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入門・電視観望、その4
1.電視観望でも「冷却CMOSカメラ」
CMOSカメラには非冷却カメラと冷却カメラがあります。
冷却カメラとは電気的に冷やす金属板(ペルチェ素子)を受像素子に付けて冷却させる装置の付いたカメラで、主に星雲などの長時間露出撮影に使われます。
冷却CMOSカメラは、単純に温度を下げるのではなく、指定した温度に冷却したり、カメラの用途に応じた機能(出力用USBポート)が付属いています。当然その分、非冷却カメラより大きく、また高価になります。
なお、非冷却CMOSカメラはカメラの電源とデータの送受信のためのUSBケーブル1本だけで操作できますが、冷却CMOSカメラはさらに冷却装置のための電源(12V3A)が必要になります。
望遠鏡へは、接眼レンズ風に1.5" スリーブで付けたり、カメラマウントアダプターで取付ける方法などがあります。
冷却CMOSカメラの最大の利点は、受像素子を冷却することでダークノイズやアンプノイズのほとんど無い画像を撮像することができます。そのため天体撮影に使われるワケですが、この、ノイズの無い画像は電視観望でもありがたいモノです。
2.夏時期はCMOSカメラに出るノイズが多い
「入門・電視観望、その3」に書いたように、CMOSカメラでは天体の光の他にさまざまなノイズが表示されます。それらのノイズは、CMOSカメラの設定(ゲイン、ビニング、使用画像サイズ)や露出時間を同じにして撮影したダークフレームを使うと取り除くことができます。特に、夏時期は夜でも気温が高いため、熱ノイズへの対応は必須でしょう。
さらにCMOSカメラを使い続けるとカメラが熱を持つようになり、ノイズの量が変わります。そのため、ダークフレームを使ってもノイズが残る場合は、改めてダークフレームを撮影して、それを使う必要があります。
非冷却カメラで30秒露出でスタックした画像例
RGBの熱ノイズ、アンプノイズ、バイアスノイズが見える
また、観望会などでの電視観望の際、「入門・電視観望、その2」の3(2)に書いた多段階露出では露出時間が変わるため、ダークフレームを使ったノイズ除去はできません。
さらに、実際にいろいろな天体を見た場合、例えば散光星雲では高ゲイン、長時間露出が好ましいですが、散光星雲でも明るい部分と暗い部分の明るさのある対象や、球状星団のように中心部で恒星が密集している天体の場合は、ゲインを下げて適切な露出にしたいところです。このように、ゲインや露出時間が天体によって変わる場合は、どのダークフレームを使えば良いのか困ってしまいます。このように、ダークフレームを使ったノイズの除去は、簡単なようで、いろいろな天体を次々と見る電視観望ではなかなか面倒です。
そこで、カメラを冷却してノイズを減らしてくれる冷却CMOSカメラを使うと、ダークフレームを使う必要が無いため、使ってみると手放せないほどに、とても便利に感じます。
3.冷却CMOSカメラはノイズが少ない!?
冷却CMOSカメラを使ってみると、冷却機能を働かせなくても、熱ノイズやアンプノイズがほとんど見られません。冷却CMOSカメラはそもそもがノイズの発生が抑えられているように感じられます。厳密な比較をしていませんが、冷却カメラを使った電視観望では、冷却を行わなくても、ノイズの少ない画像が見られるようです。
冷却カメラで、冷却せずに、30秒露出でスタックした画像例
熱ノイズ、アンプノイズ、バイアスノイズが見えない
冷却カメラで-10℃に冷却して、30秒露出でスタックした画像例
冷却カメラで-10℃に冷却して、30秒露出でスタックした画像例
冷却CMOSカメラは非冷却カメラより高価ですが、その性能は冷却できる/できないだけの比較以上に、受像素子などの性能そのものも高く、ノイズを気にしないで電視観望をすることができます。
さらに高温環境で熱ノイズの高い時は、冷却してノイズを除去できます。まさしく優れモノと呼ぶにふさわしいカメラでしょう。