見出し画像

ある日記「ケミカルX」2024年10月20日

 毎月中旬の日曜日にしもきたドーンで開催される『ケミカルX』に出演した。このライブに出るようになってかなり経った。初めはヒール役でゲスト出演して学歴バトルのようなことをしたはずだ。その後にフランスギャルの代わりとかでレギュラーになったと思う。
 『ケミカルX』は少し珍しいライブで、OPとEDがなく、二つのネタブロックを三つのコーナーで挟む構成をしている。三つ目のコーナーは演者の持ち回りで企画していて、今月は僕が担当だった。
 僕は『ケミカルX』で企画担当になったとき夢を叶えることにしている。今までテレビなどで見てきたもののなかでやりたかったことを恥ずかしげもなくそのままさせていただいている。覚えている範囲で振り返るとテニミュと数取団をやった。そして今月は出川さんと上島さんが大きな番組でやられる「脱がせるノリ」を企画にした。
 と言っても、そのまま脱がせるノリをするわけにもいかないので、脱がせるノリを発動し合って誰が脱がずにいられるか、という企画にした。題して「脱がせるノリ選手権」だ。ノリにスポットライトを当てることで脱がせ合いが殺伐とした雰囲気にならずに済むだろうという算段である。
 結果としては大成功だった。最初から喧嘩をして全員で取り囲んだら脱いでいるというノリも見れたし、他にも全員が違う仕掛けで脱いでいった。みんな脱ぐときのノリだけでなく、脱いだ後に仕込みをしてくれていて、発案者の僕が一番手ぶらだったくらいだ。
 『ケミカルX』は今、安定期に入っている。春とヒコーキが爆売れして、彼らが出演する限りチケットは完売する。アングラ感溢れる下ネタも辞さない企画によって独自色も保っている。ネタのクオリティも上がっていって、このままいけばみんな売れていくだろう。時間が経てば会場も少しずつ大きくなっていくと思う。僕は『ケミカルX』に安心してしまっている。
 しかし、本来『ケミカルX』は不安の募るライブだった。流れに困ればぐんぴぃが堀川ランプの首を絞め、悲鳴とも呆れとも取れる声が上がっていたライブだった。毎月ヒリヒリ感のなかで悪戦苦闘するライブだったのだ。
 各自の実力が伸び、特に徳原旅行のリカバリー力といったらどんな困難も何とかできるようになってしまった。これではあの極限の、死と隣り合わせの、笑わせるか口を閉ざすかの空間が無くなってしまう。いや、無くなったことを喜ぶべきなのだろう。
 しかし、どうしても思い出してしまう。銀兵衛の小松が企画した「エド・シーランの性格をきめよう」というコーナーを。あれは銀兵衛のあゆむ企画が頓挫して、舞台上で全員集まって反省会をした翌月だった。しもきたドーンが原因不明の熱気に包まれて、歌を歌ってエド・シーランの性格を決めた。会場の誰もが事の成り行きを見失って、それでも一体になっていた。記憶が正しければ、僕が「明るい」と言って締まったはずだ。あの快感が忘れられない。
 この先で『ケミカルX』がより低俗になることはないだろう。下品なことに恥じらいを持って挑戦するのが我々のいいところだ。品性を捨てずにそれでも堕ちるのが面白いのだ。それでも、あのヒリヒリをもう一度感じることを欲してしまっている。

ケミカルXの越前リョーマ

ここから先は

21字

いっしょプラン

¥1,000 / 月
このメンバーシップの詳細

よろしければサポートお願いします。新書といっしょに暮らしていくために使わせていただきます。