だから動物園って最高
ナイトズーに行ってきた。
夕方には閉園となる動物園が、営業時間を延長して夜間まで営業してくれる夏限定の特別イベントだ。
最寄り駅で降りると、落ちかけの薄暗さとムシムシとした空気が立ち込める。さながら熱帯雨林のようだ。
「さすが動物園の近くだけあって、獣って感じがするなぁ」
そう思っていたが、どうやら電車に乗っている間に一瞬だけ夕立があり、昼間の熱気で瞬く間に蒸発して熱帯雨林のような蒸し暑さを演出したようだ。勘違いしてしまうのは、はやる気持ちを抑えきれない大きな子どもだからか。
事前購入したチケットで早々に入園した。
時刻は夜7時すぎ。日は落ち、あたりが暗闇に包まれる時間。
いい雰囲気の時間帯なのだが、昼間活動する動物たちにとってはお休みの時間。早々と屋内へと入り、見ることができない。
だからといって動物を見ようと早い時間帯に来れば、昼間と変わらない動物園。それでは意味がない。普段見ることのできない動物の姿を見られるのがナイトズーの醍醐味なんだから。
東山動植物園といえば、有名なのがイケメンゴリラのシャバーニ。しかし、彼もまた屋内でお休みの時間で見られなかった。
ならばとナイトズーのポスターにもなっているコアラを見にコアラ舎へ向かう。「あのコアラが動くかも」なんて煽り文句があるんだから間違いない。
コアラ舎は独立した建物になっていて、中に入ると水族館のようにガラスを隔ててコアラが見られるようになっている。
ナイトズーの目玉ということもあって、人があふれるようにいた。あまりにも次々にやってくるので、建物内は立ち止まり禁止。進みながら見るよう呼びかけられていた。愛・地球博の冷凍マンモスのようだ。
館内は照明が抑えられており、コアラを見つけるのが難しい。さらに人が多いからか、夕立のせいか分からないけど、隔てるガラスの上半分が曇っており遠くからではユーカリの木すらよく見えない。だから人はガラスに近寄るし、なんとか見ようと立ち止まる。このような状況だったのですぐに退館した。
入園からここまで見たものといえば、ゴリラ舎近くにあった、ライトアップされたゴリラのモニュメント。そのモニュメントにシャバーニへの思いを馳せる。
まてよ。これは生きた動物を探すアトラクション。そう思えば楽しめる気がする。
暗闇では視覚は役に立たない。だから目を閉じて他の感覚器官に集中する。耳で獣の息吹を聞き、鼻で獣の匂いを嗅ぎ分ける。頬に触れる風を感じ、獣の動きを察知する。
「ここだ!」
目の前にいたのは、芝生を駆け回る子どもたち。弾ける笑顔に引き寄せられたようだ。
「だから動物園って最高」
夏の夜が瞬いた。
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