そこらの社会人 /アイコンは自分が描(書)きました

そこらの社会人 /アイコンは自分が描(書)きました

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ずっとじゃなくていい 顔を上げれば目が合う猫 クローゼットの端のワンピース 2XLの部屋着 無意識に組む脚 2.5mlのオーデパルファム アイスアメリカーノ 2枚のレコード 黄色のファミリーレストラン シルバーのキャリーケース 中指の傷跡 消えかけの痣 こうしてたまに たまにでいい 確かに愛し合っていた私達を 思い出せたら その時柔らかい顔で 笑っていられたら

    • 砂時計

      私の砂時計には全部でどのくらいの砂があって、 既にどのくらいの砂が落ちていったのだろうか 砂が全部落ちたらひっくり返してもう一度初めからやり直せたらいいのに そうしたらあの日母にあんなこと言わなくて済んだのに そうしたらあの時幼馴染の異変に気づけていたかもしれないのに そうしたら そうしたら 私にあとどのくらいの砂が残っているのか教えてほしい 早くひっくり返したい そうしたら

      • 幽霊の香り

        彼女の纏う臙脂色の香りが好きだった。彼女は何時も 此処に居る と叫んでいた。それが木漏れ日のように穏やかで仄かに温かかった事を今でも覚えている。 僕は取り返しのつかない過ちを犯した。 日に日に彼女の香りは遠く、その輪郭は空気との境を無くしていた。身勝手な僕はそれに気付けなかった。彼女は幾度となく叫び伝えてくれていただろうに。 気づいた頃には臙脂色の香りも、彼女の輪郭も残っていなかった。灰すら残さず、文字通り跡形もなく消えていったのだ。 全ての原因は身勝手な僕にある。 そん

        • 誰かが言った、「他人に共感して生きていたい」という言葉を大切にしている

          福祉分野の勉強をしていると「受容」「傾聴」「共感」という単語が、大抵セットで用いられている。相手の話に耳を傾け、存在を認め、受け入れ、そして相手の体験や思いを自分の事のように感じるのである。 20年余を過ごし、また今夏の精神保健福祉援助実習を終えて、自身の共感力が高いことは自覚している。小学校の通知表に、感受性が豊かだと書かれることが多かったが、今思うと共感力の高さを指していたのではないだろうか。幼い頃は、相談をもちかけられると、その人の世界を私が生きているかのように感じ、

          yotsuya -4-

          雨上がりの気圧の変化にやられてしまった彼女は、ファミレスに着いてから暫くの間テーブルに突っ伏していた。彼女の斜め前に置いてあるグラスは水溜まりを作って、頼んだアラカルトも来たままの状態で置かれていた。私はサラダの入っていた空の皿をテーブルの端に寄せて、グラスのなかの氷を口に含みガリガリと噛み砕く。重たそうな頭を持ち上げた彼女と目が合う。 「大丈夫?」 「頭が割れた。」 「頭が割れたら死んじゃうよ。」 「確かに、でも割れた。」 「ゆりの頭割れちゃったか。」 少しでも

          yotsuya -4-

          家具が無くなり余白が増えた空間に するはずも無い新築の香りが漂っている

          家具が無くなり余白が増えた空間に するはずも無い新築の香りが漂っている

          アンビバレンス

          砂嵐が耳を塞ぐ 夥しい数の記号は言葉にならず 宙を舞い ただでさえ歪み不自由な視界を狭める 抱えている両価性の存在を突き付けられても 中途半端な蛆虫はあまりにも無力で手遅れだ

