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ある日記「そんな顔してるんだ」2024年12月9日
都会の隙間で唐揚げ弁当を食べるエッセイを読んだ。人間くさくて、シンプルで、ぎゅいぎゅいと引き込まれる一冊だった。作者をおもしろい人だなと思った。
作者が大学の同期に似ている気がした。同期は人と人を繋ぐあたたかいヤツだった。よく笑い、よく泣いた。よく失敗をして泣いていたし、よくうれしいことでも泣いていた。僕の歌で泣いてくれた初めての人だった。
同期は大学で学べることを目一杯吸い込んで、いつも悩んでいた。周りに悩みを吐き出して、仲良くなって、喧嘩して、そして仲良くなっていた。批判的な視線を自分に向けて、答えを見つけて乗り越えようとしていた。お笑いをしてることを鼻にかけていた僕よりずっと現代的な人間だった。
同期とは一緒にバンドを組んで、ドラムをやってもらった。ドタドタと暴れ回るドラムが部屋の振動をねじり上げて大きな波になるのが好きだった。こいつは最強のドラマーだぜ、と思った。
どのタイミングからかわからないが、同期の顔で、同期の姿で、同期の仕草でエッセイの中身を思い浮かべていた。また膝に原因不明のあざでも作ってるんだろうなと勝手に想像した。
エッセイの出版を記念するトークイベントに行った。作者の顔を見て、「そんな顔してるんだ」と思った。よく知らないスラっとした美人さんがお話されていた。思てたんと違うかった。
イベントが進み、作者の話に熱が入っていった。自分のエッセイを「作品」と言い切っていて、すごいと思った。嘘をつかない代わりに言葉を磨き上げる。そんな信念に驚かされた。エッセイを見返してみたら、どの文も究極だった。
参加者の質疑応答に移った。作者は人の話を聞いて、一生懸命答えて、へへっと笑っていた。その笑い方が同期に似ていた。この人もきっと今を目一杯吸い込んで生きているんだろうと思った。
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