
ちいさなおしろと、ちいさなりゅう
田んぼから畑のある場所までは、たいてい軽トラックに乗ってびゅうんと行ってしまう。ただ今日は、どういうわけか歩いてみようという気分になった。
車なら1分ほどの距離が、歩くと5分少々かかることがわかった。それだけで、その日その時の気分で選べる選択肢がひとつ増えたような気がして、今更ながらにホクホクするような気持ちで、畑の作物たちに声をかけにいくと、畑のあちこちから声が聴こえてきた。
「ノド、かわいたーーーーーー!」
いや、キミたちにノドなんてないでしょう、と思いながら、土に触れてみると、たしかに乾いていた。ただ、小さな畑とはいえ、20m×60mくらいあるような広さだから、水やりをするにはかなり手がかかる。雨の予報は3日ほど後にあった気がしたけれど、できれば今すぐにでも水をやりたかった。
さて、どうするかと考えながら、ぼくの畑を見下ろすように鎮座している地域の氏神さまにご挨拶へ行くことにした。地元のおじいちゃん、おばあちゃん曰く、どうやら海にご縁のある神様のようで、なんでこんな山奥に海と関わる神様がいるんだろうと昔から不思議だった。ご挨拶がてら、ぼくは神様にお願いをしてみることにした。
「あのお、できるだけすぐに、そこの畑めがけて、わりとたっぷりめに水がほしいんです」
すると、神様はすぐに返事をくれた。
『ほい、わかったー』
とても気前のいい返事だった。ぼくも気軽に「あざーっす」と言いながら、神社をあとにした。
あたたかいサポートのおかげで、のびのびと執筆できております。 よりよい作品を通して、御礼をさせていただきますね。 心からの感謝と愛をぎゅうぎゅう詰めにこめて。