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書籍『記者、ラストベルトに住む —— トランプ王国、冷めぬ熱狂』

金成隆一 (著)
出版社 朝日新聞出版‏
発売日 2018/10/19
単行本 343ページ



目次

はじめに
プロローグ

第1章 日常に戻ったラストベルト
 選挙後のラストベルトを追跡取材
 選挙が終わり、「つまらなくなったわね」
 草の根選挙活動に貢献した支持者
 ラストベルトの日常を取材する意味
 同級生は「けっこう死んでしまった」
 「ビジネスマンらしく景気をよくしてくれれば十分」
 「誰もトランプに模範は求めない」
 「ついにCMの仕事をつかんだのよ」
 最大の恐怖は「貧困への転落」
 ラストベルトの19歳の不安
 願書20通に返事なし
 両手を動かしてする仕事
 地元高校の卒業生と保護者の声
 街を去ったジョーイ
 自国優先主義の根っこ
 「労働者は民主党へ」だった
 オバマの「ウソの約束」
 20世紀ノスタルジア
 大卒でも、25年前の母より低い給料
 民主党の群幹部のホンネを聞く
 「トランプ・トレイン」の破壊力
 民主党敗因の分析
 「オレたちはケネディ時代の民主党員だ」

第2章 この街でアパートを借りる?
 2016年の大統領選をなぜ見誤ったのか?
 月額450ドルでアパート契約
 物価はマンハッタンの3~5割安
 「米国のロールスロイス」誕生の歴史が街の誇り
 48歳で引退できた時代
 隣人はアルコール依存症
 日本の洋菓子に大喜び
 「手間のかからない借家人はあんたが久しぶり」
 住み込み取材で見た薬物汚染の実態
 薬物過剰摂取で、1年に6万3千人が死亡
 「薬物は都市問題だったんだ、昔はね」
 薬を盗み出した「若者」は、親友の娘
 オピオイド危機で非常事態宣言
 地元紙に「薬物で9歳死亡」の記事も
 「トランプで株だ」
 ガソリン価格と大統領を重ねて記憶
 サンドイッチ店の経営者
 フランチャイズ店との競争
 「しんどい日も、彼は私を笑わせてくれる」
 「子どもに継がせたい仕事ではない」
 ニューヨークとトランプの光

第3章 貧困につけこむ白人民族主義
 
白人至上主義団体の支持を拒まないトランプ
 山奥で開かれた白人民族主義団体の集会
 2045年の人口、白人が過半数割れ
 白人層の協和党支持者が急増
 「見捨てられた白人」が勧誘ターゲット
 資源を奪われ、「アフリカ植民地のようだ」
 「『劣った部下の人種』と混ざるべきではない」
 「良質な教育とは無縁だった」
 KKK 参加のきっかけ
 「あいつらは貧困にあえぐ我々につけこむ」
 「中国人はくるな!ここを立ち去れ!」
 白人はかりの会場
 団体リーダーが狙う「トランプ時代、勢力拡大のチャンス」
 白人主義団体の思想標語

第4章 抵抗のうねり
 20年前の「懸念」
 移民の権利
 女性の権利
 性的少数者の権利
 銃規制を求める動きと反発

第5章 揺れる人々
 
「トランプで本当に良かったのか」
 「米史上最大の減税と税制改革」の帳尻
 「医療保険が縮小されれば、ジェノサイドよ」
 「これがトランプの言う偉大なアメリカなのか」
 アパラチアの不安@ ケンタッキー州
 福祉に依存する暮らし
 「本当に石炭産業を戻してくれるのだろうか」
 ためらいがちにトランプを指示した大家さん
 「ファミリービジネス」に妻は不満
 夫の不満は「ゴルフのやりすぎ」
 すがったトランプへの一票「二度と入れない」
 「組合が労働者を見捨てた」
 工場へのトランプの介入に労働者は複雑な心境

第6章 軋むアメリカ
 
支持者の7割は「トランプいいね」
 「カナダに移住する」と答えた人がトランプ支持者に
 「トランプっぽさ」競争と化した共和党予備選
 「PCはカルトだ」と上院候補も
 「不法移民」の犯罪、引き続き争点に
 「トランプ化」と新興メディア
 「白人男性の党」から脱皮できない共和党、民主党は多様化路線
 トランプの危険性ー5年も繰り返されたデマ拡散
 断層に足場を作り、よじ登った大統領

