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こじょうゆうやの神代探訪記 #4

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「このあたり、けっこう滞っているかもしれません」


ぼくたちが伺った牡鹿半島の付け根、蛤浜一帯だけでなく、金華山を中心とした周辺一帯にかなりの滞りを感じたのです。清々しい潮風や、穏やかな波の流れを感じるだに、滞りなんて起こりようがない場所なのにも関わらず、どうしてその滞りがあるのかが不思議でなりませんでした。とにかく金華山へ行けばわかるはず。ぼくたち一行は、金華山への海上タクシーが行き来する鮎川港に向かいました。

地方で龍活を楽しむ上で欠かせないのが、ご当地グルメを食することです。どうして人と龍が仲良くするための活動で、ご当地グルメが?と思われる方もいらっしゃるでしょう。そもそも、龍活をやろうとする人のほとんどは、何かとおごそかに真面目に、献身的になりがちです。もう少しさらっと言うと、行動が固くなってしまう印象があります。ですから、そこには必ずご褒美的な何かを付与すると良い感じになるんです。

旅行といえば、行く先々での「食」は欠かせませんよね。海なら海、山なら山の美味しいものが食べたい。そんな人間の純粋な欲求を満たしつつ、龍活するくらいがバランスとしてはちょうどいいように思います。というわけで、ぼくはこの界隈の名物であり、なおかつ龍活と直結するようなクジラをいただきたいという気持ちが浮かびました。

鮎川港には観光物産交流施設 Cottu(こっつ)という場所があります。ぼくたちはその中にある海鮮レストランなぎささんへ伺いました。生命のエネルギーに満ち溢れた鯨肉の刺身がたっぷり入った定食をいただき、金華山満喫の龍活を夢見ましたが、その頃のぼくは車の運転中に体調不良がさらに深まって、少し朦朧としておりました。この調子で果たして美味しくいただけるのか、正直なところ不安を抱いておりました。

しかし、実際に鯨肉をいただくと、少しずつ体調が戻っていったのです。ゆっくり咀嚼して新鮮な味わいを感じていると、「ようこそ。待ってたよ」というクジラの声が聴こえてくるようでした。


(続)

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こじょうゆうや
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