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書籍『そして、メディアは日本を戦争に導いた』

半藤 一利 (著), 保阪 正康 (著)
出版社 東洋経済新報社‏
発売日 2013/10/11
単行本 221ページ‎




目次

割愛いたします(Amazonの本書ページ「試し読み」に、全て記載されているため)。


内容紹介

○「戦争に協力すると新聞は売れる」
○メディアは売り上げで動く
○なだれ現象は、歴史が示す日本民族の弱点
○「明治維新というテロ」を美化した悪影響
○日本人全体がバカだった
○ブラックリストで総合雑誌が崩されていく
○昭和の戦争に個人で抵抗したジャーナリスト
○日本軍の堕落は農民のせい?
○終戦時における、誠実さのない新聞の変わり身
○昭和一桁(けた)に似てきている現代日本
○「四〇年周期説」で現在は昭和何年に当たるか?
○いまは普通の人が暴力に走りやすい
○劇場型になってきた言論封殺の暴力

後帯より


レビュー
 
無謀な戦争へと突き進む「昭和一桁」時の日本の状況を、そのあたりの事情通である半藤 一利保阪 正康 の対談を通して知ることにより、その時代と同じような状況に瀕している現在の日本を理解しようという企画です。
 ※半藤 一利の熱いハートを感じる本書の「はじめに」は、Amazonの本書ページにて「無料」で試し読み可能、且つ読む価値のある内容ゆえオススメいたします

 半藤 私が昭和一桁(けた)の歴史から学んでほしいなと思うのは、まず教育の国家統制が始まるとまずいということです。それから、情報の統制が始まるとこれがいちばんよくない。そうすると、あらゆる面で言論が不自由になってくるわけで、ますますよくない。さらに、テロ、こうした順で社会がおかしくなってくることなんです。幸いにして、テロはいまの日本社会にはあまりありませんがね。とにかく、こうした教訓は昭和一桁の歴史から学ぶことができるんですよ。
 それでは、いまの日本はどうかと言うと、教育基本法をつくって教育を改変しようという動きがあります。修身(しゅうしん)の授業を復活させようという動きもある。権力者というのは常に、教育、言論というものを統制したがるという傾向があり、いまの日本には怪しい兆候が出ているなと思うんですよ。
 それから、情報の統制ということに関して言うと、通信傍受法とか個人情報保護法とか、言論の自由を縛るような法律が出てきています。
 個人情報保護法などは、一見、言論を縛るものではないように思われるかもしれませんが、現場のジャーナリストはこの法律によってどれだけ困っているかわからない。「個人情報保護法があるから教えられません」と、取材対象者の所属している会社や役所に言われてしまう。取材対象が公的な立場の人間であっても、法律を盾にして取材拒否されるんですよ。明らかに、言論の自由を狭めるのに使われているんですね。こういう形で、国家統制が始まる、言論が不自由になってくるというのは、非常に良くないですね。
 それに一億総背番号制(マイナンバー)なんていうのもどうですか。これを拡大すれば、思想言論の監視なんかに役立つんじゃありませんか。

 幸いなことに、言論弾圧というのはまだ起こってはいません。けれど、非常に気になる兆候はあるんです。法的には共謀罪の成立が図られていることです。この共謀罪というのは、使いようによってはかなりの言論弾圧を可能にするんですね。
 こう見てくると、いまの日本は、何とはなしに昭和一桁の時代と同じ流れをくみつつあるなと思わないでもないんですよ。
 それと忘れちゃいけないことがありました。いまや安倍政権が秋につくろうとしている「特定秘密保護法」(二〇一三年一二月に成立、公布。一四年一二月に施行)なるものがあります。これが成立すると、国家機密を暴露したり、報道したりすると厳罰に処せられる。そもそも国や政権が何のために情報を隠そうとするのかといえば、その大半は、私たちの知る権利や生命財産を危うくするものばかりなんですよ。昭和史の事実がそれを証明しています。報道はそんなことをさせないために頑張らなければいけないですよ。この法律ができると頑張れなくなってしまう。大問題なんですがね。
 それに自民党の憲法草案には、やたらと「公益及び公の秩序」なんて強調されている文案がある。「個人の尊重」の個人が「人」と変えられたり拡大解釈できそうなところが山ほどある。戦前の日本に逆戻りしたいのかな、と思ったりしますよ

(中略)

 こうした状況を見ると、これからのジャーナリズムに携わる人は本気になって言論の自由を守ることを考えなくてはいけないと思うんです。まず、政治権力に屈してはいけない。歴史を振り返ればわかるように、権力側はきっと懐柔しようとします。それを承知しておいて、決して屈従しないことが大切です。それでなくとも、言論が不自由になりつつあるんですから、こちらから屈従するのは大間違いなんです

 ジャーナリズムは本気になって、言論の自由を考えなければいけない。これが昭和一桁の歴史から学ぶべき、最大の教訓だと思うんですよね。

 過去の戦争に突き進んだ日本政府が「まともな情報をどのように封じ込めたか」、「新聞が(メディアが)利益に走ったことによりどの様な弊害が起きたか」等の、有益な情報満載な本書。
 一読すれば、現在の政府の思惑やその流れが見えてきます。

 以下 ⇩ 個人的に最も学びとなった箇所を1つだけピックアップして、レビューを終えます。
 ちなみにこれは、絶対に知っておいて損はない情報と思います。

 保坂 半藤さんの意見と重複するんだけれど、僕の意見として整理すると、昭和8年から日本がおかしくなったとき、権力側は正方形の囲みを作ったんですよ(下にぺタリンコしたリンク参照のこと。「本書記載の正方形の囲み図」有り)。
 正方形の一つの辺は教育だった。「ススメ ススメ ヘイタイ ススメ」と教えた国定教科書が作られたんです。
 もう一つの辺は法体系だった。治安維持法の運用で共産党を抑えつけた後、自由主義者にも弾圧が向けられ、やがて新興宗教にまで向けられた。法を拡大解釈したり、新しい法律を作ったりして弾圧の法体系を整備していったんです。
 さらにもう一つの辺が暴力。特攻や憲兵などの官による暴力、右翼による民間の暴力。官民挙げての暴力が言論弾圧へと向かったんです。
 最後の辺が情報の一元化だった。情報を発信するメディアを統合し、それ以外のものを許さないという体制にしていく。これによって、情報を操作できる。



 現在かなり包囲を狭められておりますゆえ、このままでは近い将来「軍事国家」へと変貌することでしょう。
 本書発売から10年弱で、アッと言う間にこれだもん ⇩


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