おわりに

本書より(手打ち)


内容紹介

 トランプ大統領を誕生させた強力な支持地帯、ラストベルト。幾度も足を運んで選挙以前から取材を積み重ねてきた記者が、今度は実際にラストベルトに暮らし始めた。
 果たして大統領となったトランプを彼らは支持し続けるのだろうか。失業、貧困、ドラッグ・・・・・・過去の繁栄が忘れられない世代と未来に希望を持てない若者世代。『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』の著者がトランプ王国熱狂の後の1年半を追った情熱のルポルタージュ。

朝日新聞出版 公式サイトより


レビュー

 本書はショーン・ベイカー監督の『レッド・ロケット』の背景を理解すべく、2016年にドナルド・トランプを当選へと導いた人々の考えを知りたいと思い、手に取りました。
 そしてその部分に関しては個人的に非常に有用な情報を得ることが出来、とても満足しております。

 
 個人的には、第1章、第3章に特に大きな収穫があり、中でも最大の収穫は、本書に登場するトランプに票を入れた人々(労働者)の最大の共通点が「無知」であるということを、確信できたことにあります。
 ちなみに私の言う「無知」とは、「知識の無い状態」ではなく「疑問を発せられない状態」のことを指します。
 
人はそのような状態に陥るとまず視野が狭くなり、それにより全体の状況を判断することも困難になって、さらには現実の支配構造に思惟しいを巡らすことも出来ず、それゆえに論理的且つ理性的な判断をすることは不可能となります。そしてギュスターヴ・ル・ボンの言うところの「大衆は言説の論理に感銘するのではなく、言葉が作り出す響きやイメージに感銘する。」との発言通り、簡単に「甘言」又は「トンデモ発言」に騙され、その結果さらに搾取されると共に、放置されて、ますます困窮を極めてゆくという結果となるわけです。
 
 ※本来であれば「新自由主義による市場経済システム」や「多国籍資本の非人間的な利益優先システム」等に疑問を持ち、そういったものに対して異議を唱え、システムの改善や変更等を促す方向へと団結して、政治的な行動を実行してゆかなければいけないのですけれども、上記したように「無知」であることからまずもってそういったことに気付くことが出来ないため、日和見菌のように「共和党」と「民主党」の間を行ったり来たり「無意味にウロウロする」ことしか出来ないわけです。しかも両党とも既に企業に懐柔し尽くされており、完全に操り人形と化しているため、残念ながらどちらを選ぼうが状況が大きく改善することはありません。
 話しは飛びますけれども日本も過去20年くらいの間に実行された様々な法改正により、アメリカとほぼ完全に同じ状況となりましたから、既に同様の事態が急速に進行中であり、ゆえに本書に記されているラストベルトの労働者の状況は、今後の日本人労働者の状況と言っても過言ではありません。にもかかわらず……(以下略)

 
 本書についてはまだまだ記したいことがあるのですけれども、現在、時間を上手く捻出することが出来ないため、いつか追記するか、または別の記事内にて引用するか、もしくは記すのを諦めるか……ということにさせていただきたいと思います。

 ※本記事にて言及したかった箇所の記載ページ、メモ(1章&3章は多数あるため除く)
 104、147~149、195、214~216、236~242、314~316、
 

 

追記

(2024/10/24)
 本書【すがったトランプへの一票「二度と入れない」(2016の選挙にてトランプに入れた黒人男性の証言中心)】【「組合が労働者を見捨てた」】その他、何十年も民主党が勝利し続けていた(ラストベルトの)地域にて、住民達にどのような心境の変化が起きていたのかが記されており、面白いです。
 工場がバタバタと閉鎖されていった地域ではユニオン(組合)が崩壊しかけていたこと。住民の「政府(政治家)」に対する不信感(民主党、共和党問わず)が高まっていたということ、そのようなタイミングにて「政治家」ではない「ビジネスマン」が登場し「お金に関する甘い言葉」を囁いたこと、そして住民達の多くが自分たちの(目先の)給料と財産と就職先を手っ取り早く増やそうとしたこと、等が、どうやら「共和党」というよりは「トランプ」支持へと繋がっていった背景にあるようです。







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