上の画面を用意することによって、「なるほど、分かった!これならやってみようかな」と思ってもらえる。背後にあるブロックチェーンまでのタッチポイントをつくってあげたみたいなことだよね。
—— 目に見えますもんね!目に見えづらいブロックチェーンよりも圧倒的に分かりやすい。
Startrailは、スタートバーンの持ち物ではない
色んな組織と一緒に、みんなで運営するもの!
—— では、StartrailとStartbahn Cert.はどういう関係性なんでしょうか?
Startbahn Cert.が引き金になって、取引の情報が溜まってきたら、Startrail自体はいろんな人たちと運営していきたい。スタートバーンだけのものであり続けてしまったら、ブロックチェーンであることの意味がないのよ。
—— 1つの事業者やサービスだけに閉じたネットワークではなくて、全てを横断して記録ができるものですもんね。
だから、アート業界の色んな人に「我々もStartrailの運営やりたい!」って言ってもらいたいんだよね。スタートバーンがアート業界を握っている状態を目指しているわけではなくて、とにかくみんなで良くしていける世界をつくりたい。Startrailが普及することで、たくさんの参加者によって分散的に運営されている状態になる。
とはいえ、スタートバーンも会社として成長していかなきゃいけない。じゃあ我々が何で収益を得るかというと、Startbahn Cert.での売り上げだよね。
—— なるほど。スタートバーンは、Startrailをつくった先駆者であり、且つそれを使っている1利用者でもあるということですよね。
そうそうそう。使ってもいるし、運営している会社の1つでもあるね。
—— 「たくさんの参加者によって分散的に運営されている」って、具体的にどういう状態ですか?
Startrail協議会に参加している法人や個人が、「Startrailには、もっとこういう機能があった方が良い!」みたいな意見を出していって、最終的に投票で決めるという感じかな。で、実際に「この機能を追加しよう」と決まったら、スタートバーンが開発を担当して、その貢献した分をもらうとか。
そういう風に民主的に合意された決定があって、それを実行した企業がその分け前をもらうというようなことが実現できると、すごく健全で、且つビジネスとしても成立するよね。
StartrailとStartbahn Cert.の開発チーム編成
—— StartrailやStartbahn Cert.の開発は、どういうチームで進めているんですか?
開発としては、①Startrailそのもの、②StartrailのAPIサーバー、③Startbahn Cert.のサーバー、④Startbahn Cert.のフロントエンド、っていう4つのパーツがある。チームは、大きく①②のブロックチェーン担当と③④のウェブサービス担当の2つに分かれている感じかな。
相互運用性を保ちながら進めているから、全く別のチームという感じでもないんだけど、システムとして密結合にならないようにしている。今後他社のサービスもどんどんStartrailを使って欲しいわけだから、Startbahn Cert.のシステムとは基本的に切り離されている必要があるからね。
—— ②のサーバーって、具体的に何をどう使いやすくしてくれるんですか?
ブロックチェーン上で取引をした時、その情報の処理や実行には「マイニング」と呼ばれる自動のプロセスが踏まれるんだけど、それには少し時間がかかる。あと、これはイーサリアムの場合だけど、使用料がかかってしまうんだよね。サーバーの役割の一つとしては、こういう待ち時間や使用料を、ユーザーに負担させないようにすることなんだよね。
それから、本来のブロックチェーンは中身の検索がしづらい。取引の情報は、その名の通り、ブロックになって記録されているのね。一定期間の取引がブロックに入っていく、というのが繰り返されているような感じ。そして、ブロックは1本のチェーンで繋がっているから、前後の取引情報は隣のブロックを見れば分かるようになっている。だけど、ある特定の取引についての情報が見たいと思ったら、端から端まで全部見ていかないといけない、みたいな感じになるの。サーバーを用意することで、これをGoogle検索のように、簡単に探し当てやすい状態にする。
—— 要するに、ユーザーにネガティブな体験を与えないようにするためのものですね!
そうだね!
必要なのは、英語スキルよりも
エンジニアとしての能力や情熱
—— 開発チームには、海外出身のエンジニアもいると思うのですが、コミュニケーションは基本英語ですか?
今は、①②のStartrail開発の方は英語だけど、③④のStartbahn Cert.の方は日本語でやってます!
—— それは所属しているエンジニアの出身の関係ですか?
