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【オリジナル小説】メイメイ 6

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6



 全てが変わったのは、____全てを壊したのは、僕が十一歳になった頃だ。

 身体も大分だいぶ大きくなり、スポーツもやる様になり、一丁前にクラスの女の子を意識する様になり、家族以外のり所が充分に増えた。


 そしてついに、彼女を見る僕の感情が、欲望が本格的に変化していった。胸に顔を寄せる動作も、彼女の胸のいただきを唇で挟む行為も、母の愛情を求めていたものから、異性を求めるものへと完全に変化した。

 それまでもイライラするような、もどかしい様な未熟な性欲じみたものは感じてはいた。が、ある時点から一気に、もっと生々しくて、おぞましい粘着質なものが、僕の中に生まれていた。

 彼女の柔らかさを何度も夢に見ては、少しずつ自分の身体が大人へと成長し始めている現実を毎朝のように突きつけられる。
 自分がどんどん汚い生き物になっていく様な絶望感。今まで考えもしなかった、ここまで感じもしなかった衝動的なものに、どんどん後ろめたくなっていく。


 会う度に、僕は彼女の顔を見れなくなっていった。
 目が合ってしまうと、僕が彼女の抱いているものを全て見られてしまいそうで、彼女に会いにいくのが怖くなっていく。それでも無意識に、彼女の元に足が向かってしまう事もある。


 彼女の肌に触れたい、彼女にもっと口付けをしたい。でも、彼女に嫌われたくない。僕が触れた瞬間、僕のドロドロした汚い欲望で、彼女が汚れてしまうかもしれない。

 花のように手折たおって、彼女を僕だけのものにしたかった。あの濡れた瞳が、あの白くて儚い腕が、僕が忙しくて公園に行けない間に他の誰かに見つかってしまうかもしれない。いや、もう見つかっていたらどうしよう。


 彼女は僕だけのものだ。あの手に抱き締められて良いのは、僕だけなのだ。他の誰にも渡したくない。

 いるとも限らない浮気(!)相手に嫉妬した。
 僕がまだ見たこともない身体の他の部分を捕らえて、彼女を封じ込めている砂場の硬い砂にも、僕は嫉妬した。

 彼女のもう片方の乳房にも触れたい、左手にも抱き締められたい。腰や、脇腹や、太ももや、爪先まで全部が欲しい。

 僕は段々と日常生活に支障が出るようになった。注意力が低下して怪我や小さなミスが増え、忘れ物もしょっちゅうやる様になった。比例して毎晩の甘やかな悪夢も増えていき、僕はどうしてしまったんだろうと、気持ちの悪い感触に目を覚ましながら、悶え苦しんだ。


 そしてとうとう、僕は彼女を怒らせてしまう。

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