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認知症の人の退院請求の判断は難しい

精神科病院に入院している人とその家族はいつでも退院請求をすることができる。最近、認知症の人の退院請求が増加しつつあるものの、判断は難しい。


入院の必要性

統合失調症や感情障害の人の入院の必要性に比べて、認知症の人の入院の必要性は判断が難しい。

統合失調症や感情障害の人にとって、閉鎖的な処遇が可能な場所は精神科病院だけである。一方、認知症の人は閉鎖的な処遇の場所は精神科病院以外に多くの施設がある。お金がかかるものの、閉鎖的な空間で職員が24時間付き添い対応すればある程度の問題行動には十分に対処できる。またある程度までならば、家族が24時間ずっと付き添って面倒を見れば自宅で生活ができないとまでは言えないケースが良くある。

しかし現実的には、そんなにお金がない、施設が見つからない、家族が疲弊したり自分の生活全て犠牲にすることはできないことが多く精神科病院に入院となる。


退院請求ができる人

以前は退院請求ができるのは、本人と入院時に同意した家族(旧称 保護者)のみだった。法律の改正で、家族等であればだれでも退院請求ができるようになった。

精神保健福祉法 第38条の4(適時改変)
精神科病院に入院中の者又はその家族等は、都道府県知事に対し当該入院中の者を退院させることを命じることを求めることができる。

この場合の家族とは、概ね配偶者、親、子供、兄弟 などを指す(正確には第33条2を参照)。


ずっと本人の世話をしていた家族が限界となり希望して入院。その後遠くに住んでいる、本人のことをほとんど知らない家族が、退院請求をしてくるケースが目立つ。もちろん退院請求した家族が退院した後、責任をとってずっと面倒を見るのであればまだ良いものの現実的にはまずない。

久しぶりに本人と数時間面会し、落ち着いているときの状態を見て、
「ボケてないし、普通だ」
「何の問題もない」
「入院させるなんてかわいそう」
「親なんだからちゃんと面倒みなさい」
と必死の思いで入院させた家族に対して文句を言うのみで何もしない人がほとんどである。

「かわいそうで、親なんだから面倒るのが当たり前」という人には、「あなたが自分の人生を犠牲にして面倒みなさい」と言いたくなる。


もう一つのパターンは財産が絡む場合である。

退院請求をし退院をさせ、その足で自分の近くの精神科病院に入院をさせる。そして相続等の手続きを自分の都合の良いように進めていこうとする。

前者の場合はまだ本人が心配と言う気持ちがあるので、問題はあるにしてもある程度は理解することができる。後者の場合はもはや何とも言い難い。

現実的には退院後の支援体制がはっきりとしかも現実的にできているときには、退院が妥当とすることがあるが、そうでないときには入院継続が妥当とせざるを得ない。


このおかしな状態を改善させる最も効果的な方法は、認知症の人が精神科病院に入院していることが金銭的負担が最も少ないというとんでもない状態を変えることである。施設の方が安くなれば当然家族は病院ではなく施設を選ぶし、どうしても入院させなければいけないと思った人だけが入院という選択肢を選ぶことになる。



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