そうそう。ブロックチェーンエンジニアって、まだ日本には少ないから。Startrailの方には、日本語の話せないエンジニアがいるんだよね。
とはいえ、現状スタートバーンに欲しいエンジニアについて言うと、日本語や英語の外国語スキルというのはあまり重要じゃないと思っている。技術力、好奇心の高さとか、「アート業界をブロックチェーンで盛り上げたい」というモチベーションの方が大切かな。
一方で、このStartrailとStartbahn Cert.の間のコミュニケーションは、事業責任者とかプロジェクトマネージャーが担っていて、そういう人たちはある程度バイリンガルである必要が出てきてしまうけどね。
—— それ以外の役職であれば、日本人で英語が全くできなかったりしても、別に問題ないってことですかね?
英語は話せないけど優秀なエンジニアっていうのは当然いて、そんな重要な人材を切り捨てるのかといったら、そんなもったいないことはできない。逆に、日本語が話せないから日本の会社では働けないというのも、リモートワーク推奨の方針も相まって色々ナンセンスだと思うわけ。
スタートバーンとかStartrailとか、我々の思想に共感してくれる優秀な人材は、どんどんスタートバーンで働いて欲しくて、だから、日本語のみの人も英語のみの人も今のところは大歓迎!ジョインアス!って感じです!笑
ただ、外国語に拒否感があるのは良くないかな。笑
—— 確かに現状スタートバーンにも、英語経験が浅い人たちもいますが、海外出身のメンバーとも、かなり積極的にコミュニケーションを取っていますよね。
「アート」と「ブロックチェーン」の間を埋める
コミュニケーション方法
—— 言語の問題に限らず、社内でのコミュニケーションについて苦労したことって何かありますか?
アート × ブロックチェーンの会社だから、エンジニアチームの他に、アート業界のことを深く理解しているアート部門というのがある。その間に、事業開発部(BizDev)があったり、プロジェクトマネージャーがいたり、デザイナーがいたりする。
アート業界のプレイヤーのことを一番に理解して彼らの需要をヒアリングするアート部門から、それらを最終的なプロダクトに落とし込んで形にしていくエンジニア。この2者の距離が、どうしても遠くなってしまうんだよね。それぞれの言葉で意思疎通を取るのが大変だったりする。
とはいえ、アート業界の人たちに対してアプローチする時も、アート部門はブロックチェーンのことをきちんと理解している必要があるし、逆にエンジニアチームもアート業界の慣習や動きを知っていなくちゃいけない。この「アート」と「ブロックチェーン」の間をしっかり埋めながらコミュニケーションする必要があるよね。
—— そういう知識や情報の壁を乗り越えるために、お互い歩み寄るというのは当然あると思うのですが、何か具体的に取っている対策はありますか?
まず、社内の全員が、全ての情報に簡単にアクセスできる状態にするということかな。ブラウザ上のドキュメント管理ツールであるNotionとか、デザインツールのFigmaとか、そういった共有環境に情報を集約させて、且つ情報にたどり着きやすいような構造をつくってあげる。別部署や別プロジェクトのことでも、見たいと思った時にすぐに見られるという共有環境をつくるよう努めているよね。
もう一つは、常に「共通語で話す」ということを意識している。関連する専門用語で「Domain Driven Develeopment(DDD)」というのがあるのね。これはつまり、何という単語が何を意味しているのか、常に共通認識を持ちながら、その単語だけを用いて会話しましょうということ。
例えば、Startbahn Cert.の利用者を表す言葉の一つに「ライセンスドユーザー」というのがあるんだけど、これも「ライセンスドユーザーとは?」っていうのを細かく定義してるわけ。で、社内でそれについて話す時は絶対に「ライセンスドユーザー」しか使わないようにしている。「あのアーティストの……」とか「本人確認済みの……」とか言わない。もう絶対ライセンスドユーザー!みたいな。笑
—— 「ユーザー」とか「利用者」とか、そういう別の言葉は使っちゃダメってことですね!
そういうこと。「ライセンスドユーザー」以外の言葉を使ったら、その話の内容に認識の齟齬が生まれたりするからね。
共通の言葉を使っていくことで、アート部門もエンジニアチームも、もちろんそれ以外のメンバーも、お互いの独自の情報や知識に影響されずに、常に同じ認識を持って会話ができる。
リモートワークでも、心地よく働くために
—— これまでは全員が普通にオフィスに来ていたので、ある程度簡単にコミュニケーション取られたのかなと思うのですが、コロナの影響でリモートワークが基本になった今、新たに生まれた不便とかあったりしますか?
リモートワークになったことで、もちろん失われるものもあるけど、基本的には問題なく働けていると思うんだよね。
この前、水野さんも自社サイトのお知らせで、社内アンケートのこと書いてたけど、スタートバーンには「毎日出社したい」って人が1人もいなかったじゃない?笑
※ 詳細は、当社サイトの記事「緊急事態宣言解除後も従業員へのリモートワーク推奨を継続します。」から!
