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「チャンスは残り三回です」どこか楽しげに声は告げた。 どんな話の流れだったろうか、その…
私がその店に足を踏み入れると、今しばらく終電までの時間を楽しみたい男女で込み合っていた。…
「ただいま。」 玄関からリビングに抜けると私はそのままソファーに突っ伏して倒れこんだ。…
私は星空ツアーガイドを生業にしている。 地域のキャンプ場や文化施設、学校の課外授業な…
さて、快刀乱麻を断つ、などと言いますが。 これはよく切れる刀で、複雑にからまった麻を切る…
その日、彼女がふたり来た。 「ごめんねー、待った?」「服選んでたら遅くなっちゃった」 小…
私は古い灯台の上にいた。写真部の私は星空の写真が撮りたくて、新月の夜にはこうして家を抜け出し、この灯台に忍び込んでは撮影をしている。 暫く前に建てられた新しい灯台のおかげで、今やここは何の役目もなく放置されていた。しばしば幽霊が出ると噂され、おかげで気味悪がられて誰も近づかない。撮影をするには都合がよかった。 星空の撮影にはコンディションがとても重要になる。それは日に依って時間に依って、その姿形を変えた。今日の夜空はどうだろうか。月明かりのない新月の夜は貴重だ。灯室を囲むよ
ゼミの懇親会の帰り道、先輩とキスをした。何故それに至ったのか覚えていない。 何か口論にな…
背が高いのは、私のコンプレックスだった。 小学校に入った頃から席は一番後ろで、中学に入っ…
ここは海沿いの小さな町だ。随所古びてはいたが、漁師町として今でも活気がある。 魚市場を中…
妻は私の弾くピアノを愛してくれた。しかし彼女はもういない。 私はピアニストだ。駅や空港、…
私の祖父はかつて空軍のパイロットだった。 私が物心つく頃には現役の飛行機乗りを退いていた…
学芸員の彼は小さなプラネタリウムに勤めている。 ベッドタウンの脇に建てられたその施設は、…
少女は朝から極めて上機嫌だった。気が付けば鼻歌交じりで制服のブレザーに袖を通している。 毎朝目覚め一番の日課になっている星占いアプリによると、今日のいて座の運勢はどのステータスも最高で、こんなこと今日まで見たこともない。おまけに、総評として「今日こそ願いの叶う日!」と書かれている。 願い。願い。そうだ。彼女の脳裏に浮かんだのは彼の顔だった。 彼とは、同じ部活に所属する同級生で、何かと一緒にいることが多かった。最初は他愛もなく会話する程度であったが、彼のちょっとした仕