金成隆一 (著)
出版社 朝日新聞出版
発売日 2018/10/19
単行本 343ページ
目次
内容紹介
レビュー
本書はショーン・ベイカー監督の『レッド・ロケット』の背景を理解すべく、2016年にドナルド・トランプを当選へと導いた人々の考えを知りたいと思い、手に取りました。
そしてその部分に関しては個人的に非常に有用な情報を得ることが出来、とても満足しております。
個人的には、第1章、第3章に特に大きな収穫があり、中でも最大の収穫は、本書に登場するトランプに票を入れた人々(労働者)の最大の共通点が「無知」であるということを、確信できたことにあります。
ちなみに私の言う「無知」とは、「知識の無い状態」ではなく「疑問を発せられない状態」のことを指します。
人はそのような状態に陥るとまず視野が狭くなり、それにより全体の状況を判断することも困難になって、さらには現実の支配構造に思惟を巡らすことも出来ず、それゆえに論理的且つ理性的な判断をすることは不可能となります。そしてギュスターヴ・ル・ボンの言うところの「大衆は言説の論理に感銘するのではなく、言葉が作り出す響きやイメージに感銘する。」との発言通り、簡単に「甘言」又は「トンデモ発言」に騙され、その結果さらに搾取されると共に、放置されて、ますます困窮を極めてゆくという結果となるわけです。
※本来であれば「新自由主義による市場経済システム」や「多国籍資本の非人間的な利益優先システム」等に疑問を持ち、そういったものに対して異議を唱え、システムの改善や変更等を促す方向へと団結して、政治的な行動を実行してゆかなければいけないのですけれども、上記したように「無知」であることからまずもってそういったことに気付くことが出来ないため、日和見菌のように「共和党」と「民主党」の間を行ったり来たり「無意味にウロウロする」ことしか出来ないわけです。しかも両党とも既に企業に懐柔し尽くされており、完全に操り人形と化しているため、残念ながらどちらを選ぼうが状況が大きく改善することはありません。
話しは飛びますけれども日本も過去20年くらいの間に実行された様々な法改正により、アメリカとほぼ完全に同じ状況となりましたから、既に同様の事態が急速に進行中であり、ゆえに本書に記されているラストベルトの労働者の状況は、今後の日本人労働者の状況と言っても過言ではありません。にもかかわらず……(以下略)
本書についてはまだまだ記したいことがあるのですけれども、現在、時間を上手く捻出することが出来ないため、いつか追記するか、または別の記事内にて引用するか、もしくは記すのを諦めるか……ということにさせていただきたいと思います。
※本記事にて言及したかった箇所の記載ページ、メモ(1章&3章は多数あるため除く)
104、147~149、195、214~216、236~242、314~316、
追記
(2024/10/24)
本書【すがったトランプへの一票「二度と入れない」(2016の選挙にてトランプに入れた黒人男性の証言中心)】【「組合が労働者を見捨てた」】その他、何十年も民主党が勝利し続けていた(ラストベルトの)地域にて、住民達にどのような心境の変化が起きていたのかが記されており、面白いです。
工場がバタバタと閉鎖されていった地域ではユニオン(組合)が崩壊しかけていたこと。住民の「政府(政治家)」に対する不信感(民主党、共和党問わず)が高まっていたということ、そのようなタイミングにて「政治家」ではない「ビジネスマン」が登場し「お金に関する甘い言葉」を囁いたこと、そして住民達の多くが自分たちの(目先の)給料と財産と就職先を手っ取り早く増やそうとしたこと、等が、どうやら「共和党」というよりは「トランプ」支持へと繋がっていった背景にあるようです。