もちろん時々は会えたほうが嬉しいんだけど、毎日出社していた時よりも今の方が幸せですって人が多いんだよね。「オフィスに来てもいいですよ、でも強制はしません」っていう状態の方が、幸福度が高い。だからメリットの方が高いことは分かっているんだよね。
じゃあ次は、デメリットを減らす必要がある。リモートワークになることで失われるものって、基本的には対面でのコミュニケーションと、オフィスみたいに働きやすい勤務環境だよね。
コミュニケーションをなるべくリアルなものに近づける方法としては、質の高いオンライン会議のシステムを導入してるし、各々でオンライン飲み会とか自由に開催してるよね。会社のアカウントで勝手に開催してても、「どうぞどうぞ」って感じじゃん?笑 あと、金曜日のオンラインコーヒーブレイクも結構いいよね。
—— そうですね!最初はリモートワーク寂しいなと思っていたんですが、積極的に新しいサービスとか取り入れていることもあって、少しずつオフィスで働いている感が出てきましたね!
社員みんなで「これやってみませんか!」って提案し合えてるからなのかなと思います!
あと、オフィスみたいな勤務環境に関しては、会社にある椅子とかモニターとか貸し出ししてるよね。オフィスにあるもので賄えない物のために、住宅環境整備手当も支給しているし。
—— 私も食卓にオフィスの椅子とモニター置いて仕事してます!笑 もう完全にオフィスと同じ環境です。笑
スタートバーンの人は、自分の「好き」を持っている
—— ところで!私、新卒なので、他の会社を全然知らないんですよ。事業内容については他の会社と比べてどう特徴的かは分かっているんですが、社内の人にしか分からない、雰囲気の違いについては比較対象がなくて...笑 スタートバーンって、ずばりどんな雰囲気の会社ですか?
メインの分野がアートだからだと思うんだけど、「好きなものがある人」が集まっていると思う。アートって嗜好品もしくは投資商品だから、生活にマストではないんだよね。アートもブロックチェーンも、極端な話、水とかに比べたら必要ないじゃない?笑 でも生活をより豊かにするために重要なものではあって、そういうものに意識を向けられる人が集まっていると思うな。
—— アートも、ブロックチェーンも、その片方ですら、「携わろう!」という発想になる人は少ないですよね。笑
マニアックだよね。でもね、いると思うんだよね。「アート × ブロックチェーンの企業で働こう」とはなりづらくても、「好きなことで生活できる人が増えた方がいいよね」とか「アートって素敵だよね」みたいな、それぐらいの粒度だと共感する人っていっぱいいるはずじゃん?
金融商品としてのアートが好きな人もいるし、嗜好品としてのアートが好きな人もいる。とにかくクリエイターが好きっていう人もいるし、ブロックチェーン使って何かをつくりたいっていう人もいる。あとは、急成長している会社に参加したいという人や、とにかく泰平さん(スタートバーンCEO)が好きだから一緒に働きたいという人もね。笑
スタートバーンにいるメンバーは、それぞれ何かしら自分の「好き」を持っていると思う。
—— たしかに泰平さんのことは、メンバーみんな大好きですね!笑 スタートバーンで働いている人たちは、「仕事だからやっている」というよりは、「好きだからやっている」という感じですか?
バランスは人によると思うけど、「どこの会社でもいい」と思うような人だったらこの会社には来ないはずだよね。この会社にしかないものというか、この会社らしい考え方とか文化が好きな人じゃないと—— 。
—— 確かに、私の場合は、ここでインターンしていた頃から、会社の思想や雰囲気に強く共感していて、「この会社以外は考えられない!」って思って決めましたね。
—— ともさん!今日はお忙しいところお時間いただいて、ありがとうございました!
こちらこそありがとう!次の人のインタビューも楽しみだね!
—— ありがとうございます!引き続き頑張ります!
中村 智浩
取締役 最高技術責任者 (CTO)
Twitter, Medium
早稲田大学大学院にてWebや機械学習を研究。新卒で入社したゴールドマン・サックスとエレクトロニック・アーツでのフルスタックエンジニア経験を経た後にウィキッズを創業。その後AnyPayにてCTOを務め、ペイメントサービスや ICO・STOサービスの開発を統括。また、ブロックチェーン系SaaSのスタートアップcatabiraにおいてもCTOを務めた。2020年よりスタートバーンに参画。Web3.0の世界観とフジロックが好き。
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