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岩波少年文庫 創刊70年

 今の時代、本屋の児童本コーナーには、子供向けの本はあふれかえっている。岩波少年文庫創刊当時の石井桃子さんの思い「新たな時代を生きる子どもたちに世界の名作を届けよう」は、選びきれないほどの量の本を見ると、達成されたのかと錯覚しそうになる。でも私は以下のことを嘆きたくなるのです。

① そもそも本を読む習慣のない子たちがいる。

② 本を読むとどのようないいことがあるのか、目に見えないので伝わりづらい。

③ 読む子でも、良い読み方をしない。

①~③には、おそらく多くの反発が来ると予想できます。

① 本を読まないとだめなんですか?親の私も読まないけど、大人になって特に今、困ってません。

② 読解力がついて、勉強ができるようになるんですか?理系科目もですか?プログラマーになるのに、読書は必要ですか?

③ 読み方に、良いとか悪いなんてあるんですか?それは人それぞれでは?

『ガンバの冒険』著者でもあり、元福音館書店編集者の斎藤惇夫さんの言葉

「岩波少年文庫の物語は、世界に希望はある、未来は必ずある、ということを感じさせてくれました。」

「岩波少年文庫を通して知った心の高まりや喜び、『人生は面白いものだ』という感覚」は、私は深く納得できるものです。

逆に、本がなかったら、どうやって子ども時代の自分は、「つらいことは乗り越えられる、道は開ける」と信じたのだろうと思います。本で出合った言葉、面白い物語。自分の行く末にしろ何にしろイメージするときに、それらが私を無意識のうちに助けてくれます。

斎藤さんの「子どもたちの未来のために、いい言葉、面白い物語を、本気になって与えてあげる。それが、いま大人が子どものためにできる、唯一のことなんじゃないかなと思います。」という言葉。このさりげない口調の中に、どれだけ大切なことが含まれているか。

 だいたい大人は、面白い物語を知っているのか。ハリーポッターやかいけつゾロリを買い与えておけばことは足りていると思っていないか?親から愛情をもらえないまま自分が親になると、わが子にどう愛情を注げばいいかわからないとテレビ番組で解説されたりしますが、同様に、良質な本の面白さを子ども時代に体験せずに大人になっては、子どもに面白い本を手渡せない危険がある。

 もしかすると、本以外の方法で、子どもの内面に、いい言葉、面白い物語を届ける方法はあるのかもしれません。実体験なのか、ゲーム、映画、はてまたYouTubeなのか。本を読むとどのようないいことがあるのかを「面白いよ」以外の言葉で伝えられるようにならないと、読書普及は難しそう。

 以上が、10月31日の朝日新聞朝刊の「名作とよい出会いを」の記事を読んでの感想です。

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