          アンビバレンス

          alkal0id

          まだ生きたいと乞う頭に 鋏を入れて 純潔に終止符を ひとつ ふたつ 頭を落として 哀しい夜を飲み干すように 底に残る液体は口内へ 白いベッドに横たわれば 愛しいと言ってくれた寝顔で あなたの帰りを待つだけ

          yotsuya -3-

          東京は雨が降っていた。 集合予定のファストフード店に入り、地下へと続く階段を下る。人で溢れていた一階とは裏腹に、地下はチラホラ人が居る程度だった。階段を下って左側の二人席へと向かい、今にも折れてしまいそうな細い脚の椅子をガラガラと引いて、そこに座る。 早る気持ちを抑えきれずスマホの待受を確認するも、彼女からの通知は無い。頻りに目の前のソファー席に目をやって、今か今かとその時を待つ。傍から見れば一人、フードも注文せずスマホを片手にソワソワしている変わった人だろう。こんな所を

          yotsuya -3-

          yotsuya -2-

          人もまばらな改札口にスマホを翳して階段を下る。私が乗る予定の電車はもうすでにホームに着いていて 今か今かと発車を待っていた。ドア横の白いボタンを押して車両に乗り込めば、ガラガラの座席が目に入る。迷わず端の席に腰を下ろして、深く空気を吸った。 発車の合図が鳴ってカタンカタンと電車が揺れ始める。 向かいの窓から見える景色がゆっくりと動いていくのを確認して、ズボンの後ろポケットからスマホを取り出し、通知のないトークアプリをタップする。 「明日 11時に原宿で」 昨夜の履歴を見

          yotsuya -2-

          yotsuya -1-

            全身鏡の前に立ち、いつもより入念に身嗜みを確認する。 「よし。」 いつもは厚底を選ぶところだけれど、今日は出番無し。足取りは少しでも軽いままでいたいから。靴棚をサッと見渡して上段右端に置かれた、買ってから随分経つのに小綺麗なままのスニーカーに手を伸ばす。 つま先でトントンとタイルを叩けば、あとは荷物を持って家を出るだけだ。今は財布、イヤホン、スマホと私だけあればいい。あとは東京で全てが揃うから。私は誰もいない住家に「じゃあね。」と呟いて駅に向かった。 もう此処には帰

          yotsuya -1-

          どれほど泣こうが どれほど名前を呼ぼうが 貴方が還ってくることはないから せめて貴方がいるところまで届くように 歌わせて 「元気でいますか?」

          どれほど泣こうが どれほど名前を呼ぼうが 貴方が還ってくることはないから せめて貴方がいるところまで届くように 歌わせて 「元気でいますか?」

          Jo8to

          キミのめがさめたとき、ふあんなきもちがすこしでもないといい キミがうなされたとき、ぼくがそこにいて、だいじょうぶだよ ここにいるよといえたらいい キミがねがえりをうったとき、みだれたもうふをぼくがかけなおせたらいい まっくらはこわいというキミのよこで ぼくがあかりになれたらいい キミがこいをしているときも キミがだれかとけんかしたときも キミのぐあいがわるいときも どんなときもここにきてくれたら ぼくがまもってあげる キミのねむりをだれも なにもじゃましないように そっと

          七月八日

          名前も知らない誰かと迎えた朝は やけに騒がしく 溌剌としていて 洒涙雨に嫉妬して道を外れた私を咎めるかのように 日差しが眩しかった

          七月八日

          3:00am

          街灯と信号が私のためにそこにいてくれる 私が生き急がないための赤信号と 迷子にならないための道標が 私が星を見ていても歩けるように ちゃんと家に帰れるように まだ道半分 夜を独り占めして あなたの声を聴きながら 何処までも遠くへ 遠くへ行きたいの

          star lily

          太陽が空高く 戦士の汗と涙を照らしている八月 視界の端で佇む亡霊も 揃いの装束に時を結ったシニヨン 此処に来れば誰もが奮い立ち 戦士の瞳に覚悟が宿る 指揮官がその腕を振りおろせば 両耳を包み込む銃声が心地良い 風に乗って響け 遠くへ遠くへ 彼女への恋心も家族との別れも 今日が終われば全部元通りに 終焉の時 揺れるあのシロを見つめながら戦士は命を奏でている 最後は両腕から溢れ落ちる宝を抱えて死んでいくんだ 余りにも短い十二分 亡骸は今此処に

